意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十四話 ルウド誘拐疑惑事件

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 夜が明ける。街の開門を待って同時に街へ入った。
 街へ入ったら辺りの食べ物の匂いで随分腹が減っているのに気が付いた。
 そう言えば昨日からほとんど何も食べていない。
 そもそもなぜこんな目にあっているのか、あの馬車は一体何だったのか?
 何も分からず謎のまま、ルウドは情けなくなるばかりだ。
 ともあれ金もないので城に戻るしかない。
 言い訳は色々考えたがお城が騒ぎになっていない事を祈るばかりである。

「……ルウド…」

「ロヴェリナ様」

 城門近くまで着いたところでロヴェリナが現れた。

「良かった、ちゃんと戻って来れたのね」

「勿論ですよ、子供じゃないのですから」

「うんでも、戻ってこないかと思ったの」

「…そんなわけないじゃないですか、なぜそんな事を…?」

「他国の旅人の出会っていたから。何か知って…?」

「……だとしても帰らない訳にはいきません」

「―――――あっ、隊長!ルウド隊長!」

 城門を守る門番に見つかった。

「こら、あまり騒ぐなよ」

「ああああああっ!隊長!ルウド隊長!帰りを待ちわびておりましたああああっ!」

「ルウドさんだあああっ!皆、ルウドさんが無事に帰ってきたぞおおおおおっ!」

「たいちょおおおおっ!良かった無事でえええっ!」

「…いやだからあまり騒がないで…」

「うわあああああん!良かったああああっ!隊長おうううううううっ!」

 城門に城内の人々が集まり、大変な騒ぎになった。

「いやその、皆、大変心配をかけてすまなかった。しかしそんな大袈裟な騒ぎになるほどの事ではないから…」

「一体何があったのですか?ただ事じゃないでしょう?」

「その、ちょっと遠出をしすぎてだな、帰れなくなっただけの話で…」

「何ですかっ?どう言う事ですか?ちゃんと説明して下さいよおおっ!誘拐されたって噂になっていたのですよっ?」

「…そんなはずがなかろう」

「ルウドおおおおおおおおおおおおおっ!」

 ティア姫が駆けつけてきてすかさずルウドに飛びついた。

「…‥姫、とんだご心配をおかけして申し訳ない」

「どこに行っていたのよ!何してたのよ!誘拐されたってホントなの?突然居なくなるなんてあり得ないわ!信じられない!一体何があったって言うのよおおおっ?」

「いえ少し手違いですぐに帰れない距離へ行ってしまいましてね…?」

「それってどこかへ連れ出されたってこと?誘拐じゃない!」

「違いますよ、そんな事はありません。だから普通に無事に帰ってきているじゃないですか?嫌だなあ、あははは」

「ルウド、怪我してる、泥も…」

「ちょっと転んだだけですよ?馬で急いだから少々土埃まみれになっただけです」

「でも…‥」

「何でもありません。大丈夫ですから。
ですがだいぶ汚れてしまったので着替えてきます。姫、離れて下さい。本当に大したことではないのです」

「そうなの…?」

「後で説明いたします」

 ティア姫を剥がしたルウドは周囲の疑惑の視線の中を堂々と宿舎へと歩いて行く。

「……ルウド、誰も納得してないわよ?」

「……分かっています」

 何とか城内へ入れたもののこの始末がまだ残っている。






 ルウドが帰ってきたと聞いてコールは大変安堵した。

「良かった、ルウドさん。もう少し遅かったら大々的に捜索隊を編成しなければならない所でした。他国にも援助を要請せねばならない所でしたよ」

「そうか、それは早く帰ってこれて良かったよ」

「良くご無事で。馬車で運ばれたと聞きました。そんな状況で何とか出来るなんて流石です」

「運が良かったんだ。馬車から飛び降りた後途方にくれていた所を親切な旅人に救われた。彼のお陰で近くの村で馬を借りる事も出来たんだ」

「それは運が良かったですね」

「しかし謎が残るね。何が起こったのか?」

 執務室でコールと同席していたハリスが言う。
 ルウドの帰還を素直に喜ぶコールとは違い、ハリスは問題の発端を考える。

「なぜルウドが連れ去られるなんてことが起こったんだ?ルウドがもしかするとお金持ちと言う噂を信じた者がまさかいるのか?」

「信じたとしてもそんな理由で誘拐を目論む輩がいるのか?しかも相手は王国の騎士隊長だぞ?」

「せいぜい屋捜しくらいだろうねえ。ルウドは逃げる時何か見なかったのか?」

「こっそり走る馬車から飛び降りたから何も見てない。あの時は敵の正体よりも国から離される方がまずいと焦っていたし。しかし走っていたのは多分北の方角だ」

「北か…‥」

 北には大国がある。しかしその馬車がそこから来たとは限らない。

「結局何も分からない。手掛かり一つ残さないやり口が前の一件と似ているな。なんかすっきりしなくて気分が悪い」

「前の件?ああ毒の件か。しかしあの件と今回の件の繋がりも良く分からないぞ?」

「繋がりがあると仮定するとどう繋がるかという問題になるがそれは現時点では分からないしこれから考えるとして、ルウドさんの身辺がどうにも不穏なのです。十分気を付けて下さいねルウドさん」

「ああ、分かったよコール。しかし私が何をしたわけでもないのに随分と理不尽な気がするな」

「ホントに心当たりないのかいルウド?他国で何かしたとか?」

「……ハリス、そんなわけあるか。ロレイアで人に恨みを買う事など、たぶんしていないぞ?」

「何か自信なさげだな」

「だとしてもこっそり誘拐なんてあり得ないだろ?」

「正体がばれてはまずい輩と言うわけか。しかしそんな危険を冒してまで誘拐を目論んだとなると、また同じことが起こる可能性があるな」

「……気を付けて、次こそ正体を突き止める」

「あんまり無茶しないようにね」



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