152 / 200
第二十三話 ティア姫の帰還
5
しおりを挟む「アリシアお姉さま、ただ今帰りました。何かとてもお疲れの様子ですが?」
「貴方も長旅で疲れたでしょうティア。いいのよ、私の事は。それよりお客様は?」
「部屋で休んでいるわ。私の隣部屋で。挨拶に行くなら私も同行するわ。リリアナが混乱したら悪いし。一応伝えてはあるのだけど、そっくりだって」
「……まあ初対面の人は混乱するわね。なれたらすぐに見分けるのだけど」
「ここで間違える人なんかいないから普段は気も使わないけど、さすがにあの子はねえ…」
「じゃあ挨拶を済ませてしまいましょう。どうせお兄様はぐずぐずしているでしょうし、待っていても仕方ないわ」
アリシアとティアは部屋を出て客人のいる部屋へと向かう。歩きながらも二人は浮かない顔で息を漏らす。
「…お兄様、大丈夫なのかしら?一人で挨拶にも行けないってどうなのかしら?」
「早く済ませてくれないと、皇子としてどうなのかしらって気がするわね。どうしましょう?」
「やっぱり引きずり出して連行しないといけないのかしら?実はあまりこの件に乗り気ではないのよ私」
「そうなのティア?私は何でもいいからさっさと纏まって欲しいと思っているけど」
「お姉さまはリリアナを知らないからそう言えるのよ。ミザリーお姉さまの様なまるで意味不明な彼女は私には不安だわ。
……そう言えばまだはっきり決まったわけじゃないのだったわ。お兄様がお会いしなければ分からないのだったわ。間違いだったらともあれ私は一安心だわ、さっさとお兄様に会っていただかなければ」
「ティア、その場合また振り出しに戻る事になるわよ?また草の根かき分けて必死で探す作業をするのかしら?」
「……それはもう嫌だわ。そうだ、その時は当面暇な二番隊に任せようかしら。私も忙しいし」
「そう言えばあなたロレイアから大量の本を借りたって。良く貸してくれたわね?」
「向こうでも協力者が現れたのよ。目的が違っても行き先が同じなら協力した方が有効でしょう?」
「そうなの?まあ相手がそれでいいならいいのだけど」
「お姉さま、リリアナのいる部屋に着いたわよ。…‥ところで今思ったのだけどミザリーお姉さまはどうされたの?静かだと不気味よね」
「お友達の家に遊びに行って帰ってこないのよ、もうかれこれ十日くらい。そろそろ呼び戻さないとねえ…」
「…‥お友達ってまさか……?」
「クロード公爵の所よ」
「…どうして誰も止めないのかしら?お友達とか言っても殿方の所に何日も。姫としてどうかと思うけど…‥?」
「どうせミザリーだし。今そちらの些細な問題より仕事しない兄の方が問題だったのよ。父様も母様も困っていてね。とりあえずあなたが帰ってきたと速達を送ったからすぐ戻ってくると思うけど、たぶん」
「……どうかしらね…」
ティアは部屋をノックする。
「リリアナ、ティアだけど姉を紹介しに来たの。入ってもいいかしら?」
「―――あ、はい」
二人が中へ入るとやはりリリアナは戸惑った。
「あの、ええと」
「やっぱり初めは誰でも戸惑うわよね、こちらが上の姉アリシアよ」
「はじめまして、アリシア様…」
「はじめまして。リリアナさん。遠方から良くいらして下さいました。特に何も無い田舎ですがゆっくりくつろいで下さいね」
「…はい、有難うございます」
アリシアと握手を交わしたリリアナはほっとしたように笑う。
「あとは中の姉と兄ね。ミザリーはまだ帰ってこないから帰ってから紹介するわね」
「……はい、あのティア様、王家の方全員と顔合わせする必要性があまり分からないのですけど…・?特に私などに…」
「えっ…‥まあせっかく来たのだからいいじゃない。深く考えなくていいわよ」
「そうですか?何かもったいなくて」
「気にしないで。あと今いるのは兄だけどじきに来ると思うわ」
「あ、そんな!私から出向きます。そんな勿体ない!」
「お客様はあなたよリリアナ。お兄様が出向いて当然なの、気に病むことはないわ。ここで寛いでいて」
「何かすごく落ち着かない気分ですが」
「それはそうね、ティア。庭を案内してあげてはどうかしら?ずっと部屋にいては窮屈でしょう?魔法使いの塔まで散歩してはどうかしら?
リリアナさん、お疲れでなければどうかしら?いまはもう薔薇園に花は咲いていないけれど」
「あ、はい、ちょっと外の空気を吸いたいです。ティア様、いいですか?」
「いいわよ、そうだ、先に魔法使いを紹介するわ」
「魔法使いがいるのですか?すごい」
「あまり大きな期待されると困るけど。じゃあ早速行きましょう。お姉さまはお兄様の方お願いするわ」
「ええ、行ってらっしゃい」
部屋を出てリリアナとティアと分かれたアリシアは溜息を吐く。
ここに来て未だに覚悟がない兄にはもう疲れた。
0
あなたにおすすめの小説
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。
藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」
街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。
だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!?
街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。
彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った!
未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!?
「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」
運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
契約結婚のススメ
文月 蓮
恋愛
研究一筋に生きてきた魔導士のレティシアは、研究を続けるために父に命じられた結婚をしかたなく承諾する。相手は社交界の独身女性憧れの的であるヴィラール侯爵アロイス。だが、アロイスもまた結婚を望んでいなかったことを知り、契約結婚を提案する。互いの思惑が一致して始まった愛のない結婚だったが、王の婚約者の護衛任務を受けることになったレティシアとアロイスの距離は徐々に縮まってきて……。シリアスと見せかけて、コメディです。「ムーンライトノベルズ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる