意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第十三話 ルウドと世界一の宝の鍵

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 【ルウド守り隊】。会員は日を追って増えている。それというものハリス隊長から貰った『ルウド隊長と一日デート権』、これの存在が明るみに出てからである。
 正直城内にこんなにライバルがいるとは思わなかったが彼は目立つしいい人だし隊長だし、納得と言えばその通りでもある。

「デート権を狙っている女性が後を絶たないわ。もう三十以上よ。早く締めきってふるい落としを始めないとキリがないわ」

「どうやってふるい落とすのよ?」

「それはハリス隊長にもう頼んであるの。ハリスさんならルウド隊長の事色々知っているし。大体私も参加者なのよ?不正をしては平等を掲げた意味がないわ」

「うんそれで?」

「ルウドさんと釣り合う彼の理想の女性がデート権を掴むようになっているのよ」

「具体的には?」

「知性と、体力と、耐久性かしら。それを掲げた試験をするの。それの内容はハリスさんに任せてあるから私も知らないわ」

「そう?楽しみね」

「期日は追って知らせるわ。そう遅くないから待っていて」

 それから二日後、戦いの口火は切られた。

「……なによこれ?」

 ふるい落とし第一弾『ペーパーテスト』。ルウド隊長のあれこれについての質疑である。

「戦いとか言っておきながら何この地味なの?」

「何を文句言っているのよティア、まずは知性、教養、見聞力。それを知る為の手段じゃない。ハリスさんの伝手で作成して貰ったいい質問よ?内容も申し分ないわ。さあ席に座って?カンニングは即失格よ?」

「……しないわよ」

「制限時間は六十分。さあ始めて」

 どこかの手伝いの使用人が合図をし、ルウドファン総勢三十五名の試験が粛々と始まった。








「こんなすごい事になるとは思わなかったな」

 まるで他人事のハリスは試験を受ける女性達をこっそり見て感嘆する。

「ルウドに教えた方がいいかな?」

 しかしその場合ティア姫によって命が脅かされるので止める事にする。
 ドアから離れて廊下を少し進むととある騎士がうろうろしていた。

「どうかしたか?」

「あ、ハリス隊長、ちょうどいい所に。お願いがあるのです」

 彼は二番隊騎士ティア姫の護衛のはずだ。

「ティア様の護衛で、けして目を離してはいけないと言われているのですが」

「まさか見失ったのか?」

「いえ、居場所は分かるのですが護衛出来ない所に居られまして。正体がばれるから傍に来るなと言われて困っているのです」

「………‥どこにいるんだ?」

「あちらの使用人部屋に」

「試験会場か……‥試験受けてるのか……‥」

 ティア姫にしてはまっとうな手段だ。いきなりファンを脅したり抹殺したり、会場ごと爆破したり、そんな事を目論むよりは良い。

「ハリスさんの伝手で試験の監視官という事にして中に入れて貰えないでしょうか?」

「なるほど、分かった。行こう。しかしさっき見てたがティア姫がいたなんて全く気付かなかったな。どこにいたのだろう?」

「変装はしているでしょう。実名でも全く誰にも気付かれない程です。だからこそ使用人の中に潜り込めたのですが」

「………そうか」

 ハリスは手伝いの使用人に彼も監視官に付けてやってくれと頼んで彼を中に入れた。
 試験に集中している女性達は全く顔も上げず気付いた様子もない。
 ハリスはドアの外からもう一度こっそり覗いて姫を捜したが結局分からなかった。





 試験終了後、結果は昼食後に発表される。合格者は上位三名から五名。発表後さらなるふるい落としが行われる。

「……にしても何あの試験。誰よあんな質問発案したの?普通の人じゃとても思いつかないわよ」

 魔法使いの塔で休憩していたティアはハリスがやってきたので文句を言った。

「…‥姫様、出来なかったのですか?」

「書いたわよ、全問。基本的な事は全部間違いないわ。でもなにあの当人も首をひねるような専門的な質問は?ルウドの宝物?本人しか知らないでしょ!将来の夢?考えた事ないわよ!ルウドに最近憑いてるもの?何それ意味分かんないわよ!今現在ルウドが考えている悩み?知らないわよそんなのあるの!」

