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紡いだ時間は嘘をつかないから。
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佐野くんに連れられて、僕らは今、廃れた公園にいた。
ブランコの鎖は錆びて、赤茶色。座面はひび割れたゴム。滑り台の塗装は剥げてくすんだ色。
砂場の砂は固く踏み固められていて、雑草がまばらに生えている。隅にはペットボトルやたばこの吸い殻が放置されている。
まだ、子供が遊んでいてもおかしくない時間帯なのに、子供の笑い声一つ響かない。そこにあるのは忘れらさられた遊具だけだった。
そんな公園にも等しく斜陽は差す。オレンジ色に照らされて、寂しそうな陰が落ちる。
「ここ、あんまり人がいないでしょ?俺の秘密基地」
佐野くんは、いたずら好きの子供のようなそんな顔で笑った。
いつも、大きく見えてしかたなかった佐野くんが今だけは年相応の青年に見えた気がした。
それから、しばらくは佐野くんと話しながらブランコを漕いだ。漕ぐたびに「キー…キー…」と音を立てるのがおかしかった。
子供用に作られているから、小柄な僕でもやはり小さくて、佐野くんが窮屈そうにしている様が妙におもしろかった。
5時のチャイムがなり響く。名残おしさも感じるがもうそろそろ帰らなくては、弟が腹を空かして待っている。
「佐野くん、今日は楽しかった。ありがとう。もう帰ろう?」
途端に佐野くんの表情が曇る。
「も、もうちょい、一緒にいられない?」
声色には動揺が、顔には焦りが滲んていた。
それでも佐野くんは笑顔を崩さない。変に隠そうとするから、目元が引きつっていて、不自然な笑顔だった。
僕と一緒にいたいという理由ではない、ないかもっと切実な事情を隠しているのだということが感じ取れた。
例え、佐野くんが僕に隠しごとをしていても紡いだ時間は嘘じゃないから。佐野くんの優しさは僕が誰よりも分かっているから。
それでも彼から隔てた境界線に少し寂しさを感じつつも、僕は触れないことにした。
(きっと話したくないことだってあるさ、僕も佐野くんに知られたくないこといっぱいあるし…。)
「困ったなぁ、これから夕飯作らないと…。あっ、もしよかったら佐野くん、僕んちでご飯食べてく?あんまり美味しくないかもだけど」
気づいていないふりをして、明るいトーンで声を出す。
「嬉しいけど流石に悪いよ…。急に行ったら小桜くんのご両親にも迷惑かけちゃうし…。」
「ううん、全然大丈夫だよ!親は結婚5周年の旅行でしばらく帰ってこないし、強いて言えば弟がいるけれど多分気にしないよ!」
「うん、でも…」
「あっ、じゃあさ皿洗いやってよ!料理は好きだけど皿洗いは嫌いなんだよな~」
佐野くんをこのまま帰らせるのは、なにかいけないような気がして必死に引き止めてみる。
「ありがとう、そこまで言うならお邪魔させてもらうね。」
一瞬のことだったのに、久しぶりに笑顔をみたような気がした。
(そっちの顔の方が似合ってる。)
佐野くんはいつも強引であるからいいのだ。変にしおらしいと調子が狂う。
僕たちは寂しい公園を後にする。
(今日は少し張り切って佐野くんを元気づかないと!)
