5 / 6
5
しおりを挟む
夜の静寂の中、私はベッドの上で膝を抱えていた。
まるで世界に取り残されたような気がしていた。騒がしいほどに愛を向けられているのに、心はどこか空虚で。
(私は、なぜこんなに愛されているの?)
王太子・レオナルドとの婚約破棄をきっかけに始まった“求愛ラッシュ”。
宰相のルシアン、騎士団のレオン、そして昨夜の“黒の王子”ゼイン。
それぞれが、私に本気の言葉を投げかけてくる。
(でも……私は、自分自身がよく分からない)
誰を好きなのか。そもそも、愛される資格が自分にあるのか――そんな思考が、ぐるぐると渦巻いていた。
「アリシア様……お茶をお持ちしました」
控えめなノックとともに、リリアが入室してきた。彼女の優しい微笑みを見ると、少しだけ心が落ち着く。
「ありがとう、リリア」
「……お悩みのご様子ですね」
リリアは私のそばにそっと座り、淹れたてのハーブティーを差し出してくれる。
その香りが、少しだけ気持ちを和らげた。
「リリア、もし貴女なら、どうする?」
「……どう、とは?」
「突然、たくさんの人に『愛してる』なんて言われたら。自分にはそんな価値があるのかも分からないのに、みんな真剣で……。怖くて、選べないの」
「……アリシア様」
リリアは、柔らかい眼差しで私を見つめた。
「アリシア様は、他の誰よりも真っ直ぐな方です。だからこそ、“選ぶ”ことを恐れてしまう。でも、それは……優しさですわ」
「優しさ……?」
「ええ。自分が誰かを傷つけるかもしれないと悩む、それは思いやりです。でも同時に、アリシア様の幸せを願う人たちの想いも、どうか忘れないでくださいませ。彼らは、きっと“選ばれない痛み”も覚悟のうえで、想いを告げているはずです」
その言葉に、私は少しだけ肩の力を抜いた。
(そう……なのかな)
そのときだった。
――コンコン。
再び扉がノックされた。時刻はもう深夜に差しかかっているというのに。
「誰……?」
「俺だ。開けてくれ」
低く響く声に、私は瞬時に察した。
「……ルシアン?」
「話がある。今すぐ、君と二人きりで」
リリアが警戒の視線を向ける。
「アリシア様、夜分に男性を部屋へお通しするのは――」
「いいわ、リリア。……通して」
「……畏まりました」
扉が開き、漆黒の軍服に身を包んだ宰相ルシアンが、静かに現れた。
その眼差しは、いつも以上に鋭く、それでいてどこか焦っているようにも見える。
「……すまない。こんな時間に」
「構わないわ。それより、話って?」
彼は無言のまま、数歩近づいてくる。そして、ふと立ち止まり、深く息を吐いた。
「アリシア。君に聞きたいことがある」
「なにかしら」
「……君は、まだレオナルドのことを――愛しているのか?」
唐突な問いだった。けれど、私はすぐに答えられなかった。
(愛している? 彼のことを?)
レオナルドは、確かにかつて婚約者だった。幼い頃から育ち、未来を共に歩むと信じていた。
けれど、彼は私を裏切った。公衆の面前で婚約破棄を告げ、他の令嬢と手を取り合った。
(……あの瞬間、私の心は――)
「分からないわ」
私は正直に答えた。
「彼のことを許したわけじゃない。でも……心のどこかで、まだ囚われているのかもしれない。そう思う自分が、嫌でたまらないの」
ルシアンの表情が、ほんの一瞬、曇った。
「……なら、俺はもっと強く想いを伝えなければいけないな」
「え?」
「俺は、アリシア。君を心から愛している。君の知性も、誇り高さも、誰よりも尊敬している」
「…………」
「君が誰を選んでも、後悔しないように。俺は君に相応しい男であると証明し続ける。だから、どうか――君の目で、俺を見ていてほしい」
その真剣な声音に、私は言葉を失った。
けれど、心が不思議と温かくなるのを感じた。
(どうしてみんな……こんなにもまっすぐに私を見てくるの……?)
「……ありがとう、ルシアン」
その夜、彼は深く頭を下げ、静かに部屋を後にした。
月光に照らされた背中が、やけに大きく見えた。
翌日、王都では小さな舞踏会が催されることになっていた。
社交界からの招待で、私は“悪役令嬢”としてではなく、“自由な令嬢”として姿を現すことになった。
「……似合ってるわよ、アリシア様!」
リリアが目を輝かせて言う。
鏡に映る私は、淡い青のドレスに身を包み、髪を夜会巻きにまとめていた。
「……ありがとう」
自信はなかった。けれど、逃げないと決めた。
“誰かに愛されること”から目を背けず、正面から向き合うために。
舞踏会会場に足を踏み入れた瞬間、多くの視線が私に集まった。
「……あれが、アリシア嬢?」
「随分と綺麗になったわね……!」
「噂では、数名の貴族男性が本気で求婚しているとか……」
囁かれる声。私を拒絶していたはずの社交界が、今では注目の的に変わっていた。
それが、嬉しいような、苦しいような。
そして――
「……来てくれたんだな」
人波をかき分けて、現れたのはレオナルドだった。
数日前、私を見下すような態度を取っていた彼が、今はどこか必死な目をしている。
「……こんばんは、殿下」
「いや、“レオナルド”でいい。今日は公の場じゃない」
「……そうですか」
彼は、私の前に立ち、しばし無言で私を見つめた。
「綺麗だ、アリシア。本当に」
「……ありがとうございます」
「君に伝えたいことがある。あのとき、君を傷つけたのは俺だ。君が誰よりも真っ直ぐに俺を見ていてくれたのに……俺はそれに気づかなかった」
「…………」
「今さら遅いかもしれない。だけど、俺は……君を、愛してる」
舞踏会のざわめきが、一瞬、遠く感じた。
彼の言葉が、心に突き刺さる。
(ずるい……どうして、今になって……)
私は、笑っていた。けれど、それはどこか切ない笑みだった。
「遅すぎるわ、レオナルド。でも、ありがとう」
「……アリシア」
その瞬間、どこからか風が吹き抜けた。
誰かが、私の手をそっと取る。
「申し訳ないが、そのダンスは私が先約だ」
低く美しい声。振り返ると、そこには――黒の王子・ゼインがいた。
(……また、あなたなのね)
「君は今、選択の真っ只中にいる。誰を選ぶのか。あるいは、誰も選ばず、すべてを壊すのか。アリシア、君の選択が、この世界を決める」
その手は、どこか冷たくて、でも心地よい。
(私が……選ぶ?)
私は、これから本当に誰かを選ばなければいけない。
この“愛されすぎる物語”の、答えを――
まるで世界に取り残されたような気がしていた。騒がしいほどに愛を向けられているのに、心はどこか空虚で。
(私は、なぜこんなに愛されているの?)
王太子・レオナルドとの婚約破棄をきっかけに始まった“求愛ラッシュ”。
宰相のルシアン、騎士団のレオン、そして昨夜の“黒の王子”ゼイン。
それぞれが、私に本気の言葉を投げかけてくる。
(でも……私は、自分自身がよく分からない)
誰を好きなのか。そもそも、愛される資格が自分にあるのか――そんな思考が、ぐるぐると渦巻いていた。
「アリシア様……お茶をお持ちしました」
控えめなノックとともに、リリアが入室してきた。彼女の優しい微笑みを見ると、少しだけ心が落ち着く。
「ありがとう、リリア」
「……お悩みのご様子ですね」
リリアは私のそばにそっと座り、淹れたてのハーブティーを差し出してくれる。
その香りが、少しだけ気持ちを和らげた。
「リリア、もし貴女なら、どうする?」
「……どう、とは?」
「突然、たくさんの人に『愛してる』なんて言われたら。自分にはそんな価値があるのかも分からないのに、みんな真剣で……。怖くて、選べないの」
「……アリシア様」
リリアは、柔らかい眼差しで私を見つめた。
「アリシア様は、他の誰よりも真っ直ぐな方です。だからこそ、“選ぶ”ことを恐れてしまう。でも、それは……優しさですわ」
「優しさ……?」
「ええ。自分が誰かを傷つけるかもしれないと悩む、それは思いやりです。でも同時に、アリシア様の幸せを願う人たちの想いも、どうか忘れないでくださいませ。彼らは、きっと“選ばれない痛み”も覚悟のうえで、想いを告げているはずです」
その言葉に、私は少しだけ肩の力を抜いた。
(そう……なのかな)
そのときだった。
――コンコン。
再び扉がノックされた。時刻はもう深夜に差しかかっているというのに。
「誰……?」
「俺だ。開けてくれ」
低く響く声に、私は瞬時に察した。
「……ルシアン?」
「話がある。今すぐ、君と二人きりで」
リリアが警戒の視線を向ける。
「アリシア様、夜分に男性を部屋へお通しするのは――」
「いいわ、リリア。……通して」
「……畏まりました」
扉が開き、漆黒の軍服に身を包んだ宰相ルシアンが、静かに現れた。
その眼差しは、いつも以上に鋭く、それでいてどこか焦っているようにも見える。
「……すまない。こんな時間に」
「構わないわ。それより、話って?」
彼は無言のまま、数歩近づいてくる。そして、ふと立ち止まり、深く息を吐いた。
「アリシア。君に聞きたいことがある」
「なにかしら」
「……君は、まだレオナルドのことを――愛しているのか?」
唐突な問いだった。けれど、私はすぐに答えられなかった。
(愛している? 彼のことを?)
レオナルドは、確かにかつて婚約者だった。幼い頃から育ち、未来を共に歩むと信じていた。
けれど、彼は私を裏切った。公衆の面前で婚約破棄を告げ、他の令嬢と手を取り合った。
(……あの瞬間、私の心は――)
「分からないわ」
私は正直に答えた。
「彼のことを許したわけじゃない。でも……心のどこかで、まだ囚われているのかもしれない。そう思う自分が、嫌でたまらないの」
ルシアンの表情が、ほんの一瞬、曇った。
「……なら、俺はもっと強く想いを伝えなければいけないな」
「え?」
「俺は、アリシア。君を心から愛している。君の知性も、誇り高さも、誰よりも尊敬している」
「…………」
「君が誰を選んでも、後悔しないように。俺は君に相応しい男であると証明し続ける。だから、どうか――君の目で、俺を見ていてほしい」
その真剣な声音に、私は言葉を失った。
けれど、心が不思議と温かくなるのを感じた。
(どうしてみんな……こんなにもまっすぐに私を見てくるの……?)
「……ありがとう、ルシアン」
その夜、彼は深く頭を下げ、静かに部屋を後にした。
月光に照らされた背中が、やけに大きく見えた。
翌日、王都では小さな舞踏会が催されることになっていた。
社交界からの招待で、私は“悪役令嬢”としてではなく、“自由な令嬢”として姿を現すことになった。
「……似合ってるわよ、アリシア様!」
リリアが目を輝かせて言う。
鏡に映る私は、淡い青のドレスに身を包み、髪を夜会巻きにまとめていた。
「……ありがとう」
自信はなかった。けれど、逃げないと決めた。
“誰かに愛されること”から目を背けず、正面から向き合うために。
舞踏会会場に足を踏み入れた瞬間、多くの視線が私に集まった。
「……あれが、アリシア嬢?」
「随分と綺麗になったわね……!」
「噂では、数名の貴族男性が本気で求婚しているとか……」
囁かれる声。私を拒絶していたはずの社交界が、今では注目の的に変わっていた。
それが、嬉しいような、苦しいような。
そして――
「……来てくれたんだな」
人波をかき分けて、現れたのはレオナルドだった。
数日前、私を見下すような態度を取っていた彼が、今はどこか必死な目をしている。
「……こんばんは、殿下」
「いや、“レオナルド”でいい。今日は公の場じゃない」
「……そうですか」
彼は、私の前に立ち、しばし無言で私を見つめた。
「綺麗だ、アリシア。本当に」
「……ありがとうございます」
「君に伝えたいことがある。あのとき、君を傷つけたのは俺だ。君が誰よりも真っ直ぐに俺を見ていてくれたのに……俺はそれに気づかなかった」
「…………」
「今さら遅いかもしれない。だけど、俺は……君を、愛してる」
舞踏会のざわめきが、一瞬、遠く感じた。
彼の言葉が、心に突き刺さる。
(ずるい……どうして、今になって……)
私は、笑っていた。けれど、それはどこか切ない笑みだった。
「遅すぎるわ、レオナルド。でも、ありがとう」
「……アリシア」
その瞬間、どこからか風が吹き抜けた。
誰かが、私の手をそっと取る。
「申し訳ないが、そのダンスは私が先約だ」
低く美しい声。振り返ると、そこには――黒の王子・ゼインがいた。
(……また、あなたなのね)
「君は今、選択の真っ只中にいる。誰を選ぶのか。あるいは、誰も選ばず、すべてを壊すのか。アリシア、君の選択が、この世界を決める」
その手は、どこか冷たくて、でも心地よい。
(私が……選ぶ?)
