ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 45. 絶望のアメジストたち

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その日の深夜、
「やってられるか!!」
宿を抜け出す3つの影。
「で、でも本当に大丈夫っスかね?...バレたら...」
パールはオドオドしているが、
「あんなの脅しに決まってるよ!!逃げちまえばこっちのもんさ!」
アメジストは