意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十五話 姫の心と秋晴れの空

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 そして昼食後、クロード邸へ行く者達が城門前に集まった。
 ルウドとハリス、そして手の空いている騎士達が駆り出された。

「噂ではクロード邸に入るには気合いと勇気と力がいるそうです」

「意味が分からない」

「クロード邸の情報が何故か錯綜していましてあまりはっきりと入手出来ませんでした」

「まあいってみれば分かるだろ。それにミザリー姫様が何日も滞在されているところだ、そんなおかしなところであるはずがない」

「そうですね、そう願いたいです」

「……」

 城門前で見送るコールに挨拶してから騎士隊二十名が城を出る。
 少し大げさではないかと思ったが一応姫様を迎えに行く道中である。
 この位の人数で行かねばミザリー姫がへそを曲げて帰らないと言い出しかねない。

 先を急ぐため、全員馬を駆り隣町に向けて走り出す。
 西へ真っすぐ一刻ほど走り続けて公爵邸敷地門前へ辿り着いた。



 

 


 公爵邸へ辿り着いて一刻、騎士達は未だに門前にいた。
 門番が家人へ知らせに行ってまだ戻ってこないのだ。
 待ちぼうけの騎士達は痺れを切らした。

「いつまで待たせるんだ。このままでは日が暮れてしまうぞ?」

「屋敷に入るだけで時間がかかりそうなのに姫に辿り着けるのか?」

「そうは言っても姫がどこに居られるのか分からない以上ここで待つしかないだろう?」

「家人は姫を返す気があるんだろうな?」

「………」

 ルウドとハリスが顔を見合わせる。
 困った。まさか家人が姫を返さないとは思わないが、このまま待たされては本日中に帰れない。

「どうする?」

「どうするって、なあ?」

「このまま門前払いされて手ぶらで帰る訳にはいかないだろ。待っててもいつ姫が現れるか分からないし」

「二手に分かれるしかないか…」

 潜入班と待機班だ。

「ルウドは私と一緒に来てくれ。あとの者達はここで待機。もし姫が出てきたら先に城に戻ってくれ」

「わかった」

 ルウドとハリスは早速門をよじ登り、塀を伝い中へと侵入した。
 特に見張りもいない、侵入は容易であった。
 屋敷へと続くであろう道を普通に歩く。

「公爵邸がこんなに緩くて大丈夫なのか?警備くらいおくべきだろうに」

「うーん、どうだろうね…?」

 見渡す限り何も無い土手の道、左右には木々の茂る森の様な所も見えるが特に変わったところはない。
 しばらく歩いているとふとルウドが動きを止めた。

「どうした?」

「うん、何か…、視線を感じるんだが…?」

「視線。やはり誰かが見ているのか。様子をうかがっているのかな?」

「堂々と門から侵入しているのだから声を掛けてくればいいものを」

「確かに、その方が面倒がないな」

「姫のいるところまで案内してくれたらあちこち探さずに済む。早く帰りたいのだが」

「私もそうだよ」

 ひたすら道なりに前を進んでいるとどこからか様々な動物の鳴き声が聞こえてきた。
 犬、猫、馬、羊、鳥、牛、豚、猿…?

「――――ハリス…」

「……うん?何かなルウド」

「公爵家の敷地に虎とか熊とか大蛇とかって、ないだろ?」

「ないよ、危険じゃないか」

「しかしあの木陰からこちらを見ているのはどうみても」

「うわっ、何だあれ?でかい熊?ウソだろ?」

「嘘くさいと言えば様々な生き物の声が何だか近づいて来ているような…」

「逃げないと!急げルウド!」

「いや待て。下手に走り出すと派手に追いかけられそうで怖い。ここは早足で」

「ああ。それにしてもこの道屋敷に通じているのだろうな?全く屋敷が見えないが」

「道があるからには建物はあるはずだ。しかしどこまで続くのかは全く未知数だ」

「動物達に追いつかれるぞ?」

「草食獣はどうにでもなるが猛獣は困る。ここで飼っている生き物を斬り伏せる訳にもいかないし」

「逃げるしかない!」

 二人が走り出すと後ろから動物達が追いかけてきた。

「犬や熊はともかく何故牛や羊に追われねばならんのだ?」

「追いかけてくるのだから仕方ないだろう、倒すわけにもいかないし」

「飼い主はどう言うしつけをしているんだ!」

「さあねえ…」




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