意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十六話 ルウドの選択

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 飲み過ぎた。飲み屋ではしゃぐハリスに合わせて飲んでいたら帰りも遅くなってしまった。
 ハリスを部屋に送り届けてからようやく自室のベットに転がった。
 ぼんやり天井を眺めながらうっすらまどろむ。
 今はもう夜中なので人の声すら聞こえない。
 夜明けまでは余り間がないがその少しでも休みたい。
 ルウドが眠りに落ちて少し経った頃、ふと物音で目が覚めた。

 ―――――誰かが近くにいる!
 
 殺気まではなかったがルウドは緊張した。
 眠っているふりをしてルウドはそっと様子をうかがう。
 黒い影は周辺のルウドの持ち物を漁っている。何やら捜しているようだ。

「………」

 いろいろ思う所はあるがルウドは眠ることにした。
 黒い影は部屋の中を一通り捜し回ると諦めて出て行った。







 朝食後、ティア姫様の部屋へ行くと相変わらず部屋は本で山積みになっていた。

「おはようございます、ティア様。今日も調べ物ですか?」

「あ、ルウド。そうね。調べないと気になってしまうし。他にも気になる事はあるけどね」

「あまり根をつめてはいけませんよ。気分転換は大事ですよ?」

「分かってるわ。調べても余り有益な情報は期待できないし。
 ルウドはお休み中何をするの?」

「特に予定は決まっていないのですよ。行くところもないですしねえ。本でも読んでいようかなと」

「ルウドが?読み始めたらすぐ寝ちゃうでしょう?」

「内容によります。アリシア様の読むような本は苦手ですが専門書や歴史書は読めますから」

「そうなんだ?でも余りはめをはずし過ぎて飲み屋ではしゃいだりしないでね」

「…そんなハリスでもあるまいし。そんなことしませんよ」

「そうなんだ、ふふふ」

 ルウドは背中にびっちり冷や汗をかいた。
 一体どこからか知らないが昨日の自分の行動がばれている。
 姫は昨日一日部屋で調べ物をしていたはずなのに。
 全く下手な事は出来ない。






 魔術師の塔へ行くとリリアナがいた。

「リリアナ様、おはようございます。魔術師の塔に御用とは。どうかされたのですか?」

「おはようございますルウドさん。特に用はないのですけど詰らなくて。何か面白いお話でも聞かせていただいたらいいなと」

 お茶を入れて出したゾフィーが困った顔でルウドを見た。

「暇を持て余していられるのですね。皇子は顔を出されましたか?」

「それよ!」

「え?何がですか?」

「パラレウス皇子様はお忙しいのでしょう?なのになぜわざわざ一介の客人である私の所にお越しにならなければいけないの?意味が分からないわ」

「ええと?それはそうでしょう?」

「何がそうなのよ?分からないわ。はっきり仰って!」

「ええ?」

 ルウドが困ってゾフィーを見ると首を横に振られた。
 駄目だ、これはもう隠せない。
 そもそもあの皇子の状態と言い、隠し立てする理由もなく隠すにはあまりに不自然過ぎた。
 これではリリアナが困惑する。しかし自分の口から言うのは憚られた。
 どうしよう?

「ルウドさん!いずれ分かることならはっきり言って下さらない?私ハッキリしないのって気分が悪いわ」

「すすすす、すいません…」

「みんな何か隠してるみたいに含み笑いでごまかすし。私だけ何も知らないみたいで面白くないし。こんな状態嫌だから今からでも帰らせて…」

「――――すいません!分かりました話します!きちんと説明しますから帰るなどと言わないでくださいお願いします!」

 ルウドは最初の経緯から順を追って洗いざらい話した。
 しかしリリアナ嬢の反応はいまいちだった。

「……それ、本当に私?間違いじゃないの?」

「……そんな事はありませんよ。多分間違いありません」

「たぶんて何よ?」

「ですから誰かに見染めた話など当人でなければ分からない話でしょう?私は皇子ではないのですから」

「それはそうね…」

「皇子に直接聞いて下さいよ?」

「……繊細な問題ね…‥困ったわ」

 リリアナが考え込んでしまったのでルウドは部屋の隅でこっそりゾフィーと話す。

「やはりロヴェリナ様は現れませんか?」

「うん、来ませんね。ティア様の元に居られるのではないですか?」

「姫の傍でも姿が見えない。逃げられているのだろうか?」

「もともと用がないと現れない方でしょう?気にすることはないかと」

「聞きたい事があるから気になるのだが」

「いつか出て来てくれますよ」

「それでは私的には何も解決しないままだ。クラディウス様は何か教えてくれるかも知れない」

「ダメですよ彼は。眠っているのですから起こすと苦情が来ます」

「誰も会ってくれないし私の問いに答えてくれないので詰らない」

「生きた人に会って話して下さい。そうでないもの達に触れるのは良くありません」

「ゾフィーも答えてくれないのか?」

「知らない事は答えられませんから」

「そう言えば姫はもしかしてロヴェリナ様の本を捜していないか?」

「うっ、なぜそれを?」

「私の部屋に捜しに来た。捜し回っているようだが?」

「…‥あれはただ一つの真実を語る本。あれさえあれば真実に辿り着けますから」

「どこにあるかなど言っていないでしょうね」

「分かっていますよ。万が一にも言いません」

「お願いします。それにしてもどうしたものか…」

 ふとテーブルに目を向けるとリリアナが退屈そうにお茶を飲んでいる。
 いろいろ困りごとはあるものの、優先すべきは今目の前にある彼女である。

「リリアナ様、どこか行きたいところとかございますか?私暇なのでご案内いたしますよ?」

「散歩?余り長くいると寒いし、特に行きたい所もないわ」

「昨日皇子に屋敷のご案内とかして頂いたのでは?」

「薔薇園に薔薇は咲いていなかったし室内庭園とかも見せて貰ったけど特に目を引くものはなかったし。貴族様達の交流会場で情報集めでもしようかしら?その方がよほど有益な気がする」

「……」

 寒い時期のイベントは少ない。夜会はあるが人が少ない。

「そ、そうだ。皇子の所へ行きましょう。どうせ仕事は手付かず…、いやそろそろ息抜きをしていただかないと。机仕事は疲れますからね」

「そうね、私が行ってどうなのって気もするけど、本当の事が知りたいし」

「……そうですよね…」

 まずい、と思ったがこれはもう皇子の口から真実を語ってもらうほかない。
 後で恨まれそうだ、と思ったルウドは腹をくくった。





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