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第十一話 姉の条件
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しおりを挟む『あのねえ、パーティである殿方のエスコートをして欲しいのよ。私の婚約者エルフィーの知人なのだけど家の姉妹の大ファンでねえ、どうしても一度は会いたいのですって。何度もしつこく頼まれて彼も困っているみたい。お願い、彼の顔を立てると思って一度だけ会ってあげてくれない?』
嫌だと何度も言った。何回も要請を蹴って逃げた。
しかし今回ばかりは逃げられない。
姉と交わした約束は絶対。しかも姉の婚約者の頼みとあらば一度承諾して逃げる事は姉の婚約者の顔も潰す事になる。そんな事は絶対できない。
「でも嫌なモノは嫌なのよ!エルフィードさんもそこのとこ察して諦めさせてくれればいいのに!何でよ!いやああああああっ!」
「そんな……エルフィード皇子も知人との関係とか有るでしょうし、そこはティア様が我慢すべきでしょう。諦めなさい」
「私が我慢して何か得があるの?何かいい事あるの?ルウド、何かご褒美くれるの?」
「……ご褒美って…‥子供ですか……?」
「失礼ね、子供扱いしないでよ!それより私をちゃんと守ってよ。何かあったらルウドが責任とるのよ?」
「……そんな無茶な。守りますけどね。仕事ですから」
外で嫌といえないティアは自室で嫌だを繰り返す。
「……そんなに嫌ですか?他国の客人でしょうに」
「大ファンとか言うあの手の輩は大抵ハリス張りににやけた輩が多いのよ。ぞっとするわ!踏み潰してやりたくなるけどそれも出来ないでしょう?余計いらいらするのよ」
「……‥」
外で誰よりも人気者のハリスもティア姫にかかればこんな評価だ。
ルウドはハリスが不憫になった。騎士隊長として休みなく頑張っているのに。
「…ひ、姫様、初対面の方なのですからどういう方かは分からないでしょう。そもそもエルフィード様の知人なのですからそんなおかしな方であるはずがありません」
「……そ、そうよね。そう願わずにはいられないわ」
「……」
「こういうのはどうも、苦手だな。社交辞令ならば何とでもなるのだが情報収集というのは」
「まあお兄様、そんな弱気でどうされるの。パーティにはお兄様のお相手となる方を捜す意図も含まれているのよ。その為にレナン伯がパーティをセッティングして下さったのだから」
「まあ頑張るよ。一応警備隊にも礼装させてパーティに参加するようになっているし、情報収集は彼らの方が得意だからな」
「パーティにはティアも参加するけど今回お客様の相手をする事になっているから誰の邪魔にもならないわ。警護と言えばルウドが目を離さないでしょうし」
「……それはそれでとても不安があるのだが、まあアリシアもいるし、任せるよ」
「ええ、任せて」
アリシアが何かを思いだしたかのように笑う。
「何だい?」
「ふふふっ、あのティアの嫌がりっぷりといったら。大変よルウドは。でももっと大変なのはこれからよね?面白くなりそう」
「遊んでいるのかい妹で。本人が聞いたら怒りだすよ?」
「いいえ、遊んでいるのはむしろルウドで。朴念仁の顔色が変わるのがいつもティアがらみだからティアをいじると面白いのよね」
「……ほどほどにしておくんだよ」
「ほほほ、そうね。ああ、あとミザリーも出席するって言っていたわよ。何か一人だけ仲間外れなんてひどいとか怒っていたわ」
「遊びではないのだが。まあ好きにしたらいいよ。どうせ御馳走目当てだろう」
「………そうね……」
「それでご兄姉妹が揃って出かける事になったのですね。大所帯で」
「そう、レナン伯が私達の為に夜会を開いて下さるのよ。家は兄を筆頭に皆年頃なのに未だ結婚の兆しも見られないから。どうやら痺れを切らし始めたみたいね。
特にうちの兄の為に王女と言わず年頃の貴族令嬢とか国中からかき集めたのではないかしら」
「そ、そんな方なのですか…?レナン伯という方は」
「そうよ、お爺様の時代から懇意にしている方なのだけどその奥方様がすごいお節介でね。まあお節介なのはその方だけではないけど」
たとえ結婚は当人たちで決めるという方針であっても周囲の者達はほっておけない。
両親は口を挟みはしないが事は王家の存続に関わる話。親族、大臣、貴族達、皆が皇子と姫達の結婚に関心を持ち、口を挟む。
仕方がないと言えば仕方がない。
「ま、今回は兄に集中するでしょうから別にいいけど」
「姫様は姫様の役目を果たしに行ってらっしゃいませ」
「うん、行ってくるわゾフィー、ついでにいい情報を入手出来たらいいのだけど。パーティーのエスコートなんて嫌な仕事他に目的がなきゃやってられないものね」
「……」
ティア姫はどうやらただで転ぶ気はないらしい。
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