186 / 200
第二十七話 ロズの訪問
6
しおりを挟む早朝からの訪問者に王は眉をひそめ、大きくため息をついた。
「…‥何の用だ。こんな朝から。下らん用なら叩きだすぞルウド」
「そんなに嫌がらなくても…。お忙しいところ申し訳御座いませんが少しお話聞いて下さい。困っているのです」
「私は忙しい。なのになんで暇なお前の悩みを聞かねばならんのだ?」
「陛下に関わりがあるからですよ。オーレイ伯爵を知っておられますよね?」
「…‥どこかで聞いた事がある名だな」
「もう惚けないでください。私はご本人にお会いしました。私の母の保護者だった方でしょう?」
「だからなんだ?」
「オーレイ伯爵はずっと令嬢を捜しておられました。何故教えて差し上げなかったのですか?」
「言える訳がなかろう、伯爵令嬢が庭師に攫われたなどと。スキャンダルもいいとこだ。他国に知れ渡っていいことなどあるはずもない」
「それはそうですが…」
「そんな話ならさっさと出て行け。お前に話す事はないと随分前から言っているだろう。下らん詮索をするな」
「やはり陛下は秘密を墓場まで持っていく気ですね」
「秘密も何も。私は何でも知っているわけではない。詳しい事は知らされていないからな」
「知る必要がないと言う事ですね…」
「お前の今の生活に必要あるまい」
「自分と縁のある者を捜してはいけませんか?」
「好きにすればいい。誰もお前を止める者はいない」
「みんなそう言います。だから私は分からなくなる」
王は書面から目を離し、呆れたようにルウドを見る。
「お前、何しに来た?誰かにそれは正しい事だと言って貰いたいのか?」
「……」
「誰もお前の背を押すものなど居ないぞ?自分のしたい事くらい自分で考えろ」
「…………」
「たとえお前が悪しき選択をしようとも、ここは何も変わらない。お前の帰る家はここにあるのだからな」
「……悪しき選択って何ですか?」
「時々考えなしに姫を口説いていると聞いたが?」
「誤解です。そんなことしてません」
「ティア姫に手を出すでないぞ」
「なぜいつもそんな話になるのです?」
「目下一番気になる心配なところだ。このお邪魔虫め」
「まあ否定はできませんが」
「お前もう出て行け」
「お邪魔しました。……ああそうだ、あと一言だけ」
「なんだ?」
「―――親子共々長い間、大変お世話になり有難うございました」
「……」
ルウドは深くお辞儀をして、部屋を出て行った。
王は再び溜息をつく。
――――――今さらだ、そんな事は。
王はただ友人一家の生活を守っただけだ。彼らはこの地で静かに幸せに過ごし、そして今は安らかな眠りについた。
彼らの真意はともかくとして、それが世間的に正しかったかどうかと問われれば、はっきり自信を持って正しいとは言い難い。
この先彼の息子がどのような選択をしようと王は黙って見守るのみだ。
朝から隊長部屋で執務仕事をしていた三番隊長ハリスは珍しい訪問者に眉を顰めた。
「ルウド?どうしたんだ珍しい。私の仕事場に来るなんて」
「ハリスがここにいる方が珍しい。忙しいのか?」
「二番隊が抜けた分の補充人員は足りているけどそれを纏めるのがね」
「ふうん。ところで私は少し城外へ出ようと思うのだが」
「恋人探しか。それはいいな」
「恋人ではないが、捜し物をしに。休暇期間内に戻れないかもしれない」
「おおそうか。その時は早めに手紙をよこすんだな」
「……まあそうするよ」
「…‥そういえば姫様の許可は取ったのか?」
「…‥何故許可を取らねばいかんのだ?」
「あとでロクな事にならないからしっかり承諾を取ってくれ。困るのは城内警備の兵達なんだから」
「……分かった。迷惑をかける」
ルウドが何だか気落ちした様子で出て行った。
しばらく執務に専念して、ハリスはふと手を止める。
――――外に捜し物って何だ?
宝捜しだろうか?それともやはり恋人捜しとか?
そうなると姫には説明しにくそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。
藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」
街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。
だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!?
街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。
彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った!
未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!?
「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」
運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
とめどなく波が打ち寄せるように
月山 歩
恋愛
男爵令嬢のセシルは、従者と秘密の恋をしていた。彼が従者長になったら、父に打ち明けて、交際を認めてもらうつもりだった。けれども、それを知った父は嘘の罪を被せて、二人の仲を割く。数年後再会した二人は、富豪の侯爵と貧困にあえぐ男爵令嬢になっていた。そして、彼は冷たい瞳で私を見下した。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
契約結婚のススメ
文月 蓮
恋愛
研究一筋に生きてきた魔導士のレティシアは、研究を続けるために父に命じられた結婚をしかたなく承諾する。相手は社交界の独身女性憧れの的であるヴィラール侯爵アロイス。だが、アロイスもまた結婚を望んでいなかったことを知り、契約結婚を提案する。互いの思惑が一致して始まった愛のない結婚だったが、王の婚約者の護衛任務を受けることになったレティシアとアロイスの距離は徐々に縮まってきて……。シリアスと見せかけて、コメディです。「ムーンライトノベルズ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる