【完結】彼女は手段を選ばない〜婚約破棄?NO!推し活&ヒロインを魔王の生贄にするのでご心配なく〜

降魔 鬼灯

文字の大きさ
17 / 31

17.捜索

しおりを挟む
 
 ロザリモンドはこれではいけないと気を引き締めた。

 駄目よ、うっとりしてては駄目。まさしくダリオンの思うツボだわ。
 ダリオンは私の事を好きでもないどころか、断罪したいくらい嫌っているのよ。
 それなのにこんなに優しくして、恋のドツボに嵌めようなんて。
 ダリオン、駄犬のくせに恐ろしい子。早く正気にかえらないとミイラ取りがミイラになるわ。



 ロザリモンドはここにきた大事な目的を思い出す。頭をとっとと切り替えてダリオンのハニー・トラップから逃れることにした。

 まずはアホーダ男爵を探すのだ。彼の容姿は『ツクヨミ』で見たからよくわかる。
 見た目に気を使う社交界には珍しい、ずんぐりむっくりの強烈なブ男だ。きっとひときわ目立っているはず。
 
 そして、今のロザリモンドにはアホーダ男爵を見なければならない切実な事情があった。
 そう、目も覚めるようなブ男であるアホーダ男爵の顔を見て、正気に戻るのだ。
 ダリオンにグラグラと揺すぶられる乙女心をそのブサイクな顔で現実に引き戻してほしい。


 『ツクヨミ』の映像によると、アホーダ男爵は人身売買に手を染めている。

 常套手段は夜会で見初めた若い令嬢を攫うのだ。社交界では失踪してしまったことが公になれば令嬢としての死を意味する。
 それどころか、その家にとってもダメージとなるため、攫われたなど絶対に届け出ることはない。

 そっと秘密裏に探しても見つからねば、病気療養とでも理由を付けてひっそりとフェードアウトしていくのだ。

 だからアホーダ男爵の悪行はバレることなく彼は、どんどんと大胆に犯行を行うようになる。

 彼の罪を告発したことでコリンヌはダリオンと出逢う。出来れば彼らが出会う前にアホーダ男爵はぶっ潰しておきたい。
 『推し活』はあくまで推しの幸せを応援するもの。
だから本来ならば推しのために二人を応援するのだろう。
 しかし、ロザリモンドはぶっ潰しにかかる。

 コリンヌが魔王の番である以上出会わないほうが幸せだという錦の御旗を掲げて。

 隣にはキラキラ甘々モードが凶悪なくらい増したダリオン。何事か話しかけているが無視よ。
 彼から目を背けてちびちびと飲み物をいただきながら、目を皿のようにしてブ男を探す。
 

「失礼。お嬢さん、一曲どうですかな?」
 ヒキガエルのような声が聞こえてきた。ターゲットは誰?

 さっき私達のところへ来て、抜群の記憶力を披露せてくれたユリアがそこにいた。
 壁の花をしていても高慢ちきなユリアならアホーダ男爵を相手にするはずがないわと安堵した。

 ユリアがぼーっとしたまま、アホーダ男爵にダンスへと連れ出されていくではないか。
 普段ならば、上手く躱すはずなのに……。

 情報が欲しい。地獄耳よ降臨せよ、サーチ。

「ユリア様ったら、普段は殿方と踊られることなどあまりないのに、よりによってあんな方と……。」

 そうよね。私もびっくりしたわ。

「先ほど、ロザリモンド様の様子をご覧になられてショックを受けておられたから。」

 私のせいなのかしら?タリオンへ渡した小物が自分の古いドレスをリメイクしたものとバラされたこっちの身になってよ。下手したら、断罪ものよ。
 
「無理矢理政略結婚させられるダリオン殿下が可哀想とおっしゃっていたのに、肝心のダリオン殿下がああですから。」

 いやいや、ダリオンはお勉強をして少し賢く立ち回れるようになっただけよ。

「人目も憚らず愛称呼びなんて、破廉恥だわ。」

 ダリオンはコリンヌにもリンと愛称呼びする人よ。言ってみたら誰にでもするわ。

「殿下もあんなにロザリモンド嬢だけは嫌だと拒否されていたのに、いざ婚約となると仲睦まじい様子。」

 みんなに周知の事実だったのに、私だけが知らなかったのね。あらためてショックだわ。

「それはショックを受けるのも無理はないわ。」

 
 ぼんやりとした仕草でユリアがアホーダ男爵とダンスを踊っている。踏まれたのかなんだか痛そうな仕草が可哀想だ。
 にたにたと笑いながらユリアの腰をいやらしく撫で回すアホーダ男爵が気持ち悪すぎて正気に戻れるわ、ありがとう。

