上 下
16 / 16

16. 二人の未来

しおりを挟む
「将来かぁ...実は...ケーキ屋さんやりたいなって...」
流美るみが恥ずかしそうに答えると、
「あら、いいじゃない!」
清華さやかも賛成の声を上げる。
「でも...なれるかなぁ...」
自信なさげな流美に、
「流美ならきっとなれるわ!...それに...私も手伝ってあげる!」
清華がそう言って背中を押す。
「えっ?でも清華ちゃん、大学に進学するんじゃ...」
流美が意外そうな顔をするが、
「それじゃ流美といつも一緒にいれないでしょ!」
清華は当たり前のように言い放った。
「いつも...一緒?」
流美が頬を染めると、
「ええ!一緒に調理師学校に行って、パティシエを目指しましょ!そしてゆくゆくは私たちのお店を...」
清華が将来のプランを立て出す。
「け、結婚は?」
流美の問いに、
「高校出たらすぐに結婚しましょ!早い方がいいわ!...流美が良かったらだけど...」
清華はそう答えると心配そうに流美の顔色を窺う。
「うん!私も早い方がいい!!...じゃあ、高校出たら...一緒に...」
流美が頬を染めると、
「ええ!一緒に住みましょ!...一緒に起きて、一緒にご飯食べて、一緒に学校行って、一緒に...お風呂に入って...一緒に...寝るの...」
清華はどんどんと顔を赤らめながら言う。
「お風呂も?!」
流美が驚きの声を上げると、
「流美は...イヤ?」
清華がまた不安そうな顔をする。
「全然、イヤじゃないよ!...でも...まさかお互いの体を洗い合ったりとか...しないよね?」
流美が冗談めかして答えると、
「流美は...洗って欲しくないんだ...私は...流美を綺麗にしてあげたかったな...」
清華は落ち込んでしまった。
「あ、洗って欲しい!!清華ちゃんに全部を綺麗にして欲しいの!...でも清華ちゃんは...」
流美が慌ててそう言うと、
「うん...流美が...綺麗にして...胸も...あそこも...」
清華は顔を真っ赤にしながら流美にお願いした。
それを聞いて同じく頬を染める流美だったが、一呼吸置くと、躊躇いがちに問いかける。
「そして...一緒に...寝るんだよね...」
「うん...気持ちよく...させてね...」
その問いかけに清華はか細い声で答える。
「も、もちろん!毎晩、気持ちよくさせてあげる!でも...上手くできるかな...」
流美が心配そうに言うと、
「だから...今のうちから...練習しときましょ...」
清華はまた頬を染めると消え入りそうな声で答えた。
「う、うん...」
流美も赤くなると二人は恥ずかしげに俯き合う。
しばらく目を合わせられなかったが、思いついたように流美が口にした。

「は、は、初めてを捧げるのは...やっぱり...結婚してからかな?」
そう言ってしまったものの自分の言葉の内容に流美は後悔する。
(ちょ、ちょっとまずかったかな...こんな話...)
「あの!」
慌てて打ち消そうとするが、
「私は...いつでも...いいよ...」
清華が頬を染めながら答えた。
「ホ、ホント?!」
その言葉に思わずうれしそうな声を出してしまう流美だったが、
「でも...」
急に神妙な顔になった。
「どうしたの?やっぱり怖い?」
清華がその様子を見て尋ねると、
「ううん!清華ちゃんならどんなに痛くても大丈夫!」
流美はまた言った後に意味に気づいて赤くなってしまう。
そんな流美を微笑ましげに見ながら清華は言った。
「優しくするから大丈夫よ...流美は...好きにしていいよ!私は大丈夫だから!」
それを聞いた流美は大真面目に答える。
「そんな!清華ちゃんに痛い思いなんてさせられない!私も優しくする!!...でも...」
「でも?」
が、また言った『でも』に清華がいぶかしげな顔をすると、
「お、女の子同士で...どうやって...するのかな?」
流美がそう聞いてきた。
「あっ!」
清華もそれは考えていなかったようだ。
しばらくの間、考え込む。そして出した答えは、
「やっぱりこういうのは大人の女性に聞かなきゃ!...今度、下着屋さんに行った時にお姉さんに聞きましょ!」
「そうだね!」
流美も同意してお互いに微笑み合うのだった。