ちゃんと佐野くんに元気になってもらわないと困る。そう、あくまで自分のためなのだ。これは佐野くんの笑顔を見ていたいという、ただの我儘なのだ。
言い訳をしながら帰路につく。
あたりはすっかり暗くなって、少し空気がひんやりとする。
今夜は一層、賑やかな夜になりそうだ。
*******
危なかった。でもよかった。今日はあの空間で自分が腐っていくような惨めな気持ちを味あわなくてもいいんだ。
そう思うと酷く安堵する。
本当に少しでも長く外にいたいのだ。
(小桜くんには迷惑をかけたな…。)
彼は俺を救ってくれた。こんな汚い俺に2度も手を差し伸べてくれた。
(小桜くん…。ありがとう。)
感謝の言葉は声になることがなく、口の形を作るだけでだった。
きっと君は『なんのこと?』と笑ってとぼけて誤魔化して…。僕の**罪**なんてなかったことにしてしまうんだ。
ブランコの鎖は錆びて、赤茶色。座面はひび割れたゴム。滑り台の塗装は剥げてくすんだ色。
砂場の砂は固く踏み固められていて、雑草がまばらに生えている。隅にはペットボトルやたばこの吸い殻が放置されている。
まだ、子供が遊んでいてもおかしくない時間帯なのに、子供の笑い声一つ響かない。そこにあるのは忘れらさられた遊具だけだった。
そんな公園にも等しく斜陽は差す。オレンジ色に照らされて、寂しそうな陰が落ちる。
「ここ、あんまり人がいないでしょ?俺の秘密基地」
佐野くんは、いたずら好きの子供のようなそんな顔で笑った。
いつも、大きく見えてしかたなかった佐野くんが今だけは年相応の青年に見えた気がした。
それから、しばらくは佐野くんと話しながらブランコを漕いだ。漕ぐたびに「キー…キー…」と音を立てるのがおかしかった。
子供用に作られているから、小柄な僕でもやはり小さくて、佐野くんが窮屈そうにしている様が妙におもしろかった。
5時のチャイムがなり響く。名残おしさも感じるがもうそろそろ帰らなくては、弟が腹を空かして待っている。
「佐野くん、今日は楽しかった。ありがとう。もう帰ろう?」
途端に佐野くんの表情が曇る。
「も、もうちょい、一緒にいられない?」
声色には動揺が、顔には焦りが滲んていた。
それでも佐野くんは笑顔を崩さない。変に隠そうとするから、目元が引きつっていて、不自然な笑顔だった。
僕と一緒にいたいという理由ではない、ないかもっと切実な事情を隠しているのだということが感じ取れた。
例え、佐野くんが僕に隠しごとをしていても紡いだ時間は嘘じゃないから。佐野くんの優しさは僕が誰よりも分かっているから。
それでも彼から隔てた境界線に少し寂しさを感じつつも、僕は触れないことにした。
(きっと話したくないことだってあるさ、僕も佐野くんに知られたくないこといっぱいあるし…。)
「困ったなぁ、これから夕飯作らないと…。あっ、もしよかったら佐野くん、僕んちでご飯食べてく?あんまり美味しくないかもだけど」
気づいていないふりをして、明るいトーンで声を出す。
「嬉しいけど流石に悪いよ…。急に行ったら小桜くんのご両親にも迷惑かけちゃうし…。」
「ううん、全然大丈夫だよ!親は結婚5周年の旅行でしばらく帰ってこないし、強いて言えば弟がいるけれど多分気にしないよ!」
「うん、でも…」
「あっ、じゃあさ皿洗いやってよ!料理は好きだけど皿洗いは嫌いなんだよな~」
佐野くんをこのまま帰らせるのは、なにかいけないような気がして必死に引き止めてみる。
「ありがとう、そこまで言うならお邪魔させてもらうね。」
一瞬のことだったのに、久しぶりに笑顔をみたような気がした。
(そっちの顔の方が似合ってる。)
佐野くんはいつも強引であるからいいのだ。変にしおらしいと調子が狂う。
僕たちは寂しい公園を後にする。
(今日は少し張り切って佐野くんを元気づかないと!)
ちゃんと佐野くんに元気になってもらわないと困る。そう、あくまで自分のためなのだ。これは佐野くんの笑顔を見ていたいという、ただの我儘なのだ。
言い訳をしながら帰路につく。
あたりはすっかり暗くなって、少し空気がひんやりとする。
今夜は一層、賑やかな夜になりそうだ。
*******
危なかった。でもよかった。今日はあの空間で自分が腐っていくような惨めな気持ちを味あわなくてもいいんだ。
そう思うと酷く安堵する。
本当に少しでも長く外にいたいのだ。
(小桜くんには迷惑をかけたな…。)
彼は俺を救ってくれた。こんな汚い俺に2度も手を差し伸べてくれた。
(小桜くん…。ありがとう。)
感謝の言葉は声になることがなく、口の形を作るだけでだった。
きっと君は『なんのこと?』と笑ってとぼけて誤魔化して…。僕の**罪**なんてなかったことにしてしまうんだ。
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