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執務室
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秘書官としてアズランの動向は把握しておかねばならない。聞きたくないが、詳細を聞くかと書類の束を抱え直したルシアは執務室に戻る。
死ぬほど言いたくはないが、アズランにお祝いを言わなくてはと唇を噛み締めた。
アズランに想う相手がいるのも辛いが、この話を人づてに聞いたのがもっと辛い。
親友だと思っていたのは自分だけだったのだ。辛いが1番に教えて欲しかった。
自分の仕事場でもあるのになんだか入りづらくて、ルシアは扉越しにアズランをそうっと覗き込む。
広い執務机に座る魔王がいた。り、真剣な表情で書類を読み込む姿がカッコいい。いつも隣で見慣れているはずの光景なのにいつ見ても胸が高鳴ってしまうのは惚れた欲目なのか。
封印したはずの恋心がせつなくざわめく。
アズランは戦闘中でも執務中でもいつ見てもカッコいいのだから仕方ないとルシアは自分に言い聞かせた。
扉の外で呼吸を整えようと扉から入れずにアズランの整った顔を見ていると。
ぐるる~
ルシアの腹の虫が盛大に鳴いた。恥ずかしさに穴があったら入りたい気持ちで、どうかアズランに聞こえていませんようにと願う。
ルシアは最近やたらと腹が減るのだ。今までならば、夜眠りにつく前にアズランの魔力を貰えば事足りたというのに。
昨夜も魔力をたっぷり貰っているというのに、足りない。毎夜貰うだけでも申し訳無いのに日に何回もなんて。情けない。
今までこんな事なかったのに。
願いむなしく、俺の腹の音のせいで書類から顔をあげたアズランと目があった。あってしまった。
うわー、恥ずかしすぎるだろ。穴があったら入りたい。顔だけじゃなくて耳や首筋まで赤くなるのがわかる。
なんとか、夜まで空腹を我慢しようと思ったのに。バレてしまった。
すると、さっきまでの真剣な表情から一変して、アズランが破顔した。
鋭い瞳が柔らかな笑みで中和されて艶っぽく彩られる。この顔好きなんだよな。
「おいで」
少し低く掠れた声で手招きされて、惹かれるようにふらふらとアズランの元に行く。ルシアは迷いなくアズランの膝の上に座る。
そうアズランの膝の上がルシアの定位置なのだ、今のところは……。
アズランの見た目よりはるかにたくましい身体にぎゅうっとしがみつく。その温もりにほわほわが止まらない。
「ルシア、お腹がすいたのか。」
頭を優しく撫でられて、啄むようなキスされる。
アズランの温かい魔力が少しづつ飢えた身体を満たすように流れ込んできた。
身体は満たされるのに淫魔の本能がもっともっととアズランを求めて熱くなる。最近なんだか身体がおかしいのだ。
狡いよ、アズランはいつだってこんなに優しくて俺の全てを満たしてくれるのに、俺の全てなのに。
俺はアズランの全てではないのだ。アズランはもう別の誰かのものなのだ。
俺はいつだってアズランの側にいたくて必死に努力してきたのに、もうすぐ他の誰かがアズランの最も近い場所を奪っていく。
アズランとふたりきりの執務室。ここだけは死守したい。仕事を頑張ってこの場所だけは守り抜きたい。
俺はアズランから受け取るばかりで何も与えられていない。
アズラン無しでは生命を維持することすら出来ない最弱淫魔なのだから仕方ないのだ、と言い聞かせる。
魔王の横には自立した強い魔族こそがふさわしい。
涙が零れそうになってアズランにぎゅうっと、しがみついた。アズランが安心させるように俺の身体をしっかり抱き締めて長い指先ですべらかな淡い髪を梳く。
もっと欲しい。アズランに強請るように舌を絡め、魔力をすすった。身体を優しく満たしていく高純度の魔力に酔ってゆく。
