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第十話 薬品の効能と大きな弊害
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しおりを挟む【街の商人が裏で毒を売っている】
商人が商いをするには街役人の許可が居る。余所から来る商人も国に入る際の検閲と許可証が居る。
毒の販売など許可が下りる訳がない。
「裏売人が忍び込んでいる可能性がある。捜し出して即刻捕えるんだ」
皇子が命じ、コールはただちに街へ戻る。
捜査のやり方は街役人に任せられる。
街の捜査を任されたコールは責任重大だ。
「……なんてこと…!」
コールしか知り得なかった情報は当然のようにティアの耳にも入った。
なぜ入ったのか。もちろん内通者がいたからである。コールの報告をばっちり聞いたとある騎士はその手柄を持って嬉々としながらティア姫に報告した。
ゾフィーとティアは事の深刻さにしばし黙りこむ。
「どうして毒なんか持ちこんだのかしら…?」
「それはその商人に聞いてみないと分からないですねえ」
「コール、犯人を捕まえられるかしら?捕まえる前に街から逃げる恐れもあるわね。逃げられたらこの件も分からずじまいね」
「……この件も…?」
「こちらからいぶり出す作戦に出てはどうかしら?商人なんだから儲かると知れば多少危険でも出てくると思うの」
「どうか危険な事は…‥」
「私に危険がなければいいのでしょう?ないわよ。だって動くのは私じゃないもの」
「………」
姫はさらさらと何か文字を書いてそのメモを騎士に渡す。騎士はすぐに出て行った。
「……‥姫?今何を…?」
「私は研究を進めないと。ゾフィーはもう準備は?」
「まだそんなには…。出来たものから街へ流す算段ですが」
「じゃあ調剤室は入れないわね。私はしばらく地下に籠るわ」
「…‥ハイ…」
何だろう?また何かよからぬ事を企んでいるのだろうか?
ただの目的追求のための研究ならまだしも姫にはまだ何か他意がある様にしか思えない。
いぶり出す作戦?何だろう…‥?
いやな予感しかしなかったがゾフィーは考えるのをやめた。
本当に出ると思わなかった王の許可が出てしまった。あの毒を街に流し使用するには問題があり過ぎる。危険極まりないのだ。
そちらの問題を考えるのが先決だ。姫には騎士が付いている…。
「ではよろしく頼むよ、我々の検証には貴方の協力が不可欠だ」
「ええ、勿論。報酬に見合うだけの協力は致しますとも」
とある貴族の男と下街の商人風情の男は握手を交わす。
必要なのは確実な情報。その為には多少の危険はかい潜る。
牢の患者達は例の毒消しを飲んで快方に向かっている。
その噂を聞いて毒を大なり小なり含んだ街人が役所に押し掛けている。
役人は近くの病院を開放し、病人を運ばせ処置を開始する。
コールはゾフィーから毒消しを預かった。預かる際に諸注意を受け、これの危険性を聞いた。
これは毒だ。毒消しに使う以外は猛毒でしかない。
なので預かったのはただの一本の小瓶だけだ。それでも使用量が一人一滴ならばそれで大方事足りる。なくなったらまた貰いに行くという事になっている。
「いいか、使用量をくれぐれも間違えるなよ」
小量の毒を含んだものには更に小量の解毒薬でいい。一滴を更に水で薄めて使用する。
毒を含んだと助けを求めてきた街人達は予想よりずっと多かった。
「――――――何故こんなに…‥?」
誰かが悪意を持って毒を街に流しているのは本当なのだろう。
コールの部下達には毒の出先の調査をさせている。街役人には患者に効きこみ、門の検閲、商人の調査を任せている。
もう少し遅ければ死者が大量に出始めて街で騒ぎが起こり、大ごとになるところだった。
しかしまだ終わっていない。早く元凶を捉えなければ。
街門は朝から軍兵が沢山いて煩いくらいに検問をしていた。中へ入る旅人は勿論のこと、出て行こうとする商人などはことさら厳しく。
皆困っていたが原因はすでに街中に知れていた。それだけの数の患者が出ていた。
「本当に噂どおりだったなんて」
どこでどうやって毒を盛られたのか分からないというからことさら不気味だ。
街の者達は不安で食事も喉を通らないだろう。
「とんでもない事だわ。早く犯人捕まんないかしら」
店の入り口で少女は門の様子を見つめる。
これでは旅人の怪しげな売り物も街には通してもらえなさそうだ。
「やあこんにちは。暇そうだね?」
顔をあげると綺麗な顔のお兄さんがこちらに来てニッコリ微笑んだ。
「…ええ、暇よ。街がこんな様子ではねえ。売り買いも迂闊にできなさそうだし。当分こんな調子になるのかしら」
「犯人さえ掴まれば一時は収まるだろうけどね」
「一時なの?最近なんか不審よねえ。役人は何してんのかしら。平和すぎて頭に花が咲いちゃってるのかしら」
「あはは、そうかもねえ、ずっと平和だからねえ」
「お兄さんは何か用で?」
「ああ、伝言板借りるね」
「ええどうぞ」
旅人の為の店なので情報交換や伝言にも使われる。
しかし今のお兄さんは平民服を着ていても旅人には見えなかった。
店から出てきた彼を少女は不思議そうに眺めまわす。
「旅人ではないわよねえ?平民でもなさそう。お兄さん何者?どうもよく分からないわ」
「ご想像にお任せするよ?」
お兄さんはにこにこ笑う。
この感じはまさか皇子様だろうか?いやしかしこの国の皇子様は現在一人しかいず、かの皇子が街に出るなどあり得ない。
すぐ傍に城があるのに姿を見たという者もいない位だ。
「……分からないわ」
「そうかい、じゃあ、またね?」
謎のお兄さんは笑ったまま街に消えて行った。
全く分からないので伝言板を見ると謎の暗号が書かれていてさらに分からなくなった。
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