意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十六話 ルウドの選択

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 突然リリアナが部屋に飛び込んできた。

「ティア様っ!私どうしよう!どうしたらいいのっ!どうしてこんな事になったの?どうしよう!」

「リリアナ…‥?」

 いきなり泣き出してしまった。
 次いでルウドが入ってきた。ルウドはドアを閉める。

「…‥リリアナ様…」

「……ルウド、話したわね?」

「話しました。そして皇子が真実を…」

「お兄様が?良く話したわね…、兄ながら少し見直したかも」

 ティアはリリアナの髪を撫でて慰めながら困ったようにルウドを眺める。

「もう少し時間をおいてから説明したかったわ」

「退屈していらしたのでつい。何時か知れる事を先伸ばしにしても仕方ないですし」

「リリアナ、黙っていて御免なさい」

「ティア様、私どうしたらいいの?こんな事、想定してない!」

「……まあ落ち着いて…」

 リリアナは混乱していた。ティア姫はリリアナの背を摩る。

「…‥まあそうよね、いきなりな話よね。ごめんなさい。だけどこうするしか方法がなかったのよ?とりあえず兄と会って貰いたかったの。
 でもそれからの事はあなたの自由だから何も言うつもりはないわ。これからどうするかはあなたの自由よ?今帰っても誰も咎めないわ」

「ティア様…‥」

「だけどできればもう少しここに残って兄を見て知って、そしてお返事してほしいの。兄が人を見染めるなんてなかなかない事だから」

「……そ、そうですね。それが最低限の礼儀ですよね。相手は皇子様だし。私だってこんな事は初めてです」

「この国の王家の風習はね、王族は自分で結婚相手を捜して決めないといけないのよ」

「はい、聞きました」

「でもお姉さまや私はともかく兄が難題でね。ただ一人の皇子な上に元々当人もそんなに外に出る人じゃないからなかなか相手も見つからなくてね。王家のパーティとか貴族主催のパーティに参加してもぼんやりしているから話にならないし周囲が困ってたのよ。
 気が付いたらもう二十歳だし。
 だけど今回の事。あの兄でもちゃんと人を好きになれると分かって私は心底安心したわ。
 もしかしたら女性が嫌いなのかと心配していたから」

「ティア様、それは余りな言いようでは?」

「いいじゃない?もうちゃんと選べるって分かったし。
だからねリリアナ、貴方との事が駄目になっても大丈夫よ?兄はきっとちゃんと結婚相手を選べるわ」

「そうですか……」
 







 リリアナは静かになったが何だか不安そうだ。
 逆にティア姫は一つの任務を終えすっきりした様子だ。これ以降は皇子の管轄と思っているのだろう。
 それはその通りなのだが…。
 ルウドは不安に感じる。
 こう言う事は当人達に任せてほっておくべきなのだがほっておいて本当に大丈夫なのか?
 もちろんルウドは関わる気はないが。

「……お騒がせして御免なさい、私、部屋に戻りますね」

「もう大丈夫なの?」

「はい、色々考えてみます」

 落ち着いたリリアナを部屋に送る為にルウドも姫の部屋を出る。






 リリアナを送ってから暇なルウドは騎士団の訓練場で剣の鍛錬をする。
 朝は騎士が少ないが見かけた騎士を捕まえて剣の相手をさせる。
 十人ほどに相手して貰ってから訓練場を出るとパラレウス皇子がいた。

「やあルウド、相変わらず強いな」

「パラレウス様がこんな所に。珍しい。どうされたのです?私お相手いたしましょうか?」

「いや、それはいい…」

 パラレウス皇子は皇子なので剣の心得は一通りある。だがあまり強くない、向いてもいない。

「……ところでルウド、リリアナさんは落ち着いた?何か言っていたかな?」

「混乱していましたが落ち着きましたよ。彼女はしっかり自分の考えを持って動く人ですからさほど心配には及びませんよ?後は皇子次第ですね」

「………」

「頑張って下さい」

「ル、ルウド…!」

 汗を拭いて立ち去ろうとしたところ皇子に捕まえられた。

「そんな突き離さないで私の話を聞いてくれ!私はどうしたらいいんだ?」

「…‥どうしたらと言われても…?」

 皇子はとても切羽詰っているようだ。いつも付いている皇子の護衛をふと見るとあからさまに顔をそ向けられた。

「……」

「ルウド!君だけが頼りなんだ!好きな女性を振り向かせる方法なら君が一番得意だろう?私にも教えてくれ!」

「そんな馬鹿な?なぜ私がそんな事を得意なのです?そんなわけないじゃないですか?」

「嘘だ、モテモテじゃないか?ルウドファンクラブとかあるって聞いたぞ?」

「不可効力ですよ?勘弁して下さい」

「そうだ、うちの妹を虜にしたこの笑顔か!」

「虜って…昔は変な顔とか言われてましたが…‥‥。しかし皇子なら有効でしょう」

「しかしそれだけでは……後は…」

「…贈り物とか…‥?」

「贈りものか。彼女は何が好きかな?」

「さあ?姫は何でも喜びますが」

「当然だ。好きな男から貰ったものなら何でも好きに決まってる」

「………‥」

「あとは言葉か。それが問題だ。私は彼女に何と言っていいのか分からないんだ」

「…‥世間話でいいじゃないですか?あとは誠意と愛情のこもった真実の言葉を」

「……なるほど。それであれほどに惚れられるのだな。分かった」

 なんだか引っ掛かるが皇子はようやく腕を離してくれた。
 ルウドは何だか疲れてしまった。





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