 でもユリアを攫うつもりなのかしら?ユリアは私の獲物よ、渡すわけにはいかないわ。
 目的の為なら手段を選ばないロザリモンドは、自分の獲物は決して渡さない。
 
 曲が終わった。アホーダ男爵にエスコートされたユリアがふらふらとお手洗いの方へ向かった。
 これって、連れ込まれたりとか危険じゃないかしら。 

「ダリアン、あの私……。」

 ダリアンにお手洗いに行きたいなんて言えない。言えないけれど、早くしなければユリアが危ないわ。
「ローザ、大丈夫だよ。エスコートするから。」

 もじもじとした私の態度に何を勘違いしたのか、ダリアンがお手洗いに連れて行ってくれた。

 優しいんだけど……、喜んでいいのか。ロザリモンドは淑女として大切な何かを喪った気がする。

 しかし、作戦成功だから良しとしましょう。

 ロザリモンドは開き直る事にした。どうせダリオンは私のことは好きじゃないから気にすることはないわ。

 お手洗いに向かうユリアを追う。

 あらっ?

「これは殿下、ご機嫌麗しく。こちらで待っていてはご令嬢は落ち着かないでしょう。私と一緒にシガーでも。」
 
 アホーダ男爵がダリオンに礼をした。このタイミングでユリアを攫うわけではないのかしら?

「殿下、お待たせしてしまいますから、是非いってらして。」

 邪魔者は共に消し去るのみ。

 ロザリモンドは二人から離れてゆうゆうとお手洗いに向かう。おかしいわ、ずいぶん静かね。
 ドアを開けるはずのメイドもいない。


 自分でドアを開ける。ユリアどころかだれもいなかった。
 普段であれば錠がさされているはずの窓が開け放たれて風がびゅうっと音を立てて入ってくる。

 よく見ると窓の桟に黄金の髪が数本挟まっていた。ユリアの髪に似ているわ。

 窓の下を見下ろすが何も見えない。おかしいわね。
『サーチ』

 すると、見えないように遮蔽魔法がかけられた馬車が見えた。あそこに落とされて攫われたのかしら。

 ロザリモンドは自分のドレスの裏地をほんの少し破くと小指の先を唇に当て紅で文字を書いた。

「犯人はアホーダ男爵。助けに行く」その生地を窓の取っ手に結わえるとロザリモンドは魔法で存在を隠して窓から下へと静かにダイブしたのだった。


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結】白い結婚をした悪役令嬢は田舎暮らしと陰謀を満喫する

ツカノ
恋愛
「こんな形での君との婚姻は望んでなかった」と、私は初夜の夜に旦那様になる方に告げられた。 卒業パーティーで婚約者の最愛を虐げた悪役令嬢として予定通り断罪された挙げ句に、その罰としてなぜか元婚約者と目と髪の色以外はそっくりな男と『白い結婚』をさせられてしまった私は思う。 それにしても、旦那様。あなたはいったいどこの誰ですか? 陰謀と事件混みのご都合主義なふんわり設定です。

リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。 ――というのは表向きの話。 婚約破棄大成功! 追放万歳!!  辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。 ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19) 第四王子の元許嫁で転生者。 悪女のうわさを流されて、王都から去る   × アル(24) 街でリリィを助けてくれたなぞの剣士 三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ 「さすが稀代の悪女様だな」 「手玉に取ってもらおうか」 「お手並み拝見だな」 「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」 ********** ※他サイトからの転載。 ※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

前世の推しに似てる不仲の婚約者に「お顔が好きです」と伝えましたところ

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
公爵令嬢のエリーサベトは、ポンコツ王子と呼ばれる婚約者のベルナルドに嫌気がさし、婚約者破棄を目論んでた。 そんなある日、前世を思い出したエリーサベトは気付く。ベルナルドが前世の推しに似ていることに―― ポンコツ王子と勝気な令嬢が両思いになるまでのお話。 ※小説家になろうさまでも掲載しています。

処理中です...