私は、これから本当に誰かを選ばなければいけない。
この“愛されすぎる物語”の、答えを――
59
あなたにおすすめの小説
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
さよなら、悪女に夢中な王子様〜婚約破棄された令嬢は、真の聖女として平和な学園生活を謳歌する〜
平山和人
恋愛
公爵令嬢アイリス・ヴェスペリアは、婚約者である第二王子レオンハルトから、王女のエステルのために理不尽な糾弾を受け、婚約破棄と社交界からの追放を言い渡される。
心身を蝕まれ憔悴しきったその時、アイリスは前世の記憶と、自らの家系が代々受け継いできた『浄化の聖女』の真の力を覚醒させる。自分が陥れられた原因が、エステルの持つ邪悪な魔力に触発されたレオンハルトの歪んだ欲望だったことを知ったアイリスは、力を隠し、追放先の辺境の学園へ進学。
そこで出会ったのは、学園の異端児でありながら、彼女の真の力を見抜く魔術師クライヴと、彼女の過去を知り静かに見守る優秀な生徒会長アシェル。
一方、アイリスを失った王都では、エステルの影響力が増し、国政が混乱を極め始める。アイリスは、愛と権力を失った代わりに手に入れた静かな幸せと、聖女としての使命の間で揺れ動く。
これは、真実の愛と自己肯定を見つけた令嬢が、元婚約者の愚かさに裁きを下し、やがて来る国の危機を救うまでの物語。
婚約破棄された公爵令嬢エルカミーノの、神級魔法覚醒と溺愛逆ハーレム生活
ふわふわ
恋愛
公爵令嬢エルカミーノ・ヴァレンティーナは、王太子フィオリーノとの婚約を心から大切にし、完璧な王太子妃候補として日々を過ごしていた。
しかし、学園卒業パーティーの夜、突然の公開婚約破棄。
「転入生の聖女リヴォルタこそが真実の愛だ。お前は冷たい悪役令嬢だ」との言葉とともに、周囲の貴族たちも一斉に彼女を嘲笑う。
傷心と絶望の淵で、エルカミーノは自身の体内に眠っていた「神級の古代魔法」が覚醒するのを悟る。
封印されていた万能の力――治癒、攻撃、予知、魅了耐性すべてが神の領域に達するチート能力が、ついに解放された。
さらに、婚約破棄の余波で明らかになる衝撃の事実。
リヴォルタの「聖女の力」は偽物だった。
エルカミーノの領地は異常な豊作を迎え、王国の経済を支えるまでに。
フィオリーノとリヴォルタは、次々と失脚の淵へ追い込まれていく――。
一方、覚醒したエルカミーノの周りには、運命の攻略対象たちが次々と集結する。
- 幼馴染の冷徹騎士団長キャブオール(ヤンデレ溺愛)
- 金髪強引隣国王子クーガ(ワイルド溺愛)
- 黒髪ミステリアス魔導士グランタ(知性溺愛)
- もふもふ獣人族王子コバルト(忠犬溺愛)
最初は「静かにスローライフを」と願っていたエルカミーノだったが、四人の熱烈な愛と守護に囲まれ、いつしか彼女自身も彼らを深く愛するようになる。
経済的・社会的・魔法的な「ざまぁ」を経て、
エルカミーノは新女王として即位。
異世界ルールで認められた複数婚姻により、四人と結ばれ、
愛に満ちた子宝にも恵まれる。
婚約破棄された悪役令嬢が、最強チート能力と四人の溺愛夫たちを得て、
王国を繁栄させながら永遠の幸せを手に入れる――
爽快ざまぁ&極甘逆ハーレム・ファンタジー、完結!
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
【完結】悪役令嬢のカウンセラー
みねバイヤーン
恋愛
わたくしエリザベート、ええ、悪役令嬢ですわ。悪役令嬢を極めましたので、愛するご同業のお嬢さまがたのお力になりたいと思っていてよ。ほほほ、悩める悪役令嬢の訪れをお待ちしておりますわ。
(一話完結の続き物です)
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる