意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第八話 真実の書

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 魔術師の塔へどかどかとやってきたティア姫は魔法使いゾフィーへ堂々と言い放った。

「私は行くわ!誰が反対しようがどうしようが絶対行くからね!」

 ゾフィーは怯んだ。姫の護衛で張り付いているルウドも困った様子で姫を見ている。

「毒は消せるの!今すぐに毒消しを飲ませれば皆助かるのよ!とりあえず今はあの薬を使うわ!」

「……姫、皇子の許可は…?」

「体面気にして動かない人の言うことなんて聞くもんですか!助かる命があるのに助けないなんて最悪よ!もう待てないわ!こっそり街に行って重症患者に薬を飲ませてくるわ!」

「……‥姫…」

 無茶である。だがこの姫は危険すら省みず突き進んでいこうとする。
 反対する者がいれば倒してでも先に行く。そこに壁があれば破壊する。
 姫が持つ手札が姫に力を与える。

 何故こんな事になったのだ?

 ルウドもゾフィーも大変困った。
 普通のお姫様は部屋で大人しくしているものだ、姫の姉アリシア様のように。

「お待ちなさい、姫」

「何よ、ルウド。止めたって無駄よ?」

「別に止めはしませんが、薬を届けるのなら別に姫が行く事はないでしょう?兵に届けさせなさい」

「でも、こっそり飲ませるのよ?簡単に行かないわ」

「騎士隊の兵ならば簡単に街の牢に入り薬を飲ませるなど容易いですよ。街をろくに知らないあなたよりはね?」

「………」

 ティア姫は黙ってルウドを睨む。

「それとも貴方は私の部下が信じられないとでも言うのですか?」

「……分かったわよ、任せるわよ。ついでに幾つか買い物も頼むわよ」

「……‥」

 ティアは買い物リストをルウドに渡すとあとはゾフィーに頼んで調剤室に籠ってしまった。

「……ルウドさん」

「仕方がない。姫には街にだけは出て欲しくないんだ。そのための多少の妥協はやむをえまい」

 ルウドは買い物リストを開いて眉をひそめる。

「……どこにあるんだこんなもの?」

 意味が分からない。またいつもの嫌がらせだろうか?







 外の用件は騎士達が果たしてくれるようなのでティアは研究に専念することにした。
 材料は外で調達してきてくれるのでいいが問題はまだ解読出来ていない文書などがあるところだ。
 ただちに資料を集めて解読に取り掛からねばならない。
 ゾフィーの調剤部屋にも本がある。しかしここの本はゾフィーの集めたゾフィー好みの本。一応調剤系の専門書もあるがあまり役に立たない。

 ロヴェリナの記述書は完全な魔法薬の専門書。だからこそ難しい文書や専門用語がずらずらと並び、素人では到底解読できないようになっている。

 だがティアは諦めない。そもそも記述書の研究はもうかれこれ六年も続けている。
 少しは理解しているつもりなのだ。
 だからこそ、例の万能薬を見つけた。

「急がなきゃ!時間が足りない!」

 バンとドアを開けると廊下にいたゾフィーとルウドと目があった。

「―――行くわ!」

「…姫様、どちらへ…?」

「調べ物をするわ。まず資料集めよ!」

「……?」

 ゾフィーは困った顔で姫を見送り、ルウドは分からないままに姫に付き従う。








「お兄様!書庫で捜し物をさせていただくわよ!」

 突然バンとティアはドアを開け、皇子の書斎に入ってきた。そして無遠慮に捜し物を始めた。

「……ルウド……」

 続いて入ってきたルウドを責めるように見ると、ルウドは困ったようににが笑う。

「申し訳ありません。たぶん、すぐ、済むと思いますから…」

 別にルウドが謝る様な事でもないが彼はすまなそうに部屋の隅で姫を待つ。

「ティア、何を捜しているんだ?」

「ん、いろいろ」

「………‥」

 色々って何だ?

「……ルウド…」

「私にも分かりかねます」

「ルウドなのに……‥」

「私だからと言って姫の全てを知っているわけではありません」

「そうなのか…‥?」

 幼いころより実の兄より慕っている彼にはティアは秘密一つ無いモノと思っていた。
 それは結構意外だ。
 すると捜し物に集中していたティアが突然怒りだす。

「お兄様のばか!何考えてるのよ!ルウドが私の全てを知っているわけないでしょう?いやらしい想像しないでよ!」

「…いや、そう言う意味ではないが。君こそ何考えているんだ?」

 言い返したらぎろりと睨まれた。お姫様なのにこれでいいのかと時々疑問に思う。

「もう、いいわよ。お兄様、何冊か借りて行くわよ」

 そして慌ただしく出て行った。





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