ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 22. 王立研究所にて

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「こ、ここが...」
翌日、ガーネットは街の中心にある、この街で一番、大きな建物の前で立ち尽くしていた。

ここは国中の優秀な研究者が集まって、魔法だけでなく錬金術など、様々な研究をしている『王立研究所』。
大賢者サンストーンは、今はここに落ち着いているということだった。

「私なんかに会ってくれるわけ...で、でも他に当てもないし...」
ガーネットは緊張していた。
心臓がバクバク音を立てているのが、自分でも分かる。
できれば今すぐ、逃げだしたかった。

「姫様!私に勇気をください!」
ガーネットは目を閉じ、胸に手を当てる。
「ミャ~~~!」
マリンが足に寄り添い、体をすりつけてきた。
「・・・」
少し、心が落ち着いたガーネット。

「ありがと!マリン!...行くね!」
ガーネットは大きな扉を開け、中へと入っていった。


「うわぁ!広い!...ど、どこに行けばいいのかな?」
ガーネットは入って早々、戸惑ってしまう。

入口は大きなフロアになっており、通路や扉がいくつも見えた。
どこに行けばサンストーンに会えるのか、見当もつかない。すると、

「何か御用ですか?」
ガーネットに穏やかな女性の声がかけられた。
「えっ?」
見ると、フロアの隅にカウンターがあり、女性が一人、座っていた。
どうやら、受付のようだ。

「あ、あの!!私、どうしても大賢者様にお会いしたくて!!」
ガーネットは緊張のあまり、大声を上げてしまった。

<したくて...たくて...たくて...たくて...>
残響が建物に響く。

「...サンストーン様に?...お名前をうかがっても?」
一瞬、眉をひそめた受付嬢だったが、取り繕うと名前を聞いてくる。
しかし、『どうやって帰ってもらおうか』と考えているのが口調から分かる。
招かれざる客のようだった。

(うう...やっぱり、無理かも!)
不安な気持ちを隠しつつ、ガーネットは自己紹介をする。
「私は『ガーネット』と申します。その...とある方のメイドをしておりまして...」
ここで姫様の名前を出すわけにはいかない。
ガーネットは怪しまれると思いながらも、そう答えるしかなかった。すると、
「『とある方』と申されましても...お仕えしている主人のお名前とご用件をお伝えいただきませんと...」
受付嬢が予想通りの反応を見せた。
「そ、それは...」
ガーネットが言葉に詰まっていると、
「サンストーン様はお忙しいお方。申し訳ありませんが、お時間をとっていただくには、それなりの身分の方で、よほどの事情がございませんと...」
受付嬢がお決まりの言葉で、やんわりと断ってきた。
(ど、どうしよう?ここでなんとかしないと『奇跡の雫』なんて永遠に手に入らない!!)
ガーネットが必死で理由を考えていると、

「ミャ~~~~~~!!」
マリンがいきなり、大声で鳴いた。
「ちょっとマリン!」
慌てて叱るガーネット。
「なんですかその猫は!!...しつけのなっていないペットをお連れの方は今すぐご退出を...」
受付嬢がここぞとばかりに、ガーネットたちを追い返そうとした時、

「ゴメン、ゴメン!遅くなっちゃった!...その子たちはサンストーンの友達。『連れてこい』って!」

通路の奥から現れたのは、可愛い女の子...なのだが、その体はとても小さい。10cmくらいだろうか?
そして、背中には蝶のような羽が生えており、空を飛んでいる。
細い体で、白いレオタードのような衣装をまとっていた。

「妖精?!なんでここに?!」
ガーネットが驚いていると、

「アリー!それは本当なの?」
妖精の言葉を聞いた受付嬢の顔色が変わった。
「本当だよ!」
受付嬢に一言、答えたアリーは、ガーネットに向き直ると、
「あたしが案内するからついてきて!」
改めて、誘った。
「えっ?えっ?なんで妖精が?!」
まだ戸惑っているガーネットに対し、アリーは説明を始めた。
「あたしはアリー!こう見えて、千年以上生きてるんだよ!だけど、数年前にサンストーンにやられて、『倒されるかな?』って思ったんだけど、突然、『僕に従え』って言われたの!」
「サンストーン様は魔物を服従させる術式を使うことができます!ただ、そのためにはいろいろな条件があるようなのですが、私も詳しくは知りません」
そして、受付嬢がそれに補足をする。
「その場しのぎで『従う』って言っちゃったら、命令に逆らえなくなって...仕方なく、こんな従者みたいな仕事をしてるの!」
アリーはそう言うが、あまり悲愴感は感じられない。
なんだかんだ言って、楽しんでいるのかもしれない。
妖精の寿命からしたら、人間などあっという間に死んでしまう。
暇つぶしくらいの感覚なのだろう。
「そうなんだ...」
ガーネットがようやく納得すると、

「こっちだよ!ついてきて!」
アリーは振り返ると、やってきた通路に向かって飛んでいく。
「待って!」
慌てて、追いかけるガーネット。

「あの...失礼いたしました...」
そのガーネットに向かい、気まずそうに謝る受付嬢がいた。
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