165 / 200
第二十五話 姫の心と秋晴れの空
2
しおりを挟むそして昼食後、クロード邸へ行く者達が城門前に集まった。
ルウドとハリス、そして手の空いている騎士達が駆り出された。
「噂ではクロード邸に入るには気合いと勇気と力がいるそうです」
「意味が分からない」
「クロード邸の情報が何故か錯綜していましてあまりはっきりと入手出来ませんでした」
「まあいってみれば分かるだろ。それにミザリー姫様が何日も滞在されているところだ、そんなおかしなところであるはずがない」
「そうですね、そう願いたいです」
「……」
城門前で見送るコールに挨拶してから騎士隊二十名が城を出る。
少し大げさではないかと思ったが一応姫様を迎えに行く道中である。
この位の人数で行かねばミザリー姫がへそを曲げて帰らないと言い出しかねない。
先を急ぐため、全員馬を駆り隣町に向けて走り出す。
西へ真っすぐ一刻ほど走り続けて公爵邸敷地門前へ辿り着いた。
公爵邸へ辿り着いて一刻、騎士達は未だに門前にいた。
門番が家人へ知らせに行ってまだ戻ってこないのだ。
待ちぼうけの騎士達は痺れを切らした。
「いつまで待たせるんだ。このままでは日が暮れてしまうぞ?」
「屋敷に入るだけで時間がかかりそうなのに姫に辿り着けるのか?」
「そうは言っても姫がどこに居られるのか分からない以上ここで待つしかないだろう?」
「家人は姫を返す気があるんだろうな?」
「………」
ルウドとハリスが顔を見合わせる。
困った。まさか家人が姫を返さないとは思わないが、このまま待たされては本日中に帰れない。
「どうする?」
「どうするって、なあ?」
「このまま門前払いされて手ぶらで帰る訳にはいかないだろ。待っててもいつ姫が現れるか分からないし」
「二手に分かれるしかないか…」
潜入班と待機班だ。
「ルウドは私と一緒に来てくれ。あとの者達はここで待機。もし姫が出てきたら先に城に戻ってくれ」
「わかった」
ルウドとハリスは早速門をよじ登り、塀を伝い中へと侵入した。
特に見張りもいない、侵入は容易であった。
屋敷へと続くであろう道を普通に歩く。
「公爵邸がこんなに緩くて大丈夫なのか?警備くらいおくべきだろうに」
「うーん、どうだろうね…?」
見渡す限り何も無い土手の道、左右には木々の茂る森の様な所も見えるが特に変わったところはない。
しばらく歩いているとふとルウドが動きを止めた。
「どうした?」
「うん、何か…、視線を感じるんだが…?」
「視線。やはり誰かが見ているのか。様子をうかがっているのかな?」
「堂々と門から侵入しているのだから声を掛けてくればいいものを」
「確かに、その方が面倒がないな」
「姫のいるところまで案内してくれたらあちこち探さずに済む。早く帰りたいのだが」
「私もそうだよ」
ひたすら道なりに前を進んでいるとどこからか様々な動物の鳴き声が聞こえてきた。
犬、猫、馬、羊、鳥、牛、豚、猿…?
「――――ハリス…」
「……うん?何かなルウド」
「公爵家の敷地に虎とか熊とか大蛇とかって、ないだろ?」
「ないよ、危険じゃないか」
「しかしあの木陰からこちらを見ているのはどうみても」
「うわっ、何だあれ?でかい熊?ウソだろ?」
「嘘くさいと言えば様々な生き物の声が何だか近づいて来ているような…」
「逃げないと!急げルウド!」
「いや待て。下手に走り出すと派手に追いかけられそうで怖い。ここは早足で」
「ああ。それにしてもこの道屋敷に通じているのだろうな?全く屋敷が見えないが」
「道があるからには建物はあるはずだ。しかしどこまで続くのかは全く未知数だ」
「動物達に追いつかれるぞ?」
「草食獣はどうにでもなるが猛獣は困る。ここで飼っている生き物を斬り伏せる訳にもいかないし」
「逃げるしかない!」
二人が走り出すと後ろから動物達が追いかけてきた。
「犬や熊はともかく何故牛や羊に追われねばならんのだ?」
「追いかけてくるのだから仕方ないだろう、倒すわけにもいかないし」
「飼い主はどう言うしつけをしているんだ!」
「さあねえ…」
0
あなたにおすすめの小説
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた
月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。
崖っぷち令嬢の生き残り術
甘寧
恋愛
「婚約破棄ですか…構いませんよ?子種だけ頂けたらね」
主人公であるリディアは両親亡き後、子爵家当主としてある日、いわく付きの土地を引き継いだ。
その土地に住まう精霊、レウルェに契約という名の呪いをかけられ、三年の内に子供を成さねばならなくなった。
ある満月の夜、契約印の力で発情状態のリディアの前に、不審な男が飛び込んできた。背に腹はかえられないと、リディアは目の前の男に縋りついた。
知らぬ男と一夜を共にしたが、反省はしても後悔はない。
清々しい気持ちで朝を迎えたリディアだったが……契約印が消えてない!?
困惑するリディア。更に困惑する事態が訪れて……
事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~
水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」
第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。
彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。
だが、彼女は知っていた。
その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。
追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。
「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」
「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」
戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。
効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
とめどなく波が打ち寄せるように
月山 歩
恋愛
男爵令嬢のセシルは、従者と秘密の恋をしていた。彼が従者長になったら、父に打ち明けて、交際を認めてもらうつもりだった。けれども、それを知った父は嘘の罪を被せて、二人の仲を割く。数年後再会した二人は、富豪の侯爵と貧困にあえぐ男爵令嬢になっていた。そして、彼は冷たい瞳で私を見下した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる