意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十七話 ロズの訪問

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 ルウドは襟を正した。
 真実を話すと決めるととても緊張する。
 しかも、いきなりそんな事を話して信じてくれるかどうかも分からない。

 ―――…信じてくれなかったらどうしよう?

 いやそれでも、話すだけ話すべきだ。彼にはそれを知る権利があるのだから。

「どうしたのさルウド?緊張して」

「…うん、ちょっとな。例の令嬢の事だが心当たりが。しかし、私などの話を聞いて下さるのか…、信じて下さるのか…‥。怒られそうで…」

「それでも話すべきだとルウドは思ったのだろう?なら後悔のない様に話すべきだ」

「証拠が何も無いと言うのが不安の原因だな」

「証拠か。とりあえず話してみたら出てくるかもしれないよ」

「…‥そうだな」

 どう話すべきか考えながら歩くうちにオーレイ伯爵邸に着いてしまった。
 客部屋に通されてルウドは緊張する。

「よく来てくれた、ロズアルド、ルウド」

「本日は報告がありまして」

 向かいのイスに座ったオーレイ伯爵がロズに目を向ける。

「何か見つかったか?」

「城内の来賓記録には伯爵と令嬢の記載がありました。記録と言えばそれくらいしか見つからなかったのですが実は」

 ロズが二コリとルウドを見る。

「なんだね?」

 ルウドは顔をあげて伯爵を見て言葉を続ける。

「来賓記録と令嬢の名前を聞いて分かったのです。ローディリア=オーレィ伯爵令嬢という方は多分、恐らく、私の母ではないかと…」

「………そうか…」

 伯爵はしばし目を閉じて、そしてルウドを見る。
 ルウドは自信なさげに伯爵の様子を見つめる。

「…‥あの、信じて頂けますか?」

「勿論だ。その彼女から譲り受けた髪と目が十分に君の言葉を信じるに値する。君は何をどこまで知っている?何か彼女から聞いているか?」

「……?何も。私は母の事は名前以外他には何も知りません。あと駆け落ち婚ということしか…」

「駆け落ちか、相手の男はランジール。その名には心当たりがある。城で庭師をしていた男だな」

「も、申し訳ありません」

「君が謝ることではない。しかし王の知人の庭師が相手なら王も隠し立てするか…。できちゃった賭け落ち婚ではな」

「め、面目ございません…」

「ルウドに罪はないだろう?」

「身内としてお恥ずかしい限りで…恐縮です」

「身内か…‥。王は違うだろう?」

「同じです。私はあの城でずっと育ってきたので」

「そうか、なるほどな」

 伯爵は大きく息を吐く。

「……そうか、有難うルウド。良く話してくれた。これで長い間抱えていたわだかまりもとれた。同時に安心できた」

「それは良かったです…」

「しかしそうなると私と君の間柄は祖父と孫という事になるが実はそうではない。君は何も知らないと言ったな」

「はい…、母の結婚前の事は一切知らされていません」

「事情があるのだ。彼女は私の家に幼いころ養女として入り、ずっと匿われて育った。その姿を人に見られてはまずかったからだ」

「…‥それはどう言う事で?」

「…君は誰にも何も知らされていないのだろう?君がずっと城で守られて育てられていた以上、この事情を知る者は居るはずだ。にも関わらす何も知らされていないと言うのは知る必要のない事だと判断されていたはずだ」

「…‥ハイ、母も父も秘密を墓場に持って行きました。今唯一知っているはずの陛下は未だ知らぬ存ぜぬを貫いています」

「それでも知りたいか?それを知る事で今の生活が壊れてしまう事になったとしても?」

「知ってはいけないと言う事ですか?」

「いいや、何を知って何をするのかも君の判断で自由だ」

「みんなそう言います、だから私は困るのです」

「そうか、ならば覚悟が出来たらいつでも聞きに来るといい。私には何時でもその用意がある」







 ――――知らなかった扉を開ける事が出来る。

 森奥の湖の側で寝転んで星空を見上げて考える。
 秋の夜にすることではないがルウドは一人になって考えたい時、ここに来る。
 少々寒いが静かで誰も来ない。居心地が良かった。

「―――…ルウド…」

「……ロヴェリナ様…」

 時おり魔女や幽霊が現れる。

「何しているの?」

「私はどうしたらいいのか…」

「またそれ?いつも悩んでいるわね」

「知りたい事を知れば何かが変わると言われれば揺らぐでしょう?」

「迷ってばかりね」

「いいじゃないですか?大事な事ですよ」

「そうねえ…」

「反対とかしないんですか?」

「しないわよ。ルウドの自由ですもの」

「それが一番困るのです」

「誰かに背中を押して貰いたいのかしら?」

「押してくれる人がいないです」

「ルウドは甘える人がいないから。恋人とかお嫁さんとか早く作るべきよ?」

「正論ですが今いません」

「お姫様は聞いてくれるんじゃない?」

「冗談ではないです。私の事で心配などかけれますか」

「……友達とか?」

「余り詳しい事は話せませんが、そうですね…」

 ルウドは起き上がる。

「ねえルウド……」

「はい?」

「あなたが何をしても私達は、ただあなたを見守るだけよ。いつも幸せである事を願って」

「……有難うございます」





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