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第二十三話 ティア姫の帰還
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しおりを挟む塔の中でしばらく怒鳴り声が続き、それが静まった後すぐに塔の中からドアが開いた。
ティア姫とあと二人が出てきた。
「お待たせリリアナ、この人がうちの兄、パラレウスよ。そちらのは一番隊護衛騎士」
金髪緑眼、柔らかい感じのまさしく白馬の王子様のような人が微笑む。
「一度お会いしましたね、パラレウスです」
隣のティア姫に何故だか睨まれている彼は多少疲れた感じだ。
「ええ、以前は大変失礼を申し上げ、申し訳ありませんでした。まさかまたお会いすることになるとは思ってもいませんでしたので」
「……何か失礼を言われたかな?実はあまり覚えていなくてね。あははは、だから気にしないでください。遠方からはるばるお越しくださって当分ここに滞在されるのだからここを家と思って寛いで行って下さいね。お客様の少ない冬場でもそれなりに催し物もあるのですよ?」
「それは楽しみですね」
何やら変な緊張感が取れた所で皇子を睨むのをやめたティア姫が息を吐く。
「お兄様、リリアナを部屋へ送って差し上げて。私の部屋の隣だから分かるわよね?私はこれから所用があるから失礼するわ。リリアナ、夕食はうちの家族とご一緒しましょう。ではあとでね?」
「え、ハイ…」
「ティア、所用って何だい?」
「何でもいいでしょう別に」
「…‥‥ハイ」
皇子を睨んだティア姫はさっさと薔薇園の方へ去って行ってしまった。
リリアナは皇子に先導されて歩きだす。
「何でしょう?ティア様何か怒っていたような?」
「いやあ大体いつもあんな感じだようちの末姫は。全く相変わらずで嬉しいような悲しいような微妙な所です。しかしあの様子ではやはりロレイアの皇子との関係は変わりなかったようだね、困ったものだ」
「ごめんなさい…」
「え?」
「私もお城に招かれてスティア皇子との仲を取り持つ協力をしたのですけどあまり効果がなかったのです」
「そうなんだ。いや気にする事はないですよ?元々期待はしていなかったから。うちで一番期待して関心持っていたのは実は父だけですから」
「王さまが?ティア様とスティア様の仲を期待しているのですか?」
「あっ、そんな深い意味じゃないから。結局当人同士の問題だからね?父はいい相手を見つけて欲しいと願っているだけだから」
「そういうことですか。じゃあこの国ではスティア様は好印象なのですね」
「そうだね、そうでないと姫を他国に行かせようなんて話は持ち上がらなかっただろうから」
「なるほど、そのことはぜひスティア様に教えて差し上げるべきですね。国を出る前、スティア様落ち込んでいたからぜひ知らせて元気づけてあげないと」
「え?落ち込んでって。ティアが何か迷惑を?」
「いいえ、とんでもないです。悪いのはスティア様なのですよ。あの方いい人ではあるけどどうも優柔不断でハッキリしない方で。肝心なところが成り行き任せで人任せな所があって。それじゃあ人の心は掴めないってティア様の言い分は尤もだと思うのです」
「うっ、…‥そうだね………」
疲れているのだろうか?皇子が何だかよろめいた。
ふと後ろを見ると無表情な皇子の護衛騎士が一定の距離を取って着いて来ていた。
薔薇園の掃除はハリスだけでなく手の空いている使用人、庭師などが手伝ってくれたので随分はかどった。
「助かったよ皆。ハリス有難う。パティーも良く手伝ってくれた」
「これくらいどうってことないよ。ルウドさんのお陰で母ちゃんも一緒に城で働かせて貰える事になって感謝してるんだ。魔法使いは塔には入れてくれないし、母ちゃんが治っても帰る所も金もなくて困ってたから」
「それはやむえない事情だ。城で働くにはそれなりの身元保証が必要なのだがパティーの場合は例外だ。保証人は親子共々ハリスが請け負ってくれている」
「処断に困ってねえ。結局城で雇う事になった。この責任は私にあるからそういうことになったんだ」
この親子を街へ返して姫様が助けてくれたという話などされては困る。
救いを求めれば姫が助けてくれるなどと思われたら大変困るのだ。
「ごめんなさい、有難うハリスさん」
「まあいい、しっかり働いてくれれば」
「うん、頑張るよ、母ちゃんも元気になったしお城の人達に恩を返したいから。ここで何か役に立ちたい」
「そうか」
「それにここならうまいもの一杯食えるし」
パティーは嬉しそうに礼を言って去って行った。
「ルウド、今晩飲みに行くかい?ロレイアの話を聞かせてくれるんだろう?」
「ああ、行こう。久しぶりだな」
「皆待ちわびてるぞ」
「全くお兄様ったら世話の焼ける。でももうこれ以上は知らないわよ。何にもしないんだからね?」
「そう?まあとにかくお兄様の体面は保てたわね」
「お兄様の体裁なんてどうでもいいわ。見てるといらいらするからもう見ない事にするわ。私だって持ち帰りの仕事があるのだから暇ではないのよ」
「私もお兄様がしっかり仕事してくれればどうでもいいのだけど。結局あの子は当たりだったのかしら?」
「知らないわ、もうほっておきたい」
「それもそうね…」
ティアとアリシアはこっそりと庭園の陰から仲よさげに城内へ入って行く兄達を見守る。
なんだか疲れて溜息が洩れる。
「…長い旅から帰って来たばかりだもの。リリアナの事はお兄様に任せてひとまず休むわ。お兄様との約束も果たしたことだし」
「そうね、長い事御苦労さま、ティア。でもスティア皇子との仲は進展していなさそうね?お父様がっかりしそう…」
「勘弁してよお姉さま…皆してやめてほしいわ」
「ふふふ、スティア皇子はまだまだね。これからどうするのかしら、見ものね」
「諦めるでしょ。幾らなんでも」
「どうかしらね…」
アリシアは楽しげに歩きだす。
「全くうんざりだわ…」
ティアはぼそりと呟き、アリシアの後を追う。
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