☆彡彡彡

そのころ、駅前のショッピングモールのランジェリーショップでは、
「はっくしょん!」
下着屋のお姉さんがくしゃみをしていた。
「どうしたんスか?獅世葉しぜは先輩!」
隣で荷物を整理していた後輩らしき店員が聞いてくる。
どうやらあのお姉さんの名字は『獅世葉』というらしい。
「なにか悪い予感が!...まさか!...あの変態カップルが!!」
そう言って青い顔をする。
「はは!先輩に『変態』って言われるなんて相当ッスよね!」
結構、失礼なことを言って笑っている後輩だったが、お姉さんはそれどころではないようだった。
「し、しかしこの前、下着を買いに来たばかり!高校生のお小遣いでは当分、来れないはず!!」
何とか悪い予感を吹き飛ばそうとする。
「へぇ!高校生なんスね!ウチも見てみたいっス!」
楽しそうな後輩に、
「あなたはあれを見てないからそう言えるのです!見たら常識というものが信じられなくなりますよ!」
そう言って、忠告をする。
「はは!ウケる!...先輩が常識を語るなんて!」
また後輩が失礼なことを言っていたが、
「大丈夫...大丈夫...」
それどころではないお姉さんはひたすら自分に暗示をかけているのだった。

ミミミ☆

話は戻り、裸で抱き合いながら将来について語り合っている流美と清華。
「ねぇ!流美は子供は何人欲しい?」
今度は赤ちゃんの話になったらしかった。
「う~~~~~ん...女の子と男の子と一人ずつがいいかな!」
そう言う流美に、
「いいわね!...じゃあ、私と流美で一人ずつ産みましょうか?」
清華がそう提案する。
「うん!」
笑顔で答える流美。
それを見て自分も笑顔になる清華だったが、ふとあることに気づく。
「でも、女同士でどうやって子供を作るのかしら?」
「う~~~~~ん...」
また二人で悩み出す。
「やっぱり、これもお姉さんに聞こうよ!きっと教えてくれるよ!この前もアドバイスもらったんだ!」
流美が名案とばかりに言うと、
「なんのアドバイスをもらったの?」
清華が違うところに食いついてくる。
「そ、そ、それは...」
まさか『清華の下着のにおいを嗅ぐ方法を教えてもらった』とは言えない流美は、
「な、なんでもいいじゃない!それより早くお小遣いの日にならないかな!新しい下着、楽しみ!!」
そう言って話を変えた。
「そうね!また二人でお揃いの買いましょ!」
笑顔で同意する清華。
二人の時間は温かく過ぎていった。

☆彡彡彡

またしても駅前のランジェリーショップ。
「はっくしょん!はっくしょん!」
下着屋のお姉さんが2回、くしゃみをした。
「風邪じゃないんスか?先輩!」
失礼な後輩がそう聞いてくる。
「違います!これはやはりあの二人が来るサイン!...ワタシ、しばらく有休を...」
お姉さんの顔は血の気が失せていた。
(あの二人のことです!今度は女の子同士で『初めてを捧げたい』とか、『子供を作りたい』とか言うに決まってます!そんなの相手しとれるか~~~~!!)
二人に触発されたのか、的確な推理をしているお姉さん。
その様子を見ていた後輩は、
「ちょっ!ヤバいっスよ先輩の顔!!休んだ方がいいんじゃ...」
さすがに心配になったようだ。そう言ってくる。
「やはりあなたもそう思いますか?!では有休を...」
その言葉にそう答えたお姉さんだったが、
「...ってあんただけじゃ頼りないでしょ!」
後輩の顔を見ると、ハッとしたように声を上げる。
「大丈夫っスよ!ほら!荷物、整理し終わりましたよ!」
自信満々の後輩だったが、
「どれどれ...あ~~~~!全然違う!!これじゃ、お客様に間違ったサイズをお出ししてしまいます!...やっぱり休めない!どうしよう!」
お姉さんの気苦労はなくならないのだった。

ミミミ☆

そして流美の部屋では、
「もう帰らなきゃ...」
清華が残念そうな声を出していた。
「うん...」
流美の声も沈んでいる。
「こ、今度の勉強会はいつにする?」
そんな流美に清華が頬を染めると問いかけてきた。
「えっ?!勉強?!」
流美がイヤそうな声を出すと、
「ごめんなさい!!...私とエッチなことなんて...したくないよね...」
清華は悲しそうに顔を覆ってしまう。
そんな清華の様子に、流美はハッとする。
なんの『勉強』をするか気づいたのだ。
「ご、誤解しないで!!私、学校の勉強かと思って...」
慌てて釈明する流美。
「もう!」
清華はニブい流美に頬を膨らます。
「明日とかじゃ...早すぎるかな...」
控えめにそう言う流美に、
「いいわよ!...流美の気持ちいいところ...たくさん教えてね...」
顔を真っ赤にする清華。
「うん...清華ちゃんも...ねっ!」
二人は赤い顔で微笑み合うと、もう一度、強く抱き合うのだった。


めでたし!めでたし!
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...