意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第十話 薬品の効能と大きな弊害

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「ふ、あはははははは!ははははは!止まっ、らなっ…はははははふふひひ!」

「……」

 病院を出て少し歩いたところでルウドはひたすら笑っている男に出会った。

「あははははは、た、助け…ははは」

 助けを求められた。

「あははは、腹が居たっ…止まらな‥…死ぬっ…!ひひひひ」

「…………」

 これと似たような症状を最近見た気がする。なぜ笑っているんだ?と聞きたかったがとりあえず病院へ連れていくことにした。

「ふあはははははっ、君変だよ、あははは、なんか透けてるよははは!」

「………」

 彼を医者の所へ連れて行くと医者に微妙な顔をされた。

「何か悪いものでも食べたのかね?道端のきのことか」

「あははは、とんでも、ない、栄養剤、です。ふふふ、普通に売ってますよ!あはははは」

 医者に薬を貰って飲むと暫くして彼の笑いは治まった。

「ふう、喉痛い、死ぬかと思った」

 ルウドは渋い顔で彼を見る。

「普通に売っているとはどういう事だ?」

「え、ですから普通に荷車で。他にも衣装とか道具とかいろいろ売ってる旅の商人でたまたま朝会ったんですけど良い栄養剤があるからって。安かったし」

「怪しいと思わなかったのか?」

「気分が明るくなって元気になるから試してみてって言われて。確かに気分も良くなりましたよ?」

「………だからって」

「それに買って飲んで元気になって去っていく人たちを見たから」

「つまり他にも買った人がいるってことか」

 ルウドは直ちに男に案内させ、商人のいた所へ向かう。
 当然商人は居なかった。





 ルウドが商人を捜し回っているその頃、病院前には毒を含んだ患者以外におかしな人達が集まりつつあった。

「うっははははは!ははははは、止めて!止めてくれっ!ははははは!」

「ああああああ!胸がっ、胸がやける様だああああ!」

「いやああああ!はあああっ、まだっ、転がり足らないっ!」

 他にも泣いていたり、喚いていたり、何故か激しく踊っていたりするもの達が居る。

「……とりあえず鎮静剤を」

 医者の薬を貰うと暫くして彼らは落ち着いた。
 コールが事情を聞くと皆一様に『商人から栄養剤を買った』と言った。

「体調が悪かったんだよ。だから医者へ行こうとしてその途中で栄養剤を売ってる商人がいてさ。気分が良くなるからってお試しで少し飲んだんだよ。そしたらすぐ気分が良くなってさ。だから商人の勧められるままに十日分買っちまったよ。だって医者へ行くより安くついたからさ。それでもう一本飲んだらああなった。一日一本だって言われてたからきっと分量が多すぎたんだろうな。実際笑いが止まらなくなったけど気分は良くなったからさ」

「……‥」

 あやしげな薬を飲んで可笑しな目にあった彼らは誰ひとりその商人を詐欺師だとは言わなかった。

「いやさだって、手が痺れたり吐き気がしたり身体がうまく動かなかったり、そういう最悪の状態から解放されたんだぜ?少しの副作用くらい我慢するだろ普通?」

 栄養剤を飲んだ彼らは皆頷いた。

「医者の薬よりずっと安いし、またあんな目にあってもストックがあるから安心だな」

 副作用はどうするんだ?とコールは言いたかったが言わなかった。
 彼らは商人の薬に救われたのだ。貧乏な彼らにとっては国管轄の高い薬より怪しげでも効果のある商人の安い薬の方が縋りやすい。

「……栄養剤…」

「商人の薬だって…?」

 道端に寝転がって医者を待つ患者達がざわざわと騒ぎだす。

「…もし、もしそこの御方、その商人とはどこに?」

「その栄養剤とやら、ぜひ私にも分けて下さい!」

「あああ、おれにも!お願いします!」

「わたしにも、ぜひっ!」

「商人、栄養剤を売る商人を捜せ!」

 周囲の街人が医者を無視して騒ぎだし、バタバタと動きだす。
 そんな中コールは一人、渋い顔で考え込む。

 ―――栄養剤………、そして副作用……。

 その言葉を耳にするとどうしてもとある人物の顔が浮かんでしまうが、そんな訳があるはずがないはずだ。いや、関わりがあろうはずはない。
 しばらく悩んでいると、同じように思い悩む風情のルウド隊長が戻ってきた。
 彼も胡散臭い商人を捜していたようだ。






「新薬の効果のほどはいかがですか?」

「ええそれはもう、飲んだ人々はあっという間に具合が良くなり薬を大量に買い占めていく有様で。今の街の状況もあり大変な売れ行きで。たった半日でもう商品が切れかけているのに薬が欲しいと私を捜し回っている者達が大勢いるようで。いやはや参りました。これはもう早急に薬の増産を願いたいところです。いっそ店を構えて本格的な売買を始めた方がいいかもしれません」

「ほほう、それは素晴らしい。ですが残念ながら問題の新薬の増産はままなりません。そもそも増産予定で表に出したわけではありませんので」

「そうでしたね、分かっておりますとも」

 効果のほどを知りたいと出された試験薬。だがただの試験薬として売り出すには余りに惜しい商品だ。この薬でどれだけの儲けを出す事が出来るか。

「私どもには元手の売上金も御座いますし製造方法さえ教えていただければ幾らでも私が増産致します。街に毒が出回り、誰もが毒消しを必要とするこの時に売るのが最上の売り時と申しますか、誰もが必要とするこの時でございます。
 ―――――ぜひとも売らせていただきたいのです」

「……それはもっともだねえ。よし、主に話してみよう。少しの間待っていてくれ」

「はい、ぜひともよろしくお願いいたします」

 商人は期待に胸ときめかせ、主君の使いである彼の背を見送る。






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