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第二十三話 ティア姫の帰還
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しおりを挟む五番隊隊長コール=メイスンはこの所ずっと皇子の手伝いをしていた。
手伝いと言うよりは補佐に近い。何しろ皇子が仕事をしてくれなくなってしまったから。
厄介だが仕方がない。早く事が収まってくれることだけを願い、大臣や執務官達と協力体制を取って仕事をなんとか進めていた。
二番隊も帰って来て事の元凶であるどこかの娘も城に入ったという。
これでやっとこの苦難も少しは和らぐと信じたい。
ティア姫や二番隊が帰って来て周囲の空気がどことなく変わった。
「コール、飲みに行かないか?ルウドがロレイアの土産話をしてくれるぞ?」
「ハリスさん、行きたいけど調査書と報告書が間に合わなかったので。これだけは仕上げてしまわないと」
「そうか、じゃあ終わったら来るといい。どうせ夜通しになるだろうから」
「帰ってきたばかりなのに元気だなルウドさん。飲み会って騎士隊皆で?」
「あちこちに誘いをかけてるから沢山来るんじゃないかな」
「そうか、ならなるべく早く仕上げて参加しよう」
ハリスは周りの補佐達にも声をかけて部屋を出て行った。
一室でずっと仕事詰めなので少しは気晴らしも必要だ。
「わざわざ街で飲むのか。……まあ酔うほど飲みたいなら外だな」
城にはいろんな人がいる。酔っぱらった姿など見せられない。
気持ちは分かるがコールはふと不安がよぎった。
まだ街の異変をルウド隊長に報告していない。
まああのルウド隊長に限って滅多な事はないだろうが。
もし何かあっても周りの騎士達がうまく対処するだろう。
コールは仕事に意識を向けて集中する。
要は目の前の仕事をさっさと済ませて飲み会へ向かえばいい事なのだ。
飲み会は沢山の人が集まって賑わった。
久しぶりの面々と楽しく話して飲み続けた。
かなり強めの酒も開けて夜が更けた頃には転がっている者を沢山見られた。
―――――飲み過ぎた、頭がガンガンする。
羽目をはずし過ぎた。酒を抜いてから城に戻らねば姫に見つかったら怒られる。
ルウドは頭痛をこらえながら反省する。
体が重くて動きにくいし何故か目も開かない。
今はどのくらいの時間だろうか?
肌に着く空気がひんやりしていて早朝っぽい。しかし目の前は真っ暗。
辺りの気配や耳を澄ましてみると何だかおかしい。
ガタガタと音がする、あと振動も感じる。
「……………」
飲んで酔って酒場で仲間と寝こけていたはずだ。
ひどい頭痛のせいかこの状況の理由が全く分からなかった。
とはいえ目の前が真っ暗なのは目隠しのせいだと気付いた。それと身体が動かしにくいのは縛られているからだと気付いた。
「………」
なぜ?まさか?何の冗談だ?
「………」
そうだ、冗談に違いない。誰かが自分を脅かそうとしくんだのだろう。
「………」
ルウドは勝手にそう結論付けてもうひと眠りすることにした。
なにしろ頭痛がひどかったので。
それに城へ戻る前に酒を抜かなければならない。
どうせこの馬車は城に向かっているに決まっているのだから。
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