意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第十話 薬品の効能と大きな弊害

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 コールは部下と共に街の商人を調べ、怪しいものを虱潰しにあたり、調べていた。
 しかしこんな正攻法ではやはり見つからない。

「勘弁して下さいよお、旦那あ。家はちゃんと国の許可取ってまっとうな商売してる店ですよお?変な疑い掛けられちゃあ商売に差し障りますよ。困ります」

 当然だ。国のまっとうな審査を通って許可を取り、国公認の商売をしている者だ。
 毒など売買する店があろうはずがない。

「そう言う輩は許可なんか最初から申請する訳ないでしょう?裏売人ですよ、表を捜しても仕方ありません」

 全くもってその通りだ。もちろんコールは裏売人についても当たらせている。
 裏の売人とか言う後ろ暗い連中には大抵どこかの金持ちの後ろ盾がある者だ。
 そう言う権力者を当たるには街役人の力では歯牙にも掛けられない、到底無理だ。
 皇子にはそう報告してある。しかし動くにはまだ時間がかかりそうだ。

「さてどうしたものか……」

 被害者の救済は続いている。だが際限なく出来るわけではなく、毒をせき止めなければ終わらない。
 毒の出所も調べている。被害者の証言から調べると食べ物、飲み物、香水、花などとかく身体に取り入れる物すべてから毒が出てきた。
 恐ろしい事に毒を流すものは無差別の様だ。
 そして標的と言えば特にない、女、子供、お年寄り、職業もばらばらの街人全て。

 ――――――なぜ?

 もうすでに噂は街中に浸透していて人々は恐怖しているが改めて注意を喚起した。
 しかし口にする物全てが毒とは、どうしようもない。
 人々は何か食べない訳にはいかないし、毒を食らう覚悟でも食べる者はいる。
 安全を保証できる食料もない。それは絶望的だ。
 コールは途方に暮れる。
 これを街の役人にどうしろというのだ?
 今はただ処置を続けながら上の報告を待つしかない。





「あなたが取引を申し出た御方ですか?」

「はいそうです、実は私はさる高貴な御方の侍従で、御方様の命を持ってお声をかけたのです」

「ほほう、どのような御方で?」

「それはお聞きにならない方が賢明かと。けしてあなた様の損にはならない取引です。お断りになるのでしたら仕方がありませんが?」

「……いいえ、内容をお聞きしましょう」

 何もかも神秘的な彼は優美に微笑み、話を続ける。

「実はとある新薬を試していただきたいのです。それはまだ表に出されていない新薬で効果いかんでは高く売買される代物です。主はそれの効果を試してその価値を図りたいとおっしゃっております。そしてそれを表に出すにあたっての売買方法もお考えです」

「わ、私の得とは……?」

「主の目的は新薬の効果です。それを試して報告していただければ売買の売り上げは報酬として貰っていただいて結構です。そして主の満足のいく効果のほどを確認した暁にはこの検証に協力して頂いた方に占有権を譲ると言われております」

「・・・……」

 売人はごくりと唾を呑みこむ。
 うまい話だ。何故こんな話が今流れ込む?怪しい。

「……何故、私に…?」

「掲示板に応じて下さったのが貴方だったというだけの話です。お断りするのでしたら仕方ありませんからまた他を捜します」

「―――私、やります!ぜひやらせていただきたい」

「わかりました、ではその方向で話を進めましょう」







 ルウドは街へ出た。
 ゾフィーのお使いで薬をコールの元へ届けに行くのだ。
 預かった小瓶は危険薬品なので容易な相手には渡せない。しっかりルウドがコールへと渡さねばならい。
 なので患者のいる病院へ向かっているのだが。

「―――――な、ななな何だ……?」

「白いものが?」

「嫌なんか……影っぽい……?」

「……‥」

 普通に歩いているルウドの後ろを見て時折ざわめく人達がいる。
 銀髪のルウドは人々の目を引くが、今目を引いているのはルウドの後ろだ。
 昼間から何だか目の錯覚のようなものが見える人達は何だか不安そうにこちらを見ているがルウドは知らぬ顔をした。

「……というかなぜついてくるんです?城から出られないのではないのですか?」

「ええ?だって暇だし。ルウドには付いていけるのよね。ふふふ、嬉しい」

 魔法使いの塔で彼女を見たゾフィーが微妙な顔をしていた。
 彼女はルウドにしっかり張り付いて物珍しそうに街を見ている。

「どれだけ経っても変わらない街ねー」

「………姫の所に戻らなくてもいいのですか?」

「お姫様は今勉強中よ?邪魔しちゃ悪いわ」

 人々の視線を浴びる中、ルウドは憮然としながらひたすら歩き、病院に辿り着く。
 病院には沢山の人がいた。外の道にも人々が集まっている。

「これは、大変な騒ぎね」

「本当に…‥」

 重度の患者は院内だろうが軽度の患者も治療薬があると知って集まってきたのだろう。
 毒を含まされた患者がこれだけいるのだ。

「父ちゃん苦しい…あ、あのお兄ちゃん天使を付けてるよ?…‥僕もう天国に?」

「ば、馬鹿っ、幻だ、そんなわけないだろう!」

「な、何か白いものが……あの人は一体…?」

「て、天使様?…いや騎士だろ。制服着てる」

「……」

 病院内に入ると病人が沢山床に転がっていた。
 コールを捜して部屋に入ると彼は毒消しの精製を見ていた。

「コール」

「ルウドさん、有難うございます」

「大変な事になっているな。早く犯人を見つけないと」

「今、役人総勢で手を尽くしています。しかしこれだけ大ごとになれば簡単にも行かない」

「商人が売る物を売って街を離れた可能性もある」

「街へ出入りする商人の記録は残っていますがそれ以外はどうにもならない」

「上の情報を待つしかないのか……」

 ルウドはコールに薬を渡して病院を出た。
 外にも沢山の患者はいるがルウドに出来る事は余りない。
 通りの端に座る人々は何故かルウドを見て驚き、時には拝みだす者までいる。

「あああああ、天使を纏った銀髪の騎士さまあああ、どうかお助けをおお!」

「天使様あ、僕死ぬんですかあああ?」

「嫌だあああ、何でこんな目にいい?」

「……落ち着いて下さい、助かりますから」

 ルウドは人々を励ます。幽霊の彼女は姿がしっかり見えるらしい子供の頭をなでて元気づけている。

「天使様、天使様はなぜ透けているの?」

「ふふふっ、それはね、実態のない幽霊だからよ」

「幽霊?死んじゃったってことですか?」

「うん、はるか大昔にねえ」

「天使様、昔の人なんだ、名前はあるのですか?」

「あるわよ、ロヴェリナっていうの」

「へえ、いい名前だね」

「ふふふっ、ありがと」

「………‥」

 幽霊改めロヴェリナが嬉しそうに子供と話している。
 ルウドは困惑する。

 最近その名を聞いた。確か魔女の名前でティア姫が騒いでいた。
 城内をうろつく幽霊、何なのだろうかこの人は?
 意志も目的もまるで分らない。



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