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4. 流美と清華は下着が気になります

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「ふふふ!」
流美るみ清華さやかがエスカレーターを下りてくる。
流美はよほど楽しいことがあったのか、笑みがこらえきれないようだ。
「・・・」
その様子をうれしそうに眺める清華。
やがて、エスカレーターが2階に着こうとした時、
「あっ...」
清華が何かに気を取られる。
「どうしたの?」
流美が聞くと、
「あ、あのお店...」
清華が恥ずかしそうに一つの店を目で指し示した。
「あっ...」
流美も顔が赤くなる。
「や、やっぱりいいかな...」
清華は無視して1階へのエスカレーターに乗り換えようとしたが、
「見てみたいんでしょ!私もこういうお店は初めてだから入ってみたい!...一緒に...どうかな...」
流美はそう言って清華を誘った。
そこはカラフルな下着が並んでいるランジェリーショップだった。


二人で入ってみる。
「わぁ~~~!可愛い!!」
流美の目が輝く。
「そうね!...私も、そろそろこんなのが欲しいなって...」
清華は恥ずかしそうに頬を染めながら言った。
「うん!実は私もなの!こんなのつけて清華ちゃんに見てもらいたいなぁ...」
流美がうっとりしている。
「えっ?!」
清華の驚いた顔に、自分がふと漏らした言葉の意味を悟った流美は、慌てて説明を試みた。
「あ、あの...えっと...着替え!そう体育の着替えで下着見られちゃうでしょ!どうせなら可愛いの見て欲しいと思って!」
(私ったら何言ってるの~~~!全然言い訳になってないよ~~!)
流美が恐る恐る清華の反応を待っていると、
「流美も?...実は...私もなの...」
清華が顔を赤くしながらそう言った。
「えっ!あっ...清華ちゃんも?...でも清華ちゃんはどんな下着でも可愛い...って私、何言ってるの!今日の私は少し変なの!気にしないで!」
流美は大慌てで言い訳している。しかし、清華は気にしていない様子で、
「そうなの?うれしい!...じゃあ...可愛い下着つけたら...もっと喜んでもらえるね...」
そう言って、いっそう顔を赤くした。
「あ、あの...」
流美が返事に困っていると、
「流美はどんな下着が好きなの?...教えて...欲しいな...」
清華は上目遣いでそう言ってきた。
(ダ、ダメ!!そんな顔でそんなこと言われると...)
流美はもう何が何だか分からなくなり、無意識のうちに一つの下着を指差していた。
「さ、清華ちゃんだったらこういうのが似合うんじゃないかって思うの...」
(わ、私ったらなんてことを!!)
流美は後悔するが、清華はその下着を興味深そうに見ていた。
「流美はこういうのが好きなんだ...確かにシンプルなデザインのようでどこかキュートな印象を感じる...なぜかしら?」
そう言うと、細かな所までチェックしだす。
「近くで見ると結構、細かい装飾がしてあるのね!透け感のあるフリルも素敵...だから可愛く感じるのね!」
「ど、どうかな...大人っぽい清華ちゃんに似合うと思うんだけど...」
流美は少し心配そうな表情で見ている。
「うん!気に入ったわ!お値段はと...」
清華は一つ頷くと値札を確認しだすが、
「わぁ~、結構するわね...高校生にはちょっと...」
そう言って、残念そうな顔をする。
「あっ、ホントだ...ゴメンね!その気にさせちゃって...」
流美が謝るが、清華はにっこり笑って言った。
「ううん!でも素敵な下着だからチャンスがあったら買いたいな!...そしたら流美にも...見てもらおうかな...」
「えっ!今、なんて...」
清華の言葉に流美が聞き返すが、
「あっ!あっちにプチプラのコーナーがあるわ!行ってみましょ!!」
誤魔化すようにそう言うと、歩いていってしまった。
「待ってよ~~~!!」
急いで流美が追いかける。

