意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十七話 ロズの訪問

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 早朝からの訪問者に王は眉をひそめ、大きくため息をついた。

「…‥何の用だ。こんな朝から。下らん用なら叩きだすぞルウド」

「そんなに嫌がらなくても…。お忙しいところ申し訳御座いませんが少しお話聞いて下さい。困っているのです」

「私は忙しい。なのになんで暇なお前の悩みを聞かねばならんのだ?」

「陛下に関わりがあるからですよ。オーレイ伯爵を知っておられますよね?」

「…‥どこかで聞いた事がある名だな」

「もう惚けないでください。私はご本人にお会いしました。私の母の保護者だった方でしょう?」

「だからなんだ?」

「オーレイ伯爵はずっと令嬢を捜しておられました。何故教えて差し上げなかったのですか?」

「言える訳がなかろう、伯爵令嬢が庭師に攫われたなどと。スキャンダルもいいとこだ。他国に知れ渡っていいことなどあるはずもない」

「それはそうですが…」

「そんな話ならさっさと出て行け。お前に話す事はないと随分前から言っているだろう。下らん詮索をするな」

「やはり陛下は秘密を墓場まで持っていく気ですね」

「秘密も何も。私は何でも知っているわけではない。詳しい事は知らされていないからな」

「知る必要がないと言う事ですね…」

「お前の今の生活に必要あるまい」

「自分と縁のある者を捜してはいけませんか?」

「好きにすればいい。誰もお前を止める者はいない」

「みんなそう言います。だから私は分からなくなる」

 王は書面から目を離し、呆れたようにルウドを見る。

「お前、何しに来た?誰かにそれは正しい事だと言って貰いたいのか?」

「……」

「誰もお前の背を押すものなど居ないぞ?自分のしたい事くらい自分で考えろ」

「…………」

「たとえお前が悪しき選択をしようとも、ここは何も変わらない。お前の帰る家はここにあるのだからな」

「……悪しき選択って何ですか?」

「時々考えなしに姫を口説いていると聞いたが?」

「誤解です。そんなことしてません」

「ティア姫に手を出すでないぞ」

「なぜいつもそんな話になるのです?」

「目下一番気になる心配なところだ。このお邪魔虫め」

「まあ否定はできませんが」

「お前もう出て行け」

「お邪魔しました。……ああそうだ、あと一言だけ」

「なんだ?」

「―――親子共々長い間、大変お世話になり有難うございました」

「……」

 ルウドは深くお辞儀をして、部屋を出て行った。
 王は再び溜息をつく。

 ――――――今さらだ、そんな事は。

 王はただ友人一家の生活を守っただけだ。彼らはこの地で静かに幸せに過ごし、そして今は安らかな眠りについた。
 彼らの真意はともかくとして、それが世間的に正しかったかどうかと問われれば、はっきり自信を持って正しいとは言い難い。
 この先彼の息子がどのような選択をしようと王は黙って見守るのみだ。






 朝から隊長部屋で執務仕事をしていた三番隊長ハリスは珍しい訪問者に眉を顰めた。

「ルウド?どうしたんだ珍しい。私の仕事場に来るなんて」

「ハリスがここにいる方が珍しい。忙しいのか?」

「二番隊が抜けた分の補充人員は足りているけどそれを纏めるのがね」

「ふうん。ところで私は少し城外へ出ようと思うのだが」

「恋人探しか。それはいいな」

「恋人ではないが、捜し物をしに。休暇期間内に戻れないかもしれない」

「おおそうか。その時は早めに手紙をよこすんだな」

「……まあそうするよ」

「…‥そういえば姫様の許可は取ったのか?」

「…‥何故許可を取らねばいかんのだ?」

「あとでロクな事にならないからしっかり承諾を取ってくれ。困るのは城内警備の兵達なんだから」

「……分かった。迷惑をかける」

 ルウドが何だか気落ちした様子で出て行った。
 しばらく執務に専念して、ハリスはふと手を止める。

 ――――外に捜し物って何だ?

 宝捜しだろうか?それともやはり恋人捜しとか?
 そうなると姫には説明しにくそうだ。






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