160 / 171
第二十四話 ルウド誘拐疑惑事件
5
しおりを挟む晩餐にはリリアナも同席したがとても彼女を気付かえる心境ではなかった。
「……ルウド、一体どこへ行ったのかしら…‥?」
ティア姫の呟きに、家族が困ったように顔を見合わせる。
「ああティア、その、ルウドの事など心配するだけ無駄ではないか?あまり気にする事はないと思うぞ?」
「お父様……・だってこんな事、初めてだもの…」
「外泊が初めてなんてあり得ないわね。ルウドったらやっと外の世界に興味持ち始めたのかしら?ふふふっ」
「アリシアお姉さま、不謹慎なこと言わないで!ずっとお城で暮らしてて何の不満があるって言うのよ?」
「他国へ赴いて世界の広さを知ったとか?お城暮らしが詰まんなくなったとか?」
「急にそんなこと有るはずないわ!絶対ないわよ!」
「それは当人に聞いてみないと分からないわねえ…」
「お姉さま、何でそんなこと言うのよ?酷い!」
「うーん、ずっとお城で暮らしていたのよね、ルウドは。何の疑問もない事が不自然なのよね。お父様はどう思っていらして?」
「うっ、私に聞かんでくれないかアリシア。私は本当にあいつの事などどうでもいい。消えてくれた方がせいせいするんだ」
「すごく白々しい気がするのは私の気のせいかしら?お父様が何か色々隠している気がしてならないのだけど?」
「知る訳がないだろう?なぜ私がルウドの事など知らねばならんのだ馬鹿馬鹿しい」
「知っているならお父様しかいないでしょう?お母様は知っていて?」
「知らないわ」
「どうやらお父様は秘密を墓場まで持っていくつもりのようですね」
「……・」
「お父様、なら今の状況、何が起こっているのか分かっているの?」
「知る筈もない」
「お父様のケチ。どんな時になったら話してくれるのよ?」
「知らんものは話せんな」
睨むティア姫を王は軽くあしらった。
「いい加減になさいティア、お客様もご一緒の席で。リリアナさんが困っていらっしゃるでしょう?ルウドの事は心配するだけ無駄でしょう?」
「お母様まで…」
「それよりも私はミザリーの事がとても気になるわ。何時になったら戻ってくるのかしら?殿方の家へ行ったまま」
「それはけしからん、迎えをやったはずだが未だに戻ってこない」
「もう帰ってこないんじゃないかしら。行ったまま結婚してしまうのではなくて?」
「冗談ではないぞティア。やめてくれ縁起でもない」
「全く落ち着きのない事」
王妃が出てきたスープを摂りながらお客のリリアナに微笑みかける。
「ごめんなさいねリリアナさん、騒がしくて。ティアはルウドの事になるとうるさくって」
「……いえそんな、とんでもない。突然行方不明なんて心配ですね」
「突然行方不明…。それはそうね…」
王妃はリリアナの隣の皇子にしっかりフォローしろと目配せをする。
さりげなく彼女の隣にいる皇子は皆の視線をしらりと交わした。
0
あなたにおすすめの小説
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
悪役令嬢の役割は終えました(別視点)
月椿
恋愛
この作品は「悪役令嬢の役割は終えました」のヴォルフ視点のお話になります。
本編を読んでない方にはネタバレになりますので、ご注意下さい。
母親が亡くなった日、ヴォルフは一人の騎士に保護された。
そこから、ヴォルフの日常は変わっていく。
これは保護してくれた人の背に憧れて騎士となったヴォルフと、悪役令嬢の役割を終えた彼女とのお話。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
おばあちゃんの秘密
波間柏
恋愛
大好きなおばあちゃんと突然の別れ。
小林 ゆい(18)は、私がいなくなったら貰って欲しいと言われていたおばあちゃんの真珠の髪飾りをつけた事により、もう1つの世界を知る。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
修道院パラダイス
羊
恋愛
伯爵令嬢リディアは、修道院に向かう馬車の中で思いっきり自分をののしった。
『私の馬鹿。昨日までの私って、なんて愚かだったの』
でも、いくら後悔しても無駄なのだ。馬車は監獄の異名を持つシリカ修道院に向かって走っている。そこは一度入ったら、王族でも一年間は出られない、厳しい修道院なのだ。いくら私の父が実力者でも、その決まりを変えることは出来ない。
◇・◇・◇・・・・・・・・・・
優秀だけど突っ走りやすいリディアの、失恋から始まる物語です。重い展開があっても、あまり暗くならないので、気楽に笑いながら読んでください。
なろうでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる