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第十三話 ルウドと世界一の宝の鍵
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しおりを挟むルウドがのんびりいそいそと宝探しをしている頃、ティアは退っ避きならない最悪の情報に怒りを募らせていた。
もちろん怒りの矛先はハリスである。
「許せないわ、どう言うつもりよ?何を考えているのよ」
「……ひ、姫?な、何のことでしょう?」
ハリスは内心冷や汗をかきながら笑顔で答える。
ハリスに詰め寄ったティアは問い詰める。
「とぼけんじゃないわよ!私のルウドに何馬鹿な事させてるのよ?よその女に下らない権利なんか与えていらない期待持たせて何のつもりよ?」
「……姫様、ル、ルウドだって他の女性に目を向ける権利位…‥もういい年ですし……」
「……‥へえ……?」
ティア姫の目が鋭く光る。姫の白い手がハリスの首を捕える。
「ひっ、ひひひひ姫…?」
姫の手に渾身の力が入り、ハリスの首をぎりぎりと締め付ける。
「そんなに死にたいなら今殺してあげるわ。全く下らない事ばかりしてくれて。後始末が大変なのよ?ああでももういいわ、貴方の後始末だけ済ませればもうこんな面倒はなくなるもの。貴方の事は名誉の戦死とでも言っておくから心配ないわ、さあ遠慮なく死になさい」
ティア姫は本気だ。ハリスは戦慄し、懇願の目を姫に向ける。
「……ぐえ、うっ、こ、殺さないで…ッ…」
「嫌よ、今すぐ息の根止めておかないとあとあと面倒だもの」
「うっ、や、やめて……!」
ハリス=ローアン、余計な御世話で名誉の戦死。
洒落にならない。
ハリスは何とか姫の手を振りほどき、距離を取った。
「勘弁して下さい!それにルウドが承諾したのですから!い、いいじゃないですか別に!ルウドにだって自由恋愛の権利はあるでしょう?あまり束縛すると逆に嫌われたりしますよ?男は束縛を嫌う生き物ですから!」
「…それはあなたでしょう?ルウドは固いんだから」
「ルウドだってそんなに縛られたら嫌ですよきっと!もっと心を広く持ちましょうよ?ちょっと他の女性と仲良くする位、広い心をもって笑って見守る気持ちで」
「………」
「そんな懐の大きな優しい女性が男は好きなのですよ?」
「……‥そうかしら?」
「そ、そうです!そうなのです!ルウドだってその方がいいに決まってます!」
「………まあいいわ」
ティアは怪しい薬品をハリスに吹きかける横行をしぶしぶやめた。
ハリスは肩を撫で下ろす。
「―――――でもハリス、もしルウドがよその女に傾く様な事になったらその時は、あなた、命はないと思いなさい」
ティア姫はハリスが凍りつく様な事を言って、仕方ないという様に意味深な溜息をついた。
第三王女ティア姫付き侍女マリーは最近仕事仲間達が妙に浮かれている事に気づいていた。なんだかほのかに幸せオーラが漂っている。
マリーの仕事は姫の侍女だがティア姫は大概自分の事は自分でしてしまうので日中は余り用がない。朝、姫の着替えを手伝い朝食に送り出した後、部屋の掃除とベットシーツを取り換えて、お茶セットを準備してから他の仕事に向かう。
お客様用部屋の掃除などは人手が幾らあっても足りないのでそちらの手伝いに向かうのだ。
そこで一緒に仕事をする下働きの使用人達とも話すのだが、最近の彼女らの浮かれ具合を見て不審に思っていたので聞いてみた。
「何かいい事でもあったのですか?」
マリーは姫と一緒にレナン邸に行っていたので留守中の事は分からない。
手を動かしながらも何故か顔が笑っている同僚のローラに聞いた。
「え?うふふふふ、何でもないのよ、おほほほ」
「……すごい気になるのですが?事情が分からなければそのにやけ具合はすごく不審ですし」
「まあ顔に出てた?御免なさいつい。でも何でもないのよおほほほほ」
「全くそうは思えませんし。いい事なら独り占めしないで私にも教えて下さいよ」
