出会った番(つがい)は同性でした

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第1章 竜人族と人族の邂逅

5.私にだけ甘い人

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「着いた。ここにカミラさんがいるよ」
「ありがとうございます!」

 アイラさんに連れられてしばらく歩いて、やっと到着したみたい。

「隊長ー! お客さんですよー」
「お客? ……ってリア?!」

 アイラさんがドアを開けて中に入れば、一番奥に座っていたカミラさんが目を見開いて立ち上がった。うわ、隊服? 騎士服っていうのかな? かっこいい……似合いすぎて眩しい。

「お仕事中すみません……イザベラさんからお弁当を預かってきて」
「こんなに早くリアに会えて嬉しい。迷わなかった?」

 嬉しそうな表情で傍に来てくれて、イザベラさんの言う通り喜んでくれたみたいで良かった。

「はい。入口からアイラさんに案内してもらって」
「アイラ、ありがとう」
「いいえ。それにしてもカミラさんのそんな表情見たことないですよ。クロエ、大丈夫?」
「噂の番?! うわ、やばっ! あのカミラさんがでれっでれ……幻覚??」

 私の前では出会った時からこんな感じだし、むしろ表情豊かだな、と思っていた。普段一緒に働いているのに見たことないなんて、普段のカミラさんはどんな感じなんだろう?

「そう。私の番のアメリア。リア、少し待っててくれる? もう少しで休憩だから。ここに座ってて?」
「失礼します……」

 カミラさんの席の横にある椅子をぽんぽん、とされたから座らせてもらう。周りから視線を感じて落ち着かない……

「よし、休憩にしよう。リア、お待たせ。食堂行こ」

 初めは周りの視線が気になってそわそわしていたけれど、カミラさんから時々向けられる気遣うような表情や仕事をする横顔に魅入っていたらいつの間にか休憩時間になっていた。

「リア、わざわざありがとね。まさか来てくれるなんて」
「昨日の夜迷惑をかけたので……」
「そんなのいいのに。体調はどう?」

 隣を歩きながら、心配そうに様子を伺ってくれるけれど、申し訳なさでいっぱいです……

「もうすっかりです」
「え、昨日の夜?? 体調?? カミラさん、そのへん詳しく……ってエマさん、離してー?!」

 カミラさんと話していたらクロエさん? がカミラさんに話しかけたかと思えば引きずられて行った。なんだか同僚を思い出すな……

「クロエは気にしないで……あれでも仕事はできるんだけどね……」
「ふふ、カミラさん可愛いですね」

 遠い目をするカミラさんがなんだか可愛くて笑ってしまったらきょとん、とこっちを見てくる。

「可愛い……?」
「あ、はい。でも言われ慣れてますよね?」
「いや、可愛い、なんて言われたことないな。リアが1番可愛い」
「えっ……それは無いです」

 私の方が可愛い、は無いわ……さっきだって嬉しそうに笑った顔が可愛かったし。可愛い、じゃなければ綺麗、とかかっこいい、とかかな?

「私にとっては誰より可愛い。ここ座って? お弁当食べよ」

 そんなにうっとりした目で見つめられると照れる。それに周りの騎士さん達が真っ赤。色気やばいですよね……

「はい、リアの分」
「ありがとうございます! わ、美味しそうですね」

 持ってくれていた袋から出してくれて、蓋を開けて目の前に置いてくれた。今日も美味しそう。

「美味しいー! この魚すごく美味しいです」

 着いてから色々と食べ歩きをしたけれど、この国のご飯はすごく美味しい。元々食べることが好きだし、ご飯が美味しいのは嬉しい。

「気に入った? 私のもあげる。はい」
「んー、美味しー!」
「可愛い。もっとあるよ」

 カミラさんに食べさせてもらうと周りがざわついて、自然に食べさせてもらってしまったけれど急に恥ずかしくなる。昨日ひたすら食べさせてくれるから、珍しくないのかな、と思ってたけれどそういう訳でもない……?

「え、カミラさんが笑ってる……」
「声が甘い……もはや別人」
「カミラさんがあーん? 何事??」
「え、あの子誰?? え? カミラさんの番?!」
「カミラさんの色気やばい」

 近くに座っていたお姉さんたちが驚いているからそういう訳じゃないんだ……恥ずかし……

「リア? もういいの?」
「はい、もう大丈夫です」
「そっかー」

 まだ食べさせようとしてくるから断れば、ちょっとしゅんとしちゃって可愛い。

「え、カミラさんだよね? あんな顔もするんだ……」
「新たな一面……!」

 カミラさんって人気なんだな……なんだかちょっと複雑な気分。

「リア、どうかした? やっぱり具合悪い?」
「いや、大丈夫です!」
「無理しないでね」

 眉を下げて心配そうにしてくれていて、大丈夫、と言えば優しく笑ってくれる。
 ご飯を買って戻ってきたエマさんとクロエさんが合流して、クロエさんからの視線を感じつつご飯を食べ終えた。

「ご馳走様でした。では、私は帰りますね」
「え、もう? 送ってく」
「いえいえ、1人で帰れますよ」

 さっき入ってきたところを通ってきたし、多分大丈夫だと思う。

「もう少し一緒にいさせて?」
「ーっ!! やっばい!! え? 最高……」

 周りからの悲鳴が凄いよ……クロエさんなんて机をバンバン叩いて悶えている。
 すごい状況だけれど、カミラさんは気にならないのか、私から視線を外すことはなくじっと見つめてくる。

「……はい」
「ありがとう。エマ、リアを送ったらすぐ戻るからそれまで任せる」

 私に笑顔を向けて、エマさんに後を任せている。隊長だもん、忙しいよね……

「もうそのまま休んだら? しばらく休みも取ってないんだし」
「……そうするわ。何かあったら遠慮せず連絡して」

 少し考えて、休むことにしたみたい。

「リア、お待たせ。帰ろ」
「ごゆっくりー」
「アメリアちゃん、デレデレなカミラさんを供給してくれてありがとう!! 尊すぎた……絶対また来てね!」

 クロエさんの勢いが凄い。旅行に来ているだけだし、多分もう来ることは無いかと……

「えっと……」
「うん、クロエは放っておけばいいから。おいで?」

 差し出してくれた手を取って立ち上がらせて貰えば、嬉しそうな顔が見られて、なんだか私まで嬉しくなる。
 手を離そうとすればそのままぎゅっと握られたけれど嫌じゃないし、カミラさんが嬉しそうだからこのままでいいか。

「着替えるから、少し待ってくれる?」
「あ、着替えちゃうんですね……」
「うん。これ、とにかく目立つんだよね」

 普段着でも目立つのに、騎士服なんて余計か……すごく似合ってるのに残念。

「物凄く似合ってます」
「本当? リアにそう言って貰えると嬉しい」
「わっ?! ここで着替えるんですか?!」

 さっきの部屋に戻ってきて、荷物を取りに来ただけかと思っていたら脱ぎ始めてびっくりした。

「うん。移動するの面倒だし、大抵ここで着替えてる」

 え? さっき見た感じこの部屋には女性しかいなかったけれど、こんなに綺麗なんだもん、ここで着替えなんてされたらみんな気になって仕事どころじゃないんじゃ? 

「うわ……綺麗……」
「そう? ありがと」

 騎士服を脱いで現れた素肌が綺麗すぎて目をそらす事なく見つめてしまった。
 服を着ていてもスタイルの良さが際立つのに、脱ぐと引き締まったお腹や柔らかそうな胸が……って変態か私。

 心臓が煩くて、同性の下着姿に興奮するなんて、今まではそんなこと無かったのに。そもそも今まで恋愛に興味がなかったというか、恋心というものがよく分からないというか……

「あれ……? 鱗?」

 あんまり見ないようにしよう、と目を逸らそうとしたら、カミラさんの喉元に1枚だけ銀色の鱗があってキラキラしていることに気づいた。

「ああ、これ? 何れリアにあげる」
「えっ?! いや、え?」

 どういうこと? 剥がすって事? 怖っ!!

「多分リアが考えてるような事じゃないと思うけど。まあ、何れね」

 今はそれ以上教えてくれる気は無いみたいで、着替えを終えたカミラさんに続いて詰所を出る。

 詰所を出るとカミラさん目当てで来ていた人に囲まれたけれど、笑顔を見せることなく事務的に対応していて、イザベラさんの言う通り、私に見せる表情とは全然違った。

 あまり実感がなかったけれど、カミラさんの番、ってもしかして物凄いこと……?
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