意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十七話 ロズの訪問

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 魔術師の塔に行くとティア姫が客部屋で本を調べていた。
 魔法使いは出かけているようだ。

「状況はどうですか?何かいい情報ありましたか?」

「ないわよ。誰かさんが情報の共有を拒むから」

「私は何も知りませんよ」

「ルウドの嘘つき。全てにおいて嘘ばっかり」

「すべてって…。そんな事はないです」

「じゃあルウドが知っていること話してよ」

「私が何を知っていると言うのです?」

「ロレイアで何を知ったの?」

「何も知りませんよ」

「嘘つき」

「……」

 ティア姫がルウドに詰め寄る。

「真実の書、返して」

「……姫…」

「私から私の欲しいものを次々取り上げて、それでどうするつもりよ?」

「そんなつもりはありません。あれは……あれだけは、とても危険なものなのです。封印してしまうべきものです。見ちゃいけません」

「私は魔法使いじゃないから魔法は使えないわよ。なのに何が危険なの?」

「古文を解読しておかしな物を造るじゃないですか?」

「材料がないから現実的ではないわよ?」

「では何の為に調べるのです?」

「ロヴェリナ様の言葉を聞く為よ」

「聞いてどうするのです?それが何になります?」

「過去の偉人が残した言葉を知りたいと思ってはいけないの?あれを見つけた以上、私に知る権利はある筈よ?」

「偶然ですよ?」

「運命よ!」

「思い込みでしょう。もうやめて下さい」

「もう何年も前からやっていることよ。今更やめないわ」

「どうすれば止めて下さるのか…」

「どう言っても分かってくれないのね。平行線ね」

「…‥とにかくああいう危険なものは魔法使いに任せてもう忘れて下さい。ところで私、少しばかり所用で出かけたいのですが」

「…‥ルウド…」

 ティア姫が何故かガックリ息を落す。

「……ホント何も分かってないわよねルウド」

「何がですか?」

 ティア姫ががっちりルウドに組みついているのでルウドは身体が動かせず居心地悪そうに身じろぎする。

「…‥離して下さい」

「嫌よ、ルウドのばか。私の欲しいものは別に本だけではないわよ。ルウドも欲しいんだから」

「……ティア様…」

「簡単に言ってごまかしたって騙されないわよ?どこへ行って何をするの?最近旅人とつるんで何かしているでしょう?また何を知ったの?」

「……その、大したことでは。姫に関係ある事でも…」

「あるわよ!ルウドの事なら全部私にも関係あるわよ!」

「そんな無茶な…」

 姫の迫力に押されたルウドの目が泳ぐ。

「また私に隠し事するの?どうして?そうして隠したまま私から離れるつもり?絶対許さないわ!」

「少し所用で出かけるだけと言ったでしょう?」

「少しの所用で出かけるのにいちいち私に断りに来た事なかったでしょう?長くなりそうだからわざわざ断りに来たのではなくて?」

「そ、そうですよ。姫様にご心配を掛けてはいけないと」

「心配よ。絶対帰って来て。でなきゃ許さない」

「…勿論ですよ」

 ティア姫はそっとルウドの胸に顔を埋める。

「姫…‥?」

「ルウドはずっと私の傍に居るの。どこにも行ってはいやよ。ここがあなたの居場所なんだから。約束したじゃない」

「約束しました。ずっと傍で貴女を守ると。だから必ず帰ってきます」

 ルウドはそっと姫を抱きしめる。

「……絶対だからね、もし帰ってこなかったら迎えに行くんだから」

「大袈裟ですね。ちょっと所用で出かけるだけだと言っているのに。泣くほどの事ですか?」

「泣いてないわ」

「そうですか」

「ルウド…」

「はい?」

「キスして」

「何ですいきなり。嫌です」

「恋人同士の誓いの証じゃない」

「知りませんよそんな事。どこで覚えたんですか。そもそも恋人ではないです」

「何よケチ。あんな事までしておいて。まだ逃げる気?いい加減観念したら?」

「ティア様こそいい加減よそに目を向けて下さい。立場ってあるでしょう?」

「相手を自分で選ぶのは国の風習よ。立場なんか考えて相手は選べないわ」

「ホントに困りましたね」

「ルウドは堅苦しいのよ。深く考えなきゃ簡単に話しは進むのに」

「簡単に進んではたまりません」

「何がいけないのか分からない。何時まで平行線なの?」

「姫、もう離して下さい」

「嫌よ」

「……全くわがままばかり…」

 ルウドはティア姫を引き剥がす。

「ルウド!」

「約束は守ります。だから大人しくお城で待っていて下さい」

「ルウドの馬鹿!朴念仁!分からずや!」

「少しは大人になって下さいね」

 ルウドは困ったように笑い、部屋を出る。

 ――――姫様とは少し離れた方がいい。

 あまりにも長く傍にいて近すぎたために離れがたく、耐えがたい。
 だけどそれは二人にとって必要な事だ。
 共に依存したままではもっと遠くの世界すら見渡せないのだから。








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