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第五話 幻の秘薬と奇跡の姫
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しおりを挟む城門をくぐってようやく馬車が止まった。
馬車を降りると警備隊が数人駆けつけてきた。
「ティア様!良かった!無事で良かった――――!」
「本当に!もうどうしようかと!腹を切っても済まないとこでした…」
「隊長に何て言ったらいいのかと、絞殺されても何も言えないような気がしました…」
「こんなっ、こんな事って…!」
まんまと護衛隊の目を掠めて街へ出たティアはバツが悪そうに護衛達を見る。
「――――――ごめんなさい…‥、悪かったわ…‥」
護衛たちは泣いている。駆けつけてきたハリスは困ったように彼らを一瞥し、姫に目を向ける。
「……ティア様…」
「ごめんなさい」
「御免ですんだら警備はいらないだろ。いつもいつも問題ばかり起こす姫だな」
言ったのはティアの後ろに来たコールだ。
「コール、久しぶり。姫を確保してくれて有難う」
「連絡が入った時はもう寿命が縮み上がりましたよ」
「私なんかほんと死ぬ覚悟したよ……」
二人は何故か明るく言う。とりあえず姫を確保したことで安堵したようだ。
「―――ああ、姫様、詳細はじっくり聞かせていただきますのでそのおつもりで」
ティアに目を向けたハリスの目はさすがに笑っていなかった。
「コールにも話は聞きたいがどうする?」
「報告書でいいか?街の様子が気になる」
「分かった。ご苦労さん」
そうして周囲はバタバタと慌ただしく動いた。
ティアはガッチリ警備隊に連れられて、罪人のごとく連行された。
連行された先は意外にも魔法使いの塔だった。
「……ティア様…‥」
「ゾフィー、ごめんなさい」
皆に心配を掛けてしまった事は分かったのでとりあえず謝る。
「……まあ無事ではあったわけですし」
「しかし何故こんな事になってしまったのか、原因を追及せねば」
ハリスと護衛達は客部屋を借りて姫を座らせ尋問を始める。
「さあ姫様、そもそもなぜ街へ出る事になったのです!」
「……だってあの子が、私には何も出来ないって……出来なかったけど…」
「あの子?」
「ゾフィーに助けを求めてきた子供。お姫様じゃ役に立たないって」
「……」
「命を取り留める事が出来たわ。でもそれですごいコールに怒られた。お姫様は余計なことしちゃいけないんだって。奇跡を起こすと後が怖いって」
「……」
「私街に出て、どれだけ物知らずだったか思い知ったわ。お姫さまだから何も知らなくていいって色々隠されてきたのね……」
ティアの知っている世界は城の中だけ。その他の世界を実際見に行こうなどと思った事もなかった。話を聞いて満足しているだけ。
当たり前のように守られて育って、それが普通と思っていた自分が特別なお姫様なのだと初めて実感した。
落ち込む姫にハリスはかける言葉がない。
姫の脱走の原因が侵入者の子供なら、侵入を許した警備隊のミスだ。
しかも姫は知らなくてもいい事を知ってしまった。
「……姫様……」
「ねえ、ルウドは知ってるの…?」
「いいえ、まだ言っていません。せめて、熱が下がってからでないと。また熱を出されたら困りますし」
「そうね…‥」
「とにかくもう二度と一人で外へなど出ないでください。姫が大人しく護衛に守られていて下さるなら黙っていて差し上げてもいいですが」
「……ルウドに黙っててくれるの?ほんとに」
「そうですね、この約束を守って下さるなら」
「分かったわ、約束するからルウドには黙ってて」
ハリスは笑みを浮かべる。
「そんなにルウドが怖いですか?」
「違うわよ、心配されるのが嫌なのよ」
「そうですか、ではルウドが起きてくるまでにいつもの姫様に戻っていて下さいね?」
ハリスは席を立つ。早急に警備の見直しが必要だ。
あとを護衛隊に任せて外へ出るとゾフィーが佇んでいた。
「ゾフィーどの…」
「姫はどうでした?」
「落ち込んでいましたね。貧しい街の様子を見たのでしょう。そこの人々も」
「また街を見に行くというかもしれませんね。私の責任ですね…」
「いいえ、子供の侵入を許した私の責任です。姫は、まあしばらくは大人しくしていて下さりそうです」
「そうですか…‥で、その子供は?」
「……」
侵入者の子供は勿論捕える。もう街でコール隊長が捕えているだろう。
いらない事を街の人々に子供が吹き込む前に口を封じておく必要がある。
「全く子供一人に……」
気がつけばもう夜空。星を見つめてハリスは思う。
ルウドのいない一日はよその子供の掻きまわされた一日だった。
ルウドが寝込んでいたから姫も普通に大人しかったのに。
真面目に働いているのになんだか報われない…‥。
ハリスは疲弊して深く息を吐いた。
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