意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第十三話 ルウドと世界一の宝の鍵

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 二番隊が隊長を伴い、レナン邸へ行っているほんの数日の間にも城では些細な変化はあった。
 発端は街での噂だ。
 街へ出ていたとある使用人がそれを聞いて憤慨して泣いて帰ってきた。

「悔しいいいいっ、あんなひどい言われ方!何も知らないくせに勝手な事をっ!許せないっ!あんな噂を聞いたらルウドさん、すごく傷付くわよ。優しい人だもの、きっと気にするわ!」

 彼女は隠れルウドファンの一人だった。

「ただの夢も希望もない腐れ騎士だの、王に囲われる愛人だの、姫は全員お手付きだの、酷い事を!人権侵害だわ!許せないわ!」

 どこで聞いてきたのかは知らないが確かにそれは酷い。

「ただの憶測でそこまで悪く言うなんて!最低!彼が一体何をしたというの?」

 使用人の彼女は城内の仲間達に訴える。

「こんな臆面もない事を言われるのはそもそもルウドさんには彼を守れる女性がいないからだわ!絶対そうだわ!奥さんも恋人もいないからそうやって馬鹿にされてしまうのよ!
 彼を守らなきゃ!もう遠くから眺めて満足しているだけでは駄目よ!身体を張って彼を守らなきゃ!傷ついた彼を癒せる人が傍に付いていなきゃ駄目なのよ!」

 彼女の訴えに同意し立ち上がる女性達が幾人も現れた。

「まず彼について回る悪い噂を排除しないと。あの根も葉もない噂はともかく以前から噂の悪い女の件はどうにかしないといけないわ。悪い女を追い払ってルウドさんにはちゃんと彼を守れる女がいるという事を主張しなくては!」

 そうして城内でルウドを守る女性の会が発足した。総勢二十人、しかしまだ入会する女性がいるという。
 そしてハリスはそんな彼女らに強制的に協力を要請された。

「ハリスさん、まず情報が必要だわ!ルウドさんについていろいろ教えて下さい!」

「ええ?でもおそらく君達の知っている以上の情報はないと思うよ?」

「そんな事はないわ。最近ルウドさんがプレゼントを送った女性を知っているでしょう?」

「ああ、それは知っているね」

「銀髪の騎士が美人の幽霊を背中に貼りつけて街を歩いていたという噂があるのだけど?」

「それは知らなかったな、私も見てないし」

「もっと昔の噂ではルウドさんは子供にしか興味がないというのがあったわ」

「そんな事ないよ?大人の女性にもちゃんと反応していたよ。だから安心していいんだよ君たち」

 数十人の女性達が顔をほころばせる。
 城内一の色男と評判のハリスも彼女らを見ると最近自信がなくなってくる。
 ルウドが好きという女性は隠れファンという文字通り、控え目にこっそり思う女性が多いのだ。その数を調べればきっとルウドの方が人気が高いに違いない。

「しかし君たち、ルウドは一人しかいないのだから彼女となる女性も一人しか選べないよ?その座を取り合って喧嘩はやめるんだよ?」

「おほほほ、嫌だハリスさん、結局選ぶのはルウドさんですもの。そこはそれ、正々堂々と戦いますわ」

「そ、そうかい?」

 ルウドファンは意外にも熱い。
 そして彼女等はルウドの心を射止めるべく、暗躍活動を開始した。





「ルウドが宝の鍵を持っているって?どうでもいい噂だな?何故こんな噂が貴族間で流れているのだ?そもそもなぜルウドなのだ?訳が分からん」

「さあ、何なのでしょうね?」

 皇子は王の執務室でにが笑う。
 用件は別にルウドの噂の件ではない。先日起こった街の毒事件の話である。
 コールの報告書を読んだ皇子はそれをそのまま王の元へ出し、王や大臣達の議論の場に送り、その結果を待った。
 皇子が留守の間に結論は出たはずだ。

「それで、街の件はどうなりましたか?レナン伯のパーティではあの噂位しか捕まらなかったのですが」

「結論から言えば旅の商人がどこかの貴族に金で買われて毒をこの街で売りさばいた。商人はそれが誰かも知らないという。商人は誰かも分からない者に使い捨てにされた。
 目的がまるで分らない。何かを得ようとしたのか、何かを試そうとしたのか、ただたんに街に害を与えたかったのか。
 推測だけなら尽きる事はないが実際出てきた物証は商人と毒だけだ。あとは何も出ない、噂の根も出ないなら手のつくしようがない。この件は様子見だな。
 毒はもうほとんど回収され、街の患者もほとんど残っていないという。
 毒の成分から毒消しが出来たからもうゾフィーの薬も必要ない。一応の収束という所か」

「情報が必要ですね」

「大臣達にも言っておいた。連中の事だ、どんな手を尽くしても情報を掴んでくるだろう。まあ様子を見る事だ」

「それは心強いですね…」

 王に恩を売りたい彼らは何としても必要なモノを運んでくるだろう。
 一応愛国心もあるかも知れないが。

「だからお前はこの件を大臣達に任せて、自分の妻を捜す事に専念するといい。どうしても駄目な時は大臣達にも協力を募るぞ?彼らは大喜びで捜してくれると思うから」

「…いえ、今の所大丈夫ですから。ティアとゾフィーとレナン伯が動いているようですし」

「そうか?遠慮するでないぞ?」

「…‥ハイ…」

 王に気を使われてしまった。
 部屋を出た皇子は廊下でこっそりため息を吐いた。





 ルウドを守るべく発足された女性の会、通称【ルウド守り隊】
 活動に際してハリス=ローアンの協力を得て、彼女たちの戦いが始まる。

「私達はライバル、そして同じ意思を持つ仲間。だから一つの権利は平等かつ公平に正々堂々と戦いを持って手に入れるべきよ。だからここに得た権利を商品として差し出すわ。
 ハリスさんに頂いたこの『ルウド隊長との一日デート券』。
 欲しい方はこの戦いに参加し、自らの力で勝ち取りなさい。それがこの会全員に与えられた平等な権利というものよ?」

 とある使用人部屋の一室で二十数名の女性が歓喜に沸く。

「ルウドさんとのデート権なんて、良く手に入ったわね?すごいわ」

「ハリスさんが頼んだら結構あっさり承諾してくれたそうよ」

「わあどうしましょう?遠くからしか見た事がないルウド隊長といきなりデートなんて!」

「権利は一つ、勝たなきゃ無理よ?」

「誰かはいけるのよね?ドキドキするわ、うっかり勝っちゃったらどうしましょう」

「素晴らしい権利ね、イイ会だわあ」

 二十代のただの使用人の彼女達に夢が出来た。
 デート。上手く行けばそのままお付き合い、さらに結婚?

「うふふふっ、ルウドさんに似た可愛い銀髪の子供もいいかも」

 気が早すぎる。ともあれ彼女達は猛烈にやる気だった。



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