ファーメリーズ・ギフト

幹谷セイ

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16.恐ろしい寝言

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 コールは大きな葉っぱにくるまって、すよすよと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
 
 その顔はとても幸せそうで、とてもじゃないが腹に一物持っているとは、到底思えなかった。
 
 こんな無防備で、無警戒なジョーカーが居るはずがない。
 
 そう、そうに決まっている。コールはジョーカーなんかじゃない。れっきとした人間だ。
 
「コール、朝だよ……」
 
 僕はコールを起こそうと、彼女の肩に触れようとした。
 
「――人里では、常に人の姿を維持すること」
 
 すると、コールが呟いた。寝言だった。
 
 僕の手は止まり、金縛りにかかったように動けなくなった。
 
「――人前では必ず人の子を演じること。決して、自分の正体を、誰にも悟られてはいけない。狩られてしまうから」
 
 こめかみを、汗が伝う。
 
「クラブ村のディースを探せ。探して、探して、見つけて、そして――」
 
 自分の顔から、血の気が引いていくのが分かった。
 
 人が見る夢は決して幻想や空想ではなく、心の奥底に秘めた強い思いであったり、無意識に思い出している過去の残像であるという。
 
 僕が強烈な言葉を心の奥底で真に受けて、あんな夢を見てしまったように、コールも失われた記憶の断片を、夢の中で思い出していたのかもしれない。
 
 だが、そうだとしても。
 
 何を言っているんだ、この子は?
 
 理解ができなかった訳ではない。
 
 でも、寝言とはいえ、そんなことを言うなんて、まるで、まるで――。
 
「……こ、コール……」
 
 たまらず、僕は名前を呼んだ。口の中が乾燥して、喉が張り付いていた。
 
「うん……? あ、ディースたん」
 
 コールは目を覚ました。
 
 昨日と変わらず、ボーッとした表情だった。
 
「おはようございめす」
 
「お、おはよう」
 
 夢で見たような、変化は見られない。
 
 そのことが、僕をいくらか安堵させてくれた。
 
「コール、何の夢を見てたんだ?」
 
「ゆめ……? 見てたでしか?」
 
「いや、覚えてないならいいけど」
 
 コールはまだ、記憶を失ったままだ。
 
 だが、その記憶が蘇れば。
 
 僕の夢は、正夢になってしまうのか?
 
 さっきの寝言は、ジョーカーがコールに与えた命令だとでもいうのか。
 
 僕は必死で、彼女を疑うまいと自分を押さえつけていたけれど。
 
 今回ばかりは、もう無理だと思った。
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