今、この時だけはアズランは自分のもの。永遠にこの時が続けば良いのに……。
この夜、ルシアはアズランに結婚の話を聞くことが出来なかった。
死ぬほど言いたくはないが、アズランにお祝いを言わなくてはと唇を噛み締めた。
アズランに想う相手がいるのも辛いが、この話を人づてに聞いたのがもっと辛い。
親友だと思っていたのは自分だけだったのだ。辛いが1番に教えて欲しかった。
自分の仕事場でもあるのになんだか入りづらくて、ルシアは扉越しにアズランをそうっと覗き込む。
広い執務机に座る魔王がいた。り、真剣な表情で書類を読み込む姿がカッコいい。いつも隣で見慣れているはずの光景なのにいつ見ても胸が高鳴ってしまうのは惚れた欲目なのか。
封印したはずの恋心がせつなくざわめく。
アズランは戦闘中でも執務中でもいつ見てもカッコいいのだから仕方ないとルシアは自分に言い聞かせた。
扉の外で呼吸を整えようと扉から入れずにアズランの整った顔を見ていると。
ぐるる~
ルシアの腹の虫が盛大に鳴いた。恥ずかしさに穴があったら入りたい気持ちで、どうかアズランに聞こえていませんようにと願う。
ルシアは最近やたらと腹が減るのだ。今までならば、夜眠りにつく前にアズランの魔力を貰えば事足りたというのに。
昨夜も魔力をたっぷり貰っているというのに、足りない。毎夜貰うだけでも申し訳無いのに日に何回もなんて。情けない。
今までこんな事なかったのに。
願いむなしく、俺の腹の音のせいで書類から顔をあげたアズランと目があった。あってしまった。
うわー、恥ずかしすぎるだろ。穴があったら入りたい。顔だけじゃなくて耳や首筋まで赤くなるのがわかる。
なんとか、夜まで空腹を我慢しようと思ったのに。バレてしまった。
すると、さっきまでの真剣な表情から一変して、アズランが破顔した。
鋭い瞳が柔らかな笑みで中和されて艶っぽく彩られる。この顔好きなんだよな。
「おいで」
少し低く掠れた声で手招きされて、惹かれるようにふらふらとアズランの元に行く。ルシアは迷いなくアズランの膝の上に座る。
そうアズランの膝の上がルシアの定位置なのだ、今のところは……。
アズランの見た目よりはるかにたくましい身体にぎゅうっとしがみつく。その温もりにほわほわが止まらない。
「ルシア、お腹がすいたのか。」
頭を優しく撫でられて、啄むようなキスされる。
アズランの温かい魔力が少しづつ飢えた身体を満たすように流れ込んできた。
身体は満たされるのに淫魔の本能がもっともっととアズランを求めて熱くなる。最近なんだか身体がおかしいのだ。
狡いよ、アズランはいつだってこんなに優しくて俺の全てを満たしてくれるのに、俺の全てなのに。
俺はアズランの全てではないのだ。アズランはもう別の誰かのものなのだ。
俺はいつだってアズランの側にいたくて必死に努力してきたのに、もうすぐ他の誰かがアズランの最も近い場所を奪っていく。
アズランとふたりきりの執務室。ここだけは死守したい。仕事を頑張ってこの場所だけは守り抜きたい。
俺はアズランから受け取るばかりで何も与えられていない。
アズラン無しでは生命を維持することすら出来ない最弱淫魔なのだから仕方ないのだ、と言い聞かせる。
魔王の横には自立した強い魔族こそがふさわしい。
涙が零れそうになってアズランにぎゅうっと、しがみついた。アズランが安心させるように俺の身体をしっかり抱き締めて長い指先ですべらかな淡い髪を梳く。
もっと欲しい。アズランに強請るように舌を絡め、魔力をすすった。身体を優しく満たしていく高純度の魔力に酔ってゆく。
今、この時だけはアズランは自分のもの。永遠にこの時が続けば良いのに……。
この夜、ルシアはアズランに結婚の話を聞くことが出来なかった。
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