【完結】彼女は手段を選ばない〜婚約破棄?NO!推し活&ヒロインを魔王の生贄にするのでご心配なく〜

降魔 鬼灯

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13.侯爵令嬢ユリア

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 侯爵令嬢ユリアは夜会にひとりで現れるであろうロザリモンドをからかってやろうと馬車止で様子をうかがっていた。
 ロザリモンドがダリオン殿下の婚約者の座を強引に奪い取ったことに怒りを感じていたからだった。

 ダリオン殿下のロザリモンド嫌いは有名だった。

 本来ならロザリモンドが婚約者としてすんなり決まっていたはずなのに、殿下がロザリモンド以外の令嬢を望んだから、婚約者選考は揉めに揉めた。

 ダリオン殿下はロザリモンドには及ばないだけで、莫大な魔力量を持っている。
 ロザリモンドコンプレックスのせいで努力を放棄しているが頭脳も武力も共に優れているのだ。
 同世代の男性達と比較しても総合力ではるかに勝る存在、それがダリオン殿下だった。
 しかも、王者の色とされるロイヤルレッドの髪と黄金の瞳が美しい青年なのだ。

 年頃の娘ならば憧れるなという方が無理というものだった。

 熾烈を極める、婚約者争奪戦に一歩抜きん出たのが侯爵令嬢ユリアだった。

 しかし、ようやく殿下とのお茶会にこぎつけても殿下は令嬢たちの顔も名前も覚えることはなかった。
 有力視され、何度もお茶会をしたはずのユリアの顔と名前さえ覚えてはくれていないのだ。

 殿下はロザリモンドかロザリモンド以外かという基準でしか令嬢たちを見ていないのだと思い知ったのだ。

 結局そんな殿下の婚約者の座を強引な手を使ってかっ攫っていったのはロザリモンドだった。

 ただ、今もなおダリオン殿下のロザリモンドコンプレックスは悪化する一方である。
 しかもダリオン殿下はローザという少女に夢中であるという。
 今日は犬猿の仲のふたりを嘲笑って溜飲を下げてやろうと楽しみにしていたのだ。

 しかし、まさかの同じ馬車にのって共に現れたふたりに度肝を抜かれる。
 馬車を降りたダリオン殿下が洗練された所作で中に手を差し伸べた。
 ダリオン殿下の差し出した掌にちいさな白い手を重ねてでてきたのはロザリモンド。

 まさかふたりで現れるなんれ思いもよらなかったユリアは作戦を変更した。
 ロザリモンドのドレスをからかってやろうと。ダリオン殿下がドレスを贈るはずもないだろう。ダリオン殿下が離れたら後でからかってやるわ。

 しかしそんなユリアの期待は裏切られる。

 ロザリモンドはダリオン殿下の色であり、王室のみ使用が許されたロイヤルレッドのドレスを着ていた。
 しかも、ロザモンドの名を表す美しい薔薇を思わせるデザインの美しいドレスがロザリモンドの真っ白な肌を引き立てていた。
 
 ダリオン殿下はロザリモンドのちいさな手を大切なもののようにそうっと取るとさっと引き寄せ彼女の腰に手を添えた。洗練されたその仕草にキュンとなる。
 ダリオン殿下がカッコよすぎて尊い。 そんなダリオン殿下を横から掻っ攫うなんてロザリモンドやっぱり許すまじ。ユリアの心は怒りに燃えた。

 それに未婚とは思えないくらいふたりの距離が近い、近すぎる。ロザリモンドったらどんな手を使ったのかしら?
 一矢報いたいのに、ドレスがダリオン殿下からのプレゼントである可能性が高い以上藪蛇になってしまう。他にないか凝視するユリアはある一点で目を止めた。
 あらっ?あれは?ユリアはロザリモンドを貶める格好のネタを見つけると彼らの元へと歩み寄った。
 
「あら、ダリオン殿下、ロザリモンド様ご機嫌麗しゅう。」
 二人の前で優雅に一例をするが、ダリオン殿下はやはりユリアのことを覚えていないらしく。「ああ、ありがとう。」と言ったのみだった。

 嫉妬心に火が着いたユリアは、ロザリモンドににこやかに話しかける。
「殿下のチーフとタイピンは以前ロザリモンド様が春の園遊会で着ておられたドレスのものと同じですのね。」

 殿下にお古か、残り物の端切れを渡したのか?彼女に嫌味に気づいたロザリモンドの顔色が変わる。   
 イケる。ここで一気に畳み掛けるわよ。しかし。

「これはローザが身につけていたものなのか。」

 ダリオン殿下は嬉しそうに微笑むと、ありがとうとロザリモンドの手の甲に口付けた。
 えっ?ローザ?目の前にいるのは確かに見た目は最上級天使、中身は極悪悪魔のロザリモンドで間違いない。こんな強烈な美貌、ふたつとあってたまるものか。

 しかし、聞いていたんと違う。ダリオン殿下のロザリモンドを見る瞳が甘い。
 今まで野性味を帯びたダリオン殿下の鋭い瞳が素敵だと思っていたけれど。
 大人っぽく艶っぽく見えて、なんだか危険な男の色気にクラクラする。

 そんな色気ダダ漏れのダリオン殿下に怯むことなく微笑みながら、こちらに見せつけるように甘えてしなだれかかったロザリモンドの愛らしさに同性でありながらドキドキが止まらなくなって慌ててその場を去るより他なかった。

 なんて破廉恥なのかしら。ええきちんと正装した男女がマナーに則ったエスコートをしているだけなのですわ。 
 でもでも、男は狼という言葉を認識した瞬間でしたわ。

 以前聞いたことがあるわ。殿方がドレスを贈るときはドレスを脱がすことを想像しているって。なんて恥ずかしいの。

 あたふたと立ち去るユリアは気付かなった。ユリアの抜群の画像記憶力にロザリモンドが目をつけてしまった事を。

 ロザリモンド・バルタイン
 
 職業:悪役令嬢

 彼女は欲しいと思ったものはどんな手を使っても手に入れる筋金入の悪役令嬢である。
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