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第九話 騎士隊長コールの災難日誌
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しおりを挟む―――皆に見捨てられてしまった。
ルウドはただ星を見て途方に暮れる。
なぜ自分は今こんな状況に陥っているのだろうか?私は今日何か悪いことしただろうか?分からない。何がなんだかさっぱり分からない。
「………」
浮気とか言われて泣かれても大体困る。これをどうしろと言うんだ?
泣きだした姫。迂闊に抱きしめる事など出来ない。
「……ひ、姫様。そろそろ部屋に戻りましょう?私の事なんかどうでもいいじゃありませんか?」
「良くなんか無いわよ!ルウドの馬鹿!どうして私だけが駄目なのよ!いつもいつも私ばっかり心配して、どれだけ愛しても何一つ答えてくれなくて。しかも何?私の目の前で他の女の物になって貴方は幸せになるの?そんな酷い事して私に何をどう幸せになれって言うの?そんなの耐えられる訳ないじゃない!」
「……姫、そんな酷い事、しませんから」
「―――――嘘つき、嫌い…」
ルウドはたまらずティア姫を抱きしめた。
どんな理不尽でも、傷つけてしまったと思うと堪らなくなる。
「私はティア様好きですよ。ずっとこれからも…‥」
耳元でささやくとビクリと姫の肩が震える。
「子供を慰めるみたいに言わないで。どうせ女として愛してもくれないくせに」
「……‥」
姫の翠緑の瞳が切なそうにルウドを映す。
ルウドは内心焦った。
「……と、とにかく今日は姫の不始末を片付けただけですから他意などあるわけないのです。もうあんな、よその娘さんに害を及ぼすようなこと、やめて下さいよ?あなたのせいで酷い出費ですよ全く」
「……本当にそれだけ?」
ルウドは懐から小箱を取り出す。
「帰りに買い物をしていたから遅くなったのです」
小箱の中を開けて、姫に差し出す。姫は驚いて箱の中身とルウドを見比べる。
「…‥‥これ…?」
「姫様へお土産です。その、安物ですが」
「なんで……?」
「…ハリスに付き合っていった店に姫様に似合いそうなものがあったので」
ハリスに言われた通りの言い訳を言うと姫が何故かまたぽろぽろと泣き始めた。
「……‥姫様…?」
ティア姫は小箱を抱きしめ嬉しそうにルウドを見て微笑む。
「―――…嬉しい、有難う…」
安物の適当に選んだ物をこんなに喜んで貰えると思わなかった。
もっと高いものにすれば良かったと愛しすぎる姫の笑顔をみた瞬間、悔やんだ。
「…あそこで手を出せないのがルウドだよねえ。私だったらとっくに手を出してるよ」
森の陰で隠れていたハリスは呟く。
一緒に覗き見していたコールとパティは黙って見ている。
実際、あの姫様を真近で見ていてあんなに思いを寄せられて手を出さないなんて信じられない。普通の男なら絶対出してる。
なぜルウドが耐えられるのか、本当に耐えているのか、それは当人にしか分からない。
「でもルウドさん、また森で頭冷やすのかなあ……」
それは確実にあり得る。
三人は溜息をつく。
夜の森は、夏であっても冷え込んでいた。
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