「そんな、いい事なんてないのよ?ふふふっ、あ、でもいい事があったら教えてあげるわよ?結婚式なんてあったら勿論招待するわよ?」
「えっ?ローラさん結婚するのですか?おめでとうございますっ!」
「やあだ違うわよ。もしもの話よ、始まるのはこれからよ?」
「……そうなのですか……?」
彼女個人の話なら彼女に関してはこの浮かれ具合はなんとなく分かった。しかし浮かれているのは一人二人ではない。
他の使用人達の浮かれようも彼女と同じ個人的理由とは考えにくい。
「…他の人達はどうして浮かれているのでしょう?ローラさん知っています?」
「え?まあ、おほほほほほほほほほ。個人的な幸せな妄想ではないかしら?うふふふふっ」
「………」
分からない。マリーは同僚に不審を感じつつ、自分だけ何も知らずに疎外されているような気がして気が沈んだ。
「やっぱり幸せは自分で取りに行かなければダメかしら?どう思うゾフィー?」
「えっ、私、ですか…?」
塔の中でお茶を飲みながらぼんやり呟いたティア姫の言葉にゾフィーは面食らう。
「その、私にはその方面は。やはりハリスさんかその辺の騎士達に聞かれた方が?」
「ゾフィーって淡白よね。密かに思う人とか居ないの?」
「余り。このようななりの男を好きという女性も中々居ないでしょうし」
「騎士の制服とか着たらそれなりにもてると思うわよ?うちの制服カッコいいからどんな人が着ても二割増素敵に見えるのよね」
「………いえ、私魔法使いですから……」
「魔法使いのも制服があればいいのにね。仕立て屋に頼んで貰おうかしら」
「いえ、これが私の制服ですから!これ以外はいやです!魔法使いですので!」
「……そんなに否定しなくても……分かったわよ」
ティアは部屋の隅に控える護衛に目を向ける。
「ねえ、貴方はどう思う?マディアス」
「えっ、私ですか?ええと…‥そうですね…‥」
二番隊精鋭姫の護衛騎士マディアスは焦った。
ティア姫の側にいると時々こういう質問を投げかけられるので油断ならない。
そもそも普通は護衛対象が護衛にいちいち声をかける様な事はないものなのだがティア姫に限っては日常茶飯によくある事だ。
しかもおかしな受け答えをすると後から甚大な被害が出る事もある。
「ただ待っているだけでは何も得ないのは事実です」
「そうよね、それを考えるとお兄様は楽をしているようにも思えるけど」
「姫様、皇子の場合は事情が違いますよ?名前も身分も分からないのですから。手助けせねば何も始まりません。皇子の努力はまず出会ってからの事です」
ゾフィーがすかさず訂正して、ティアはなるほどと頷く。
「じゃあやっぱり私には努力が足りないのね。物心つく頃からずっと傍にいるのに全然靡いてくれない。でも努力の仕方が分からない。私には一体何が足らないのかしら?ねえ何が足らないと思う?」
答えを求めるようにじっと姫に見られたマディアスは背中に冷たい汗を掻いた。
「……え、と、その、ひ、姫様は十分魅力的かと…。足らないものなんて、……分かりません……」
「それじゃハリスと同じじゃない、詰らないわ」
「……すいません……」
マディアスは肩を落とした。
しかしこれ以上変な努力をされてもきっとルウド隊長は大変困ると思う。
そうは思えどけして口に出来ることではない。
「そうよ、ゾフィー、魅力が十倍上がる薬造ってよ。ルウドがイチコロになるやつ」
「…………それは媚薬と同じでは?」
「媚薬は効かなかったもの。それじゃ私の魅力がないって言うのと同じじゃない?」
「そんな事はないですよ?しっかり効いていたはずです」
「ルウド以外にはね」
「ルウドさんは固い信念と強い理性を持っていますから効いていても態度には出さないのでしょう。いつもそうではないですか」
「そうね…、そんなルウドを落すのは難しいのよね。どうすればいいのかしら?」
「とにかく薬ではどうにもなりませんから」
「やっぱり努力だわ。何としても自分で取りに行かなくちゃ」
「…‥?」
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