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第二十六話 ルウドの選択
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しおりを挟む皇子の執務室へ行くとやはり皇子は机でペンを持ったままぼんやりしていた。
同じ部屋にいる部下達が忙しそうだ。
「失礼します、皇子いらっしゃいますか?」
「ルウド?なんだい、私は今仕事中…」
「やはり手が止まっていますよね?」
「……だから何だと言うんだ?」
「いっそ手を休めて息抜きしませんか?リリアナ様もおいでです。皇子の私室にご案内されてはどうでしょう?」
「……!」
皇子の手からペンが落ちた。皇子が動揺している。
「ル、ルウド、私はどうしていいのか?どうしたらいいんだ?」
「落ち着いて下さい」
「私を一人にしないでくれ、ルウド」
「困りますよ私。しばらく付き添いますが」
「よろしく頼むよ。それで、私の部屋だって?私の部屋……。どうしてもか?」
「他にどこへ行くのです?」
「それはそうか…。あはは、困ったな…」
「……?」
皇子が廊下に出るとリリアナが待っていた。
「あの、私もしかしてご迷惑を?御免なさい」
「えっ?そんなとんでもない、嬉しいよ。ちょうど休もうかと思っていたんだ。
隣室の私の部屋で休もう、何も無いけど。あっ、お茶くらいあるからね」
隣室の皇子の部屋に入るとどでかい絵画が目に入った。
「……あのこれ…」
「わあああっ、これあの、ティアがロレイアにいるとき送りつけて来たんだよ!仕方ないね、あはははは。折角だからここに飾っているんだよ」
「…‥そうなんですか、そう言えばいつの間にか家からなくなっていたなと思っていたのです」
「ティアが我儘言って貰って来たのかな。困った妹だね」
ティア姫が聞いたら憤慨しそうな話である。
リリアナは皇子に促されてソファーに座る。
「今お茶を入れるよ、ルウドも座りなよ。仕事じゃないんだから立っていなくていいんだよ」
「はい…」
ルウドはしぶしぶソファーに座る。居心地が悪いので立っていた方がマシなのだが。
パラレウス皇子が気さくにお茶を淹れてくれた。
「有難うございます。わあ、皇子様にお茶を入れて貰うなんてもったいない!」
「えっ?」
ロレイアには皇子がたくさん居てしかも仲が良い。しかし一般的に皇子がお茶なんかいれないかもしれない。
「いやいや、うちは基本的に自分の事は自分でする風習でね。そもそもお茶入れるのに忙しいメイドを呼ぶなんて悪くてね」
「そんなメイドに気を使わなくても。仕事なのですから」
「うん?実の所私が入れたかっただけだから気にしなくていいんだ」
「そうなんですか」
三人は暖かいうちにお茶を飲む。
「ところでパラレウス皇子が私を見染めてここに呼んだと言うのは本当なのですか?」
「――――――!」
突然な質問にルウドがむせた。皇子が驚いて真っ赤になった。
「な、なななななななななな何だいいきなり?びっくりしたなああはははは!誰が言ったんだいそんな事?」
「ルウドさんです、何だか信じられない話で、どうなのかなと」
一瞬皇子に睨みつけられたがルウドは知らぬ顔で目を逸らした。
「人違いか何かの間違いではないですか?私なんかが見染められる理由がないですもの」
「そんな事はない。君だよ、リリアナさん」
「でも……?」
「だって君、あの舞踏会で一人で楽しんでたじゃないか。何だか知らないけど楽しげに笑ってた」
何故かリリアナが真っ赤になる。
「……あのときは久しぶりの社交界で、とても浮かれていたのです。何か失礼な口をきいてしまったかも知れませんけど。特に何をしたという記憶も…」
「みんなが一生懸命私の目に止まろうとしていたけど、一番強烈に私の記憶に留まったのは君だった。なんでだろう?そうだ、何かすごく綺麗だと思ったんだ」
「………」
リリアナが真っ赤になって押し黙った。パラレウス皇子はにこやかに微笑む。
先程まで困っていた皇子は流石、本番には強いようだ。
もう大丈夫だろうとルウドが席を立とうとしたら何故か皇子に激しく首を横に振られた。
なぜだ?
仕方なくルウドは座りなおす。
「君がここに連れて来られたのは私の為だよ。妹が必死で探し出して見つけてくれた。
君にとっては迷惑以外の何ものでもないだろうけど。騙したみたいで申し訳なかったね」
「……いいえ!そんな事。だけどもっと早く言ってくれれば。そんな急に言われても私……考えた事もなかったし…」
「時間はあるから、ゆっくり考えてくれればいいよ」
「…‥ハイ…」
なんだか大人しくなってしまったリリアナを連れてルウドは皇子の部屋を退出した。
部屋に戻ると思いきや、リリアナは突如ティア姫の部屋めがけて突進する。
「リリアナ様…?」
ルウドもその後を追う。
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