意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第十二話 噓と真実の饗宴

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「……ちょっと、どうしたらいいのよあれ?」

「どうしましょうかね?」

 ティアとルウドは困ったようにミザリー姫の視線の先を見る。

「さっきの黒いお客様ね。まさかお姉さまの標的とは」

「いや何か事情があるはずです」

「そうはいってもお客さまに迷惑を掛けては大変よ?王家の評判にも差しさわりがあるし」

「物陰から見ているだけでしょう?そっとしておいてあげましょうよ」

「それよ、こそこそしているから不審なんじゃない。大体こそこそする理由はないわ。友好を深めたいならそうすればいいのよ」

 ティア姫は迅速にミザリー姫の傍へ行き、徐に突き飛ばした。
 ミザリーは驚いて、当然怒りだした。

「―――何するのよティア!酷いじゃない!」

「こんな所で何こそこそしてるのよ!お姫様なんだから堂々としてなさいよ!」

「ほっておいてよ!何でそう貴女は私のささやかな楽しみを奪い取るのよ?邪魔ばかりして!」

「意味が分からないわ。お姉さまの趣味をどうこう言いやしないけど犯罪は良くないわ。人としての節度は守らなきゃ」

「あなたにそんな説教されたくないわよ!犯罪ってなによ失礼ね!」

「黒好きもほどほどにしてよお姉さま。先日のは獣だけど今回は間違いなく人よ?しかも貴族。何かあったら問題になるわ」

「何があるって言うのよ!彼は手の届きようがない人よ?」

「――――……あの、どうかされました?」

「――――!」

 これだけ騒げば当然だが遠くにいた彼が傍に寄ってきた。
 ミザリーは目をむき、ティアはにが笑う。

「何でもありませんわ、お騒がせして御免なさい。貴方は?」

「アルバ=クロードと申します。大丈夫ですか、お嬢さん?」

 アルバはミザリーに手を差し伸べる。

「―――だ、ダダダダ大丈夫です…・」

「私は三番目の王女ティア、彼女は二番目のミザリー。クロードさん、宜しければ彼女のお相手して下さる?私は恋人との所用があるから」

「え、ハイ勿論です」

「……ちょっ…ティア、何が所用よ子供のくせに…‥!」

「じゃあね、お姉さま。クロードさんと仲良くねー」

「……!」

 ミザリー姫は真っ赤になって立ち上がる。
 ティアとルウドはすぐにその場を立ち去った。







「全く世話が焼けるわね、何が手が届かないよ。すぐ目の前にいて届かないわけないでしょうに」

「まあそうですね」

 部屋に戻ってソファーに座るティアにルウドはお茶を入れる。

「まああのお姉さまの事だしどこまで本気なんだか分からないけど。あれで正常に戻るといいわね」

「まあそうですね」

 お茶を入れたルウドは部屋の隅で何故か荷物の整理などを始める。

「……ルウド、お茶飲まないの?こっちに座ったら?」

「いいえ、もうすぐ帰る時間でしょう。荷物をまとめなければ」

「そんなの侍女達がするわよ。私との時間がそんなに嫌なわけ?」

「……いえ別に……」

「ここにいる間は恋人でしょう?ルウド、早く」

「……」

 ルウドは仕方なくソファーに座る。

「……姫、形ばかりの恋人なのですから人目のない所で恋人である必要はないでしょう?私はただの護衛ですから。……勘弁して下さい」

「ダメよ、誰が見ているか分からないわ。嘘だってばれたら大変よ?」

 ルウドの首に腕をまわしてティアが愛しそうに彼を見つめる。
 ルウドの青い目が困ったようにティアを見つめる。

「アリシアお姉さまが羨ましい。恋人と思う存分愛し合えて。どうしたらルウドは私のものになってくれるのかしら?」

「そこまで思っていただけて光栄ですが……」

「そんな言葉聞きたくない。愛してるって言って」

「…嘘なら幾らでも言えますが」

「昨日言ったのは嘘な訳?」

「貴方の思っている意味とは違いますから」

「意味の違う言葉なんて知らない」

「女性として愛することは出来ないと」

「私は貴方を愛しているわ」

「……ティア様」

「ティアって呼んで」

「……姫様……」

「ルウド…‥」

 ティアは悲しそうにルウドを見つめ、顔をすり寄せて抱きつく。

「姫様…‥?」

「貴方に愛して貰えないなら姫様なんかで居たくない。すぐ傍に居ても、簡単に手が届いても、ルウドの心には届かない。どうすれば私の気持ちが届くのかしら?どうしたらいいの?ルウド」

「……ティア様、勘弁して下さい…」

「いや」

 ティアが体を密着させて全身で擦り寄ってくる。ルウドは相当焦った。

「……姫様……もうやめてください……」

「いや。言葉では分かってもらえないもの」

 ティアが切ない目をしてルウドの唇に口づける。

「ねえルウド、私とのキス、嫌い?気持ち悪い?」

「そんな事はないですが…、もうやめて下さい…」

「どうして?」

「幾らなんでもこんなに誘惑されては堪えられません」

「堪えなくていいわよ、ねえルウド、本当の恋人になってよ」

「―――――――っ…!」

 ティアに口づけられてぐらりと理性が揺らぐ。
 ルウドはティアを抱きしめて、ソファーに横たえる。

「ルウド……」

「―――…やめなさい。そんな風に男を誘うのは。もっと自分を大事になさい」

「ルウド……!」

 ルウドはティアから離れて部屋を出て行った。

「ルウド!何でよ!私の何がいけないの!ばかああああああっ!」


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