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Maid 33. カリナンの街
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「そろそろ、カリナンに着く頃ね!」
姫様がアリーに話しかけると、
「そうだね!...いつものお願い!」
アリーが姫様に何かを頼む。
「ス~~~~...ス~~~~...」
ちなみに今は早朝、ガーネットはまだ寝ている。
ここ数日、ガーネットが起きる前の日課があった。
「魔力探知!」
姫様が目を閉じ、周りの気配に神経を集中する。そして、
「マジックアロー!」
姫様の前方に、直径3、40cmはあろうかという、数十もの巨大な光の球が現れ、四方八方へと飛んでいく。
余談だが、普通のマジックアローの球の大きさは、2、3cmだ。
初級の魔法で相手を射貫くような使い方をする。
攻撃力は正直言って、期待できない。
しかし、姫様はこれを愛用していた。
なぜかというと、この魔法は弾道の操作が可能で、相手を追尾したり、上級者は意のままに操ることができる。
命中率が非常に高く、しかも無属性のため、属性耐性の影響を受けない、非常に使い勝手の良い魔法だからだ。
不足している攻撃力は、姫様ほどの膨大な魔力があれば、十分、カバーできる。
姫様のそれは魔法の矢というより、魔法の砲弾と言った方が適切だろう。
「ギャ~~~~!!」
「グアァァ~~~!!」
あちこちから魔物の断末魔の声。
ここ、カリナンは国の南の端にあり、辺境中の辺境だ。
出てくる魔物も当然、強い。
アリー一人でも勝てないことはないが、群れだと大変なので、事前にある程度、始末してもらっていた。
「これでこの辺りの魔物は全滅したと思うけど...」
姫様は平然と口にするが、
「...何度見てもすごいね!カリナンの迷宮でも、朝早くにダンジョン内の魔物、全部、倒しちゃったら?」
アリーが称賛なのか呆れているのか分からない口調で提案する。
「あっ!それいいかも!!」
「...冗談だったんだけど...」
名案とばかりに微笑む姫様に、ひきつった顔で答えるアリー。
「んん...おはよう...」
<ポンッ!>
その気配で目覚めたガーネット。
姫様は大慌てで猫に変身する。
「今、姫様の幻が見えたような...」
ガーネットがつぶやくが、
「き、気のせいじゃない?」
アリーはぎこちなく笑いかける。
「そうだよね...でも後、3つ!!7つ揃えたら姫様のもとに...」
気合を入れているガーネットに、
「ミャ~~~~!!」
マリンはうれしそうに応えるのだった。
☆彡彡彡
「あれ?また、魔石...」
ガーネットが道端の黒い鉱石に気付く。
最近、よくあることだ。
「もらっちゃいなよ!お金になるし、冒険者ランクも上がるでしょ!」
アリーが勧めると、
「そうだね!きっと他の人が倒したものだろうけど、このままじゃもったいないよね!」
ガーネットが魔石を拾う。
「でも、もうパンパン!」
ガーネットが担いでいる布袋は魔石でいっぱいになっていた。
「もうすぐ、カリナンだから、そこで売っちゃお!」
アリーの言葉に、
「うん!」
微笑んだガーネットは、遠くにぼんやりと見える街に向けて歩き始めた。
☆彡彡彡
<ガヤガヤ!>
カリナンの街はにぎわっていた。
功績を求める冒険者の他に、この地方でしか取れない貴重な作物や鉱物を目当てに、商人もたくさんいる。
「人がいっぱいだね!...ギルドはと...」
ガーネットはその様子に目を輝かせていたが、ふとつぶやくと、通りすがりの人に尋ねる。
「あの...冒険者ギルドはどこですか?」
すると、
「ああ!この道をまっすぐ進んだところが広場になっている。円形の広場をぐるりと回っていくと、ギルドの看板が見えてくるはずさ!」
「ありがとうございます!」
ガーネットは礼を言うと、聞いた通りに、道を歩いていった。
☆彡彡彡
「ここだね!」
冒険者ギルドの看板を見つけたガーネットが扉を開ける。
「最近、どうだ?」
「聞いてくれよ!この間、サラマンダーを倒したんだ!」
「やるじゃねぇか!」
