意地悪姫の反乱

相葉サトリ

文字の大きさ
176 / 200
第二十六話 ルウドの選択

5

しおりを挟む

 皇子の執務室へ行くとやはり皇子は机でペンを持ったままぼんやりしていた。
 同じ部屋にいる部下達が忙しそうだ。

「失礼します、皇子いらっしゃいますか?」

「ルウド?なんだい、私は今仕事中…」

「やはり手が止まっていますよね?」

「……だから何だと言うんだ?」

「いっそ手を休めて息抜きしませんか?リリアナ様もおいでです。皇子の私室にご案内されてはどうでしょう?」

「……!」

 皇子の手からペンが落ちた。皇子が動揺している。

「ル、ルウド、私はどうしていいのか?どうしたらいいんだ?」

「落ち着いて下さい」

「私を一人にしないでくれ、ルウド」

「困りますよ私。しばらく付き添いますが」

「よろしく頼むよ。それで、私の部屋だって?私の部屋……。どうしてもか?」

「他にどこへ行くのです?」

「それはそうか…。あはは、困ったな…」

「……?」

 皇子が廊下に出るとリリアナが待っていた。

「あの、私もしかしてご迷惑を?御免なさい」

「えっ?そんなとんでもない、嬉しいよ。ちょうど休もうかと思っていたんだ。
 隣室の私の部屋で休もう、何も無いけど。あっ、お茶くらいあるからね」

 隣室の皇子の部屋に入るとどでかい絵画が目に入った。

「……あのこれ…」

「わあああっ、これあの、ティアがロレイアにいるとき送りつけて来たんだよ!仕方ないね、あはははは。折角だからここに飾っているんだよ」

「…‥そうなんですか、そう言えばいつの間にか家からなくなっていたなと思っていたのです」

「ティアが我儘言って貰って来たのかな。困った妹だね」

 ティア姫が聞いたら憤慨しそうな話である。
 リリアナは皇子に促されてソファーに座る。

「今お茶を入れるよ、ルウドも座りなよ。仕事じゃないんだから立っていなくていいんだよ」

「はい…」

 ルウドはしぶしぶソファーに座る。居心地が悪いので立っていた方がマシなのだが。
 パラレウス皇子が気さくにお茶を淹れてくれた。

「有難うございます。わあ、皇子様にお茶を入れて貰うなんてもったいない!」

「えっ?」

 ロレイアには皇子がたくさん居てしかも仲が良い。しかし一般的に皇子がお茶なんかいれないかもしれない。

「いやいや、うちは基本的に自分の事は自分でする風習でね。そもそもお茶入れるのに忙しいメイドを呼ぶなんて悪くてね」

「そんなメイドに気を使わなくても。仕事なのですから」

「うん?実の所私が入れたかっただけだから気にしなくていいんだ」

「そうなんですか」

 三人は暖かいうちにお茶を飲む。

「ところでパラレウス皇子が私を見染めてここに呼んだと言うのは本当なのですか?」

「――――――!」

 突然な質問にルウドがむせた。皇子が驚いて真っ赤になった。

「な、なななななななななな何だいいきなり?びっくりしたなああはははは!誰が言ったんだいそんな事?」

「ルウドさんです、何だか信じられない話で、どうなのかなと」

 一瞬皇子に睨みつけられたがルウドは知らぬ顔で目を逸らした。

「人違いか何かの間違いではないですか?私なんかが見染められる理由がないですもの」

「そんな事はない。君だよ、リリアナさん」

「でも……?」

「だって君、あの舞踏会で一人で楽しんでたじゃないか。何だか知らないけど楽しげに笑ってた」

 何故かリリアナが真っ赤になる。

「……あのときは久しぶりの社交界で、とても浮かれていたのです。何か失礼な口をきいてしまったかも知れませんけど。特に何をしたという記憶も…」

「みんなが一生懸命私の目に止まろうとしていたけど、一番強烈に私の記憶に留まったのは君だった。なんでだろう?そうだ、何かすごく綺麗だと思ったんだ」

「………」

 リリアナが真っ赤になって押し黙った。パラレウス皇子はにこやかに微笑む。
 先程まで困っていた皇子は流石、本番には強いようだ。
 もう大丈夫だろうとルウドが席を立とうとしたら何故か皇子に激しく首を横に振られた。
 なぜだ?
 仕方なくルウドは座りなおす。