「………良く全問かけましたね?」

「まあなんとかね、で、誰よあんなの考えたの」

「……アリシア様です」

「…………そう」

 昼食後に発表された結果、ティア姫は上位に残った。というか余りに専門的すぎる過酷な試験問題に半分以上書けたものはほぼ皆無で、ティア以外辛うじて上位に引っ掛かった者達もやっと半分書けた程度だった。

「……‥使用人相手に。何考えているのかしら?」

 そもそも試験問題を発案させる相手を間違えたのだ。ハリスが悪い。
 遠くからこっそり眺めるだけだった隠れルウドファンの使用人達がルウドの考えている事まで分かるわけがない。
 そして残った使用人達、面倒な事にジェンとローラだった。そう言えば彼女達はルウドと面識がある。
 ティアを入れて三名。平均点以上がこの三人以外居なかったので五名には及ばなかった。
 黒髪と赤毛はじろじろとティアを眺める。

「あなた、どこかで見た事あるような?というか使用人にいた?こんな人?」

「あなた方の行動範囲に居なかっただけよ?だから何なの?かろうじて平均点にひかかった程度のルウドファンが。私は満点近く取ったわよ?何か文句があって?」

 内心点数に不満があったティアだが彼女らを刺激するには十分な点数だった。
 金髪を纏め上げ、メイドの帽子と黒縁眼鏡をかけた若いメイドにふふんと上から目線で鼻で笑われて、ジェンとローラは怒りに燃える。

「何がファンよ、馬鹿馬鹿しい。貴女方ちょっと愛が足らなさ過ぎるのではなくて?」

「行動範囲が違うのだから知らない事が多いのは仕方ないわよ!」

 三人はバチバチ火花を散らした。



 


 体力と耐久性の試験はティアには不利だった。
 何しろ使用人の仕事全般、数時間でどれだけできるかの試験である。
 どれだけ量をこなしても完璧に出来ていなければ0点。完璧に出来ていても量がなければ点が付かない。
 しかし召使に化けている以上出来ないとはティアには言えなかった。



 ティア姫が使用人相手に奮闘している頃、ルウドはアリシア姫の警備に着いていた。
 アリシア姫は動かないので警備が楽だ。部屋の隅で立っていればいい。
 そのアリシア姫は先程から入れ替わりで現れる使用人が持ってくる紙きれの内容を見てくすくすと笑っている。
 いったい何だろう?
 しかし護衛がいちいち気にすることではないので黙っている。

「やあねあの子ったら、うふふふふ、まったく仕方ない子ねえ」

「……」

 気にしないふりをしているとアリシア姫はこちらを見て楽しげに手招きした。

「ルウドも見てみなさいよ、これ。面白いわよ?」

 姫が見ていた書類を渡されふと見ると答案のようだった。
 質問と答えが書かれている。

「………………なんですかこれ…………?」

 質問の内容がおかしい。ルウドについての質問?
 何で自分を題材にした問題が出されているんだ?そしてこの答案を書いているのがティア様……?

「ふふふっ、ルウドの好きなモノ、ティア姫。ルウドの将来の夢、ティア姫との結婚。最近憑いているモノ、ティアの生き霊。ふふふふふっ、もうヤケクソねこの子」

「………アリシア様……‥」

 疑惑の目を向けるとアリシア姫はにが笑う。

「頼まれたのよ。私が遊んでるわけじゃないわよ?問題を作成したのは私だから答えを知ってる私が採点してるけど」

「・・・…‥はい?」

「大変なんだから。こういうのが三十五枚もあったのよ?とても疲れたんだから」

「……一体何をしておいでで?」

「ええ?試験よ?なにかご褒美がすごいらしいわ。だって使用人が嬉しそうに飛びつく位だから。ティアまで使用人のふりして飛び付いてるし。ルウドが関係しているのだからルウドが知っているのではなくて?」

「ええ…‥?」

「やっぱりあなた、すごいお宝持っているのではなくて?」

「………」

 アリシア姫に期待を込めた視線を向けられても困る。
 もともと少ない荷物を整理しながら捜してみたが金目のものなどロクに出てこなかった。
 ここまで貧乏だと知って逆に気が塞いだ。



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