「わぁ~~~!可愛いのがいっぱい!値段もこれなら買えそうだし...一つ買ってみようかな!」
清華がラインナップを見ながら声を上げる。
「そうだね!こんな下着つけたら気分も上がりそう!私も買う!」
二人は下着を買うことに決めたようだ。すると、
「あらあら、可愛いお嬢さんたちですね!高校生ですか?」
そう言って、店員が声をかけてきた。
「は、はい...でもあんまりお小遣いがなくて...ここのしか買えないかなって...」
流美が恥ずかしそうに答える。すると店員は、
「気にすることないですよ!ここはそういうお客様の為のコーナーですから!高校生でも買える値段で出来るだけいいものを提供しています!」
そう胸を張って言った。ただ、残念ながら張る胸はないようだったが...
「どれも可愛いですね!今まで、こういうお店で買ったことがなくて...」
清華が言うと、
「ご心配いりません!分からないことがあったらなんでも聞いて下さい!」
そう言って、少し距離を取った場所に立った。選ぶ時間をくれているようだった。
それを見た流美は下着選びを再開する。
「ねぇ!これなんて可愛くない?!きっと清華ちゃんに似合うよ!」
そう言って、一つのブラショーセットを手に取った。
白をベースにピンクの花柄模様の入った可愛らしいデザインだ。
「ホントね!それに...流美が着て欲しいのなら...」
清華がその下着を覗き込むと、店員が商品の説明を始めた。
「さすがお目が高い!それはバストをしっかりと支えてくれる構造で、そちらのお客様のような羨まスタイルの方には持って来いです!」
「へぇ~~~!そうなんだ~~!」
流美が相槌を打つと、
「今は若いので支える必要がないでしょうが、年齢と共に...とこれは余計なことを!ワタシ、おしゃべりでいけませんね!」
店員は調子に乗ったのか話を続けたが、『余計なことを言った』とばかりに説明をやめた。しかし、
「そ、それは大事かも!!清華ちゃんの国宝級のスタイルは永遠に維持しないと!」
流美は真面目な顔で頷いている。
「も、もう!流美ったら大袈裟なんだから...」
清華はその言葉に顔を赤く染めていた。
「しかし、本当に羨ましい...ワタシなどはいかに無いものを寄せて上げるかしか考えたことがありません!その必要が一ミリもないとは...」
そんな清華を眺める店員は本当に羨ましそうだ。
「こら~~~!!清華ちゃんのお胸を見るな~~~!!これを見ていいのは限られた人だけなんだよ!」
流美が店員に注意すると、
「限られた...もしやお二人は恋人同士で?」
店員はポンと手を叩いて納得したように言った。
「こ、こ、こ、恋人?!わ、私なんかがそんな...」
赤くなり口ごもる流美。すると店員は、
「はて?ではお客様も見てはいけないのでは...」
と流美に言う。すると流美は、
「わ、わ、私はいいの!!だって私は清華ちゃんの幼馴染なんだから!ねっ!」
何とか理由を見つけ、清華に同意を求めると、
「う、うん...流美ならいくらでも...でも人前でそういう事は...」
そう言って恥ずかしそうにしている。それを聞いた流美は、
「ゴ、ゴメン!とにかく清華ちゃんのお胸に限らず全ては私の許可がないと見ちゃいけないの!」
と無茶苦茶なことを言っている。
「しかし、それでは最適な下着をお薦めすることが出来ませんし、試着の際も...」
店員の言葉に、
「し、試着?!...そ、そんなのするんだ...」
初耳な様子の流美。すると、
「はい。当店では試着をお勧めしております!」
と店員が言う。
「そ、それって必要なの?!」
流美が真剣に聞いている。
「はい。ブラジャーは自分に合ったサイズを着用することが大事です!大切なバストを守る為、また毎日、快適に過ごしていただく為にも、実際に着用してからお買い上げになることをお勧めします!」
店員は真面目な顔で説明をした。
(試着...それって清華ちゃんの下着姿を...でも店員のお姉さんにも見られちゃう!)
流美はどうするべきか迷っているようだ。すると、
「試着しましょうよ!流美!...こちらのお姉さんはプロでお仕事をしてるわけだし...それに...る、流美にも見て欲しいな!...私の...下着姿...」
清華は耳まで真っ赤にしてそう言った。
「さ、清華ちゃんの...」
同じく頬を染めながら俯いている流美。そんな二人を見て、
(これは本物ですね...ワタシは空気にならなくては!)
そんな事を考えている店員だった。
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