意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第十一話 姉の条件

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 そして某日、王家の兄姉妹達は隣町のレナン伯の屋敷にやってきた。
 国の皇子様やお姫様が来るという事で街の方でもお祭りのような騒ぎになっていて、屋敷へ向かう馬車の外からでもその様子が伺いしれた。
 もちろん伯爵の敷地に平民が入れるわけがない。
 王家の者達が来るという事で、敷地の警備はふだんの数倍、厳重な監視体制が出来ていた。

 ただ隣町に出かけるだけだというのに派手な旅だ。
 王族が乗るのだから仕方がないのだが姫一人につき馬車一台。姫と侍女、護衛を乗せてその馬車の周りに馬に乗った護衛が張り付く。それが四台あるのだから目立つことこの上ない。
 その派手な一行は早朝城を出て昼前にはレナン伯の屋敷に着いた。
 四兄姉妹は一部屋づつ特上の部屋を宛がわれ、レナン伯への挨拶と昼食の席へ着いた。

「まあ皆様お揃いで、久しぶりね、お会いできて嬉しいわ」

 レナン伯の奥方グレイスが四兄姉妹を迎える。

「皆で押し掛けてしまって申し訳ない。大所帯で大変な騒ぎになってしまいました」

「まあ、パラレウス皇子。いいのよそんな事は。街の人達も含め、皆喜んで歓迎しているのだから」

「そうですとも。一日と言わずずっとお好きなだけ滞在していて下さっていいのですよ。自分の家だと思ってごゆっくりしていらして下さい。夜会にも楽しい趣向を幾つか用意してあるのです。存分に楽しんでいらして下さいね」

 レナン伯が嬉しそうに言う。

「ふふふ、お姫様方にも、ここでの出会いをきっかけに幸せへの道へとたどり着くことが出来るならば私どもも喜ばしい限りですので」

「……そうですね、ご縁があれば……」

 パラレウスは夫婦に期待の眼差しを向けられ頬を引き攣らせる。
 王族好きの世話焼き老夫婦の目下の夢はこれなのだ。
 毎年園遊会などを開き、王族、おもに皇子などを誘う。

「今年は皆様で来て下さってとてもうれしいですわ。ティア様も、良いお相手が見つかるといいですね」

「……私は姉の付き添いです。アリシアお姉さまがどうしてもって言うから」

「ふふふっ、私の婚約者の友人と引き合わせる約束なのです」

「あらまあ、良い御縁になるといいですわね」

「ええもう、ほんとに。この子ったら好き嫌いが激しくて難しいから」

「でもティア様ならすぐに見つかりますよ。可愛らしい姫様に好かれてお断り出来るような殿方はそうそう居りませんから」

「……そうですわね…」

 アリシア姫は困ったように部屋の隅にいる護衛の一人に目を向ける。

「そう言えばミザリー様も今回は…・?」

「……え……?」

 グレイス婦人が目を向けるとミザリーは動きを止める。

「……ええと、夜会、楽しみですわ。どんな余興があるのかしら?」

「……少しは殿方にも目を向けてくださいね?」

 パーティに参加してもひたすら食べてばかりの姫には婦人も最近諦めが入っている。
 お姫様なのに何故食事にしか興味がないのだ?本当にそうなのか?
 それはミザリー当人にしか分からない。






「ああ疲れた。パーティまで部屋で休むわ。外に出たらどうせ誰かに声かけられるし面倒だから」

 ティアは部屋のソファーに寛いで部屋の隅にいる護衛に言う。

「姫様、情報収集はどうされます?」

「そんなの誰かがやってるでしょ。兄がわざわざ護衛にまで礼装させてパーティに参加させるのだから。お兄様もやっているだろうし」

「姫様、私はパーティーのお手伝いに行って参りますね?時間が来たらお衣装を用意して参りますので」

「分かったわ」

 侍女のマリーは部屋を出て行った。よその家に来てまで働きものである。

「やる事ないわね、本でも読んでようかしら。貴方も下がっていいわよ、暇なら外で情報収集してて」

「はい…」

 護衛が部屋を出てティアは一人になって息を吐く。
 しばらくぼんやりしていると外からノック音がしてドアが開く。

「ティア、お邪魔するわよ?」

「アリシアお姉さま…‥」

 アリシアはティアの向かいのソファー椅子に座る。

「気が乗らなさそうね。エルフィーはまだ来ていないようだから、到着したら知人という人と挨拶に来るそうよ」

「……お姉さま、知人の相手ってパーティのお相手だけですよね?まさかずっと何て事は……」

「さあ、どうだったかしら?」

「……‥お姉さま…」

「まあ大丈夫よ?ちゃんとルウドが護衛で張り付く予定でしょう?心配ないわ」

「護衛としては問題ないでしょうけど……」

「ティアの仕事の邪魔はしないでしょうね。どれだけティアが困ってても」

「あまり気分のいいものじゃないわ」

「ならルウドを護衛からはずしたら?」

「そんな不安な事出来ないわ」

「なら仕方ないわね。彼の前で他の殿方の相手なんて嫌でしょうけど。でもルウドの気持ちも推し量れるかもよ?」

「推し量りたくもないわ。ルウドの気持ちなんか知ってるもの」

 ルウドはティアの気持ちには答えない。ティアに相手が出来れば喜んで応援するに違いない。

「本当にそうかしら?」

 アリシアは席を立ち、ドアに向かう。

「お姉さま……?」

「まあそれはあなた自身が確かめることね」

「…‥?」

「じゃ、くれぐれも逃げないでね?」

「……‥」

 アリシアは出て行った。わざわざ念を押しに来たらしい。
 ティアは何だか余計気疲れした。




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