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しおりを挟む予想はしていた事だったが、呼吸を忘れる程の衝撃であった。
「権限は王家の血筋に掛かっている。だから例え養子で他家に入ったとしても使用できるんだ。そしてエンプレス家は【王家の血筋のみが使える】という本来の意味を隠す家なんだよ。因みに王家の番犬でいるのは私然り、現当主然り、役割に見合った権限魔法を有しているからだ」
言外に他にも別の役割を持つ家と養子に出ている王家の者がまだ居ると仄めかしている。この話題を深堀するのは良く無いだろう。現にケイトが話に組み込んでいないのはそういう事だ。
「私の出自を告げた上でリアナに言うよ。私はリアナを好いている。君が婚約破棄を決意した時に私が君への婚約を考えて行動する程には」
「そんな前から…」
「基本王家の血を持つ養子は子を残す事はしない。身分を明かさなければならないからね。私もそのつもりでいた。けれどリアナに話しかけられ、友人となり、共に笑う仲になってから私は私の人生を考えるようになったんだ」
穏やかに話すケイトからは愛おしいとばかりの空気が出ている。真正面から受けた私は狼狽えるばかりだ。そして気付く。ケイトが女性でいた時に感じていたモノは気のせいでは無かったのだと。その事実も相まって顔が熱くなるのを感じた。
「王太子殿下へ報告した時は驚かれたよ。同時に祝福もされた。母親は違えどあの人は私の兄に当たるからね。正直苦手なところはあるが、リアナの事情を知った上で協力すると快く受けてくれたんだ。弟の想い人ならって。本当そういうところなんだよあの人。という訳で、婚約破棄が王太子殿下主体で進んだのはこういった背景があったからなんだ」
「……そうなのね」
思考をフル稼働して、縁切りの時に将来を見据えてと言っていたのはそういうことかと納得する。同時にお父様が顰めたのも全て分かっていたからだという事も。近くに座って私とケイトの話を黙って聞いているお父様を見遣れば苦笑いを浮かべていた。そこには負の感情は無く、ただ父親の顔をしていた。
「リアナの隣で生きていきたい。どうか私と結婚して欲しい」
ケイトの声にハッとして顔を向けると、組んでる両手が少しだけ震えてるように見えた。彼も不安なんだ。
それもその筈。女と思っていた友人が男で、更には国王の息子の一人で、王太子殿下の義母兄弟。権限魔法の真相とエンプレス家の本来の役割。羅列するととんでもない事を暴露されたなと思考を放棄したくなる内容だ。
でも、ケイトの想いは彼の純粋たるものなのだろう。とはいえ、だ。
「返事は保留にして欲しいわ。全てが全て、急に詰め込み過ぎなのよ」
ケイトの想いを真摯に受け止めたいと思うが素直に返せず、少しだけ苦言を添えて私は保留を提示した。
「確かに結構詰め込んだな」
「それもかなり濃厚で重い話、ね?」
普段と変わらない私達のやり取り。
ほぼそれが答えだと思う。更にはケイトから告白されて嫌な気は一切無かったが、もう少し時間が欲しいのが本音だ。
「リアナが落ち着いて答えが出るまで、私はいつまでも待っているよ」
私からの否定の言葉が無かったことで、ケイトは安心したのか彼の手の震えは無くなっていた。
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