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第十三話 ルウドと世界一の宝の鍵
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しおりを挟む「お父様、ルウドが宝探ししてるわよ?どうするの?」
「…ほっておけばいい。どうせ何も出てこない。もし出てきたらぜひとも分けてくれ」
何故か苦渋の表情を持って王がのたまう。
「全く下らんうわさに振り回されて。有りもしない腹を探られるのは大いに迷惑だ」
「でもどこから来たのその噂?何かお父様が原因みたいだけど」
「知らん、なぜ私がルウドを隠し立てせねばならんのだ?お前に付いている悪い虫だ、むしろ追い払いたい位だ」
「悪い虫なんかじゃないわよルウドは。ルウドが私との結婚を了承してくれたらそのお許しを下さるのでしょうお父様?」
「おおおおお前!何時の間にそんな話になっているのだ?まさかもうそんな関係か!許さんぞ!絶対許さんっ!」
「陛下、落ち着いて下さい。ティアも、めったなことを言うのではないですよ」
立ち上がって憤る王を王妃が止める。
「ええ?ルウドのどこが駄目なのよ?どうして許されない訳?」
「あいつはただの騎士だろう?身分もないただの庭師だぞ!」
「身分がなくたってルウドならいいわよ。むしろルウドでなきゃいや」
「お前は王国の姫だぞ?そんな訳にはいかん!」
「……ルウドがほんとは何者なのか、それを知った上での反対かしら?」
「……ルウドの出自など関係あるか!あいつは元々庭師の息子だ」
「ルウドのご両親て駆け落ちだそうね?」
「お、おおおお前、それは私を脅しているのか?」
「駆け落ちって素敵よね?そんなのもいいかも」
「いいわけあるかああああああっ!絶対いか―――――ん!」
「あなた、落ち着いて下さい。ティア、すべて仮定の話でお父様を怒らせないの」
「仮定って……、全然信じてないのねお母様」
「ルウドが簡単に落ちるものですか。ティアの結婚はまだまだ先ね」
「……まあいいわ、私の話は。じゃあもっと身近な現実の話をするけどお兄様の恋のお相手だけど、もう少し的を絞って貰えないと見つけづらいわ。レナン伯のパーティは何日も行われていたし人の入れ替えも激しかったから難しいのよ」
ティアの言葉に驚いた家族一同がパラレウスを見た。
「…‥‥お兄様が恋い?」
「なんだと?それは大変ではないか!」
「まあああ!やっと春が?それはおめでたいこと!ティア、どんな娘さんなの?ああ早くお目にかかりたいわ!」
「赤毛の小柄で目のつり上がった娘さんという事だけど、あの会場にその位の娘なら星の数ほどいたと思うの。今頃グレイス婦人も困っていてよ?もう少し分かりやすい特徴はないかしら?」
「………ティア、その、分からないならそれでいいんだよ?本当に?」
家族の視線を気にしながらパラレウスはにが笑う。
家族、特に王妃が立ち上がり興奮する。
「何を言っているのよパラレウス!そんな弱気でどうするの!いけないわ、そんな事ではお嫁さんは来ないわよ!気になる娘さんを見つけたら何としても捕まえなければ!」
「そんな、母上…。相手にも都合というものが」
「相手の都合なんてまず当人を捕まえてから考えてよ。他に特徴はないの?」
「そうだねえ。うーん、何かティアとミザリーを足した感じの娘さんだったかな…」
「パラレウス、それは大丈夫なのか……?」
「まあお父様、それはどういう意味ですのっ、失礼だわ!」
「…いや、すまないミザリー…」
「まああ、面白そうな娘さんね?見つかったらぜひ私にも会わせてねティア。お城に招待して皆に披露するのもいいわね?ああ楽しみ!」
王も王妃も何も言わなかったが皇子の妻を誰より待ち望んでいたのは彼らだ。
まだ何も始まっていないにも拘らず思わぬ吉報に有頂天になってしまった。
皇子は困ったように浮かれ騒ぐ家族を眺める。
そんな皇子をティアは困ったように見つめる。
―――分からない。それではほとんどまるで分らない。性格を言われてもどうしようもない。
仮にパーティの席で皇子が見染めた娘がいるとレナン邸の出席者に振れ回り、その赤毛の娘自らの出頭を願ってみよう。すると城内に何百何千の赤毛の娘が現れるか分からない。
今更言っても始まらないが兄はホントに鈍くさい。
出会った時にせめて名前だけでも聞いておいてくれればこんな面倒はなかった。
とても口に出せる事でもないが、そんな状態で再び出会えるとすればまごう事なき奇跡に違いない。
ティアはこっそりと重い息を吐いた。
リーン王は家族にも言っていない秘密がある。
それは友人との約束であるし、そもそも半永久的に必要のない事だからである。
昔は何かとしつこく詮索してきたかの友人の息子もこの数年は諦めたように聞かなくなった。
なのにここ最近それを掘り起こそうとするけしからん者達が居る。
それがかの息子ならば追い払う位で済むのだが、面倒な事に別方面からの介入だった。
しかし王に後ろ暗いところなどない。はっきり丁寧に知らない旨を伝えた。
だが未だに何度もその詮議が入る。何度も断っているのにとてもしつこく聞いてくるのだ。
そしてここ最近の一連の事件。
誰がどう嗅ぎ回ろうと出てくるものは何も無いのだが、城内、外に得体の知れぬ不安が広がっている。
今の状態が良くないのは分かっている。
しかし王は何を言う事もないし、どうする事も出来ない。
時が解決してくれるのを素知らぬ顔で見ている。
――――――しかし……
【マルス国の騎士ルウド=ランジールは世界の王が喉から手が出るほど欲しがる世界一の宝の鍵を持っている】
どこかの貴族が流し始めたとんでもない噂。
実際ただの田舎騎士ルウドがそんな大層な宝を持っている訳がないと本気にする輩は少なかったが、周りを嗅ぎ回る輩が増えたのも事実だ。
それで何が分かるわけでもないが、おかしな憶測を立てられておかしな行動に走られると非常に困る。
「………」
それでも王は何も言う気は全くない。
ただ黙って状況を見守る他にすることはない。
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