「君がここに連れて来られたのは私の為だよ。妹が必死で探し出して見つけてくれた。
 君にとっては迷惑以外の何ものでもないだろうけど。騙したみたいで申し訳なかったね」

「……いいえ!そんな事。だけどもっと早く言ってくれれば。そんな急に言われても私……考えた事もなかったし…」

「時間はあるから、ゆっくり考えてくれればいいよ」

「…‥ハイ…」

 なんだか大人しくなってしまったリリアナを連れてルウドは皇子の部屋を退出した。
 部屋に戻ると思いきや、リリアナは突如ティア姫の部屋めがけて突進する。

「リリアナ様…?」

 ルウドもその後を追う。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

崖っぷち令嬢の生き残り術

甘寧
恋愛
「婚約破棄ですか…構いませんよ?子種だけ頂けたらね」 主人公であるリディアは両親亡き後、子爵家当主としてある日、いわく付きの土地を引き継いだ。 その土地に住まう精霊、レウルェに契約という名の呪いをかけられ、三年の内に子供を成さねばならなくなった。 ある満月の夜、契約印の力で発情状態のリディアの前に、不審な男が飛び込んできた。背に腹はかえられないと、リディアは目の前の男に縋りついた。 知らぬ男と一夜を共にしたが、反省はしても後悔はない。 清々しい気持ちで朝を迎えたリディアだったが……契約印が消えてない!? 困惑するリディア。更に困惑する事態が訪れて……

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

起きたら猫に!?~夫の本音がだだ漏れです~

水中 沈
恋愛
(猫になっちゃった!!?) 政務官の夫と大喧嘩した翌朝、目が覚めたら猫になっていたアネット。 パニックになって部屋を飛び出し、行き着いた先は夫、マリウスの執務室だった。 (どうしよう。気まずいわ) 直ぐに立ち去りたいが扉を開けようにも猫の手じゃ無理。 それでも何とか奮闘していると、マリウスがアネット(猫)に気付いてしまう。 「なんでこんなところに猫が」 訝しそうにするマリウスだったが、彼はぽつりと「猫ならいいか」と言って、誰の前でも話さなかった本音を語り始める。 「私は妻を愛しているんだが、どうやったら上手く伝えられるだろうか…」   無口なマリウスの口から次々と漏れるアネットへの愛と真実。 魔法が解けた後、二人の関係は…

魔力食いの令嬢は魔力過多の公爵に執着される

三園 七詩
恋愛
この国は魔力がある世界、平民から貴族まで誰もが魔力を持って生まれる。 生活にも魔法はが使われていた。 特に貴族は魔力量が多かった。 単純に魔力が高いと戦力になる、戦場で功績をあげれば爵位が上がる。 こうして魔力量を維持して地位を維持していた。 そんな国で魔力量の少ない娘が生まれた。 しかし彼女は人の魔力を吸う力があった。

王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako
恋愛
以前の投稿をブラッシュアップしました。 ランズ王国フリードリヒ王太子に嫁ぐはリントン王国王女クラリス。 クラリスはかつてランズ王国に留学中に品行不良の王太子を毛嫌いしていた節は 否めないが己の定めを受け、王女として変貌を遂げたクラリスにグリードリヒは 困惑しながらも再会を果たしその後王国として栄光を辿る物語です。

【書籍化決定】完全無欠の悪女です~悪役らしくわがまま人生謳歌します~

藍上イオタ
恋愛
「完全無欠の悪女、デステージョに転生してる!?」  家族に搾取され過労で死んだ私が目を覚ますと、WEB漫画世界に転生していた。 「悪女上等よ! 悪の力で、バッドエンドを全力回避!」  前世と違い、地位もお金もあり美しい公爵令嬢となった私は、その力で大好きなヒロインをハッピーエンドに導きつつ、自分のバッドエンドを回避することを誓う。  婚約破棄を回避するためヒーローとの婚約を回避しつつ、断罪にそなえ富を蓄えようと企むデステージョだが……。  不仲だったはずの兄の様子がおかしくない?  ヒロインの様子もおかしくない?  敵の魔導師が従者になった!?  自称『完全無欠の悪女』がバッドエンドを回避して、ヒロインを幸せに導くことはできるのか――。 「小説化になろう」「カクヨム」でも連載しています。 完結まで毎日更新予定です。 書籍化に伴いタイトルを「完全無欠の悪女です~悪役らしくわがまま人生謳歌します~」に変更しました。

処理中です...