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第二十九話 魔女ロヴェリナの遺産
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しおりを挟む昼食後には伯爵邸で休むことにした。
この数日で街の外を出歩いて様々な情報を得た。
庭園でお茶をもらいつつロズアルドは微笑む。
「君はそれでどうするの?」
「・・・・・・」
情報を得て何をするのかと聞かれても今の自分に出来ることはない。
「自分の周囲のことを少し知っただけだ。それで私の何かが変わるわけでもない」
「やっぱりブレないんだね」
「私は今の生活が好きなんだ。どこへ行く気にもなれない。たぶん、一生」
「そうか・・・」
「この生活を捨ててまで手に入れたいものなどないんだ」
「そうだと思っていたよ。きっとそれがいいと思うし伯爵も言っていた」
「ロズは何がしたいんだ?」
「‥‥今それを君に言ってもきっと意味がないと思うよ」
「そうか・・・」
「だけどそれでいいと思う。僕はただ確認したかっただけなんだ。君の人生を」
「そうか。ではこれからどうするんだ?」
「僕は旅人だよ。また旅に出るよ、冬はここで過ごして、春が来たら」
「そうか、ロズがここにいるなら、伯爵は寂しくないな」
「冬の間だけね」
「・・・・・・」
こんな大きな屋敷に一人では寂しすぎる。
だからルウドを養子にと伯爵は言ったのだろう。
結婚云々の話は置いておいて自分と縁あるものとさっぱり縁を切ることは出来ないしほっておくことも出来ない。
「……伯爵が許してくださるなら私もしばらくここに滞在しようかな。仕事はここからでも十分行けるし」
「それは伯爵が喜ぶね、僕もうれしいよ」
実際伯爵に滞在を願うと大変喜ばれ、好きなだけ滞在していいと言われた。
秋雨が降るたびに街に空気は冷え込んで、冬の色に塗り替えられていく。
空がどんよりと曇る日が多く、人々の足も鈍る。
ルウド隊長が休暇で外に出て行ってしまったあの日からティア姫が静かになった。
一日自室に閉じこもりきりだ。食事には出ているのだろうがそれ以外の外出はしていない。
おそらく部屋で書物を読み漁っているのだろうがあまり静かだと周囲が心配になる。
護衛達が姫は病気ではないかと心配していた。
ルウド隊長がこんなにいないのは初めてのことだ。そして二番隊も休暇中。
ハリス率いる三番隊ではどうにも対処に困り、ただ黙って見守るしかない状況になっていた。
「私がもっと何か、気の利いたことを言えれば…」
「ハリス隊長、止めて下さい。今何を言ったところで逆効果にしかなりませんから」
「ゾフィーどの、何か解決策はないですか?姫が静かだとこう、不安が蔓延するのですが…」
「静かなのはいいことです、きっともうすぐ元の姫様に戻られますよ?」
「ルウド何してるんだろう?早く戻ってこないかなあ」
二番隊の休暇はそろそろ終わる。隊員たちもぽつぽつと里帰りから戻って来ている。
「遅くなるかもとは言っていたけどそれならそろそろ連絡が来てもいいし」
「では期間内に戻るのでは?」
「そうだねゾフィー殿。もしルウドが恋人とか連れて戻ってきたら惨劇が起こるだろうけど」
「・・・ええと?そういう話でしたか?」
「休暇内に恋人ができても別におかしく無いでしょう?城の外へ出ていたのだし」
「ルウドさんはそんな人ではないでしょう?姫様を傷つけるような真似はしないと思います」
「いつまでもそんな事ではダメだと思って外へ出たのではないですか?ルウドは」
「そうなのですか?」
「探し物と言っていましたが、ルウドの探すものなんてそれしか思いつかない」
「そうですか。…いやしかし…」
「お嫁さん連れてきたらどうなるのだろう?」
「‥‥ハリスさん、怖いからもう止めて下さい・・・・・」
「そうですね、すみませんでした」
ここに姫がいたら大惨事である。ハリス隊長の口はホントに滑りやすい。
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