中は屈強な冒険者であふれていた。
おそらく、皆、銀級以上だろう。
<コツコツ...>
ガーネットがその雰囲気に圧倒されながらも、受付に歩いていくと、
「なんだなんだ?」
「どこかの貴族のメイドか?こんなとこになんの用だ?」
相変わらず、周りから奇異の目で見られる。
ちなみにアリーは見つかると面倒なので、ポーチの中に隠れている。
「あの!魔石を売りたいんですけど!」
<ドン!>
ガーネットは受付に着くと、魔石の入った袋をカウンターに置いた。
「これ、全てあなたが?」
受付嬢が驚いている。
「はい!アーガイルからの道中で倒した魔物です...あっ!これ冒険者証!」
ガーネットが冒険者証を見せると、
「あなた、まだ銅級じゃない!!それでこれだけの魔物を?」
ミール同様、不審な目で見られる。すると、
「俺が実力を見てやるよ!」
大きな体の戦士がやってきて、いきなり、ガーネットにつかみかかった。
「シャ~~~~~!!」
マリンが威嚇するがお構いなしだ。
「キャッ!」
ガーネットが思わず、目を閉じたその時、
<ブワッ!!>
局地的な竜巻が巻き起こり、戦士に襲いかかる。
「うわ~~~~~!!」
<ドシ~~~~ン!!>
戦士は回転しながら吹き飛ばされ、床に転がってしまった。
「アリー!!」
ガーネットが腰のポーチを見ると、アリーがウインクをしていた。
見物していた冒険者たちは、
「おお~~~~!!見かけによらず強いんだな!!」
「今の魔法、見た?!ゲンブの巨体を紙のように吹き飛ばしたわよ!!」
「すげ~~~~!!ここにいる誰も敵わないんじゃないか?!」
すっかり、ガーネットを見る目が変わる。更に、
「おお~~~~!!なかなか活きのいい新人が出てきたじゃねぇか!!それ、買い取ってやれ!!」
「マスター!!」
奥から、ギルドマスターが出てきて言った。
それを聞いた受付嬢は、
「では、買い取らせていただきます!それと...銀級クラスの魔石もかなりありますね!ガーネットさんは銀級に昇格です!!」
途端に扱いが良くなり、ガーネットの冒険者証を銀色のものに取り替えた。
「ミャ~~~~!!」
マリンが祝福するように声を上げる。
「えへへ...」
ガーネットは、晴れて銀級ランクに昇格したのだった。
姫様がアリーに話しかけると、
「そうだね!...いつものお願い!」
アリーが姫様に何かを頼む。
「ス~~~~...ス~~~~...」
ちなみに今は早朝、ガーネットはまだ寝ている。
ここ数日、ガーネットが起きる前の日課があった。
「魔力探知!」
姫様が目を閉じ、周りの気配に神経を集中する。そして、
「マジックアロー!」
姫様の前方に、直径3、40cmはあろうかという、数十もの巨大な光の球が現れ、四方八方へと飛んでいく。
余談だが、普通のマジックアローの球の大きさは、2、3cmだ。
初級の魔法で相手を射貫くような使い方をする。
攻撃力は正直言って、期待できない。
しかし、姫様はこれを愛用していた。
なぜかというと、この魔法は弾道の操作が可能で、相手を追尾したり、上級者は意のままに操ることができる。
命中率が非常に高く、しかも無属性のため、属性耐性の影響を受けない、非常に使い勝手の良い魔法だからだ。
不足している攻撃力は、姫様ほどの膨大な魔力があれば、十分、カバーできる。
姫様のそれは魔法の矢というより、魔法の砲弾と言った方が適切だろう。
「ギャ~~~~!!」
「グアァァ~~~!!」
あちこちから魔物の断末魔の声。
ここ、カリナンは国の南の端にあり、辺境中の辺境だ。
出てくる魔物も当然、強い。
アリー一人でも勝てないことはないが、群れだと大変なので、事前にある程度、始末してもらっていた。
「これでこの辺りの魔物は全滅したと思うけど...」
姫様は平然と口にするが、
「...何度見てもすごいね!カリナンの迷宮でも、朝早くにダンジョン内の魔物、全部、倒しちゃったら?」
アリーが称賛なのか呆れているのか分からない口調で提案する。
「あっ!それいいかも!!」
「...冗談だったんだけど...」
名案とばかりに微笑む姫様に、ひきつった顔で答えるアリー。
「んん...おはよう...」
<ポンッ!>
その気配で目覚めたガーネット。
姫様は大慌てで猫に変身する。
「今、姫様の幻が見えたような...」
ガーネットがつぶやくが、
「き、気のせいじゃない?」
アリーはぎこちなく笑いかける。
「そうだよね...でも後、3つ!!7つ揃えたら姫様のもとに...」
気合を入れているガーネットに、
「ミャ~~~~!!」
マリンはうれしそうに応えるのだった。
☆彡彡彡
「あれ?また、魔石...」
ガーネットが道端の黒い鉱石に気付く。
最近、よくあることだ。
「もらっちゃいなよ!お金になるし、冒険者ランクも上がるでしょ!」
アリーが勧めると、
「そうだね!きっと他の人が倒したものだろうけど、このままじゃもったいないよね!」
ガーネットが魔石を拾う。
「でも、もうパンパン!」
ガーネットが担いでいる布袋は魔石でいっぱいになっていた。
「もうすぐ、カリナンだから、そこで売っちゃお!」
アリーの言葉に、
「うん!」
微笑んだガーネットは、遠くにぼんやりと見える街に向けて歩き始めた。
☆彡彡彡
<ガヤガヤ!>
カリナンの街はにぎわっていた。
功績を求める冒険者の他に、この地方でしか取れない貴重な作物や鉱物を目当てに、商人もたくさんいる。
「人がいっぱいだね!...ギルドはと...」
ガーネットはその様子に目を輝かせていたが、ふとつぶやくと、通りすがりの人に尋ねる。
「あの...冒険者ギルドはどこですか?」
すると、
「ああ!この道をまっすぐ進んだところが広場になっている。円形の広場をぐるりと回っていくと、ギルドの看板が見えてくるはずさ!」
「ありがとうございます!」
ガーネットは礼を言うと、聞いた通りに、道を歩いていった。
☆彡彡彡
「ここだね!」
冒険者ギルドの看板を見つけたガーネットが扉を開ける。
「最近、どうだ?」
「聞いてくれよ!この間、サラマンダーを倒したんだ!」
「やるじゃねぇか!」
中は屈強な冒険者であふれていた。
おそらく、皆、銀級以上だろう。
<コツコツ...>
ガーネットがその雰囲気に圧倒されながらも、受付に歩いていくと、
「なんだなんだ?」
「どこかの貴族のメイドか?こんなとこになんの用だ?」
相変わらず、周りから奇異の目で見られる。
ちなみにアリーは見つかると面倒なので、ポーチの中に隠れている。
「あの!魔石を売りたいんですけど!」
<ドン!>
ガーネットは受付に着くと、魔石の入った袋をカウンターに置いた。
「これ、全てあなたが?」
受付嬢が驚いている。
「はい!アーガイルからの道中で倒した魔物です...あっ!これ冒険者証!」
ガーネットが冒険者証を見せると、
「あなた、まだ銅級じゃない!!それでこれだけの魔物を?」
ミール同様、不審な目で見られる。すると、
「俺が実力を見てやるよ!」
大きな体の戦士がやってきて、いきなり、ガーネットにつかみかかった。
「シャ~~~~~!!」
マリンが威嚇するがお構いなしだ。
「キャッ!」
ガーネットが思わず、目を閉じたその時、
<ブワッ!!>
局地的な竜巻が巻き起こり、戦士に襲いかかる。
「うわ~~~~~!!」
<ドシ~~~~ン!!>
戦士は回転しながら吹き飛ばされ、床に転がってしまった。
「アリー!!」
ガーネットが腰のポーチを見ると、アリーがウインクをしていた。
見物していた冒険者たちは、
「おお~~~~!!見かけによらず強いんだな!!」
「今の魔法、見た?!ゲンブの巨体を紙のように吹き飛ばしたわよ!!」
「すげ~~~~!!ここにいる誰も敵わないんじゃないか?!」
すっかり、ガーネットを見る目が変わる。更に、
「おお~~~~!!なかなか活きのいい新人が出てきたじゃねぇか!!それ、買い取ってやれ!!」
「マスター!!」
奥から、ギルドマスターが出てきて言った。
それを聞いた受付嬢は、
「では、買い取らせていただきます!それと...銀級クラスの魔石もかなりありますね!ガーネットさんは銀級に昇格です!!」
途端に扱いが良くなり、ガーネットの冒険者証を銀色のものに取り替えた。
「ミャ~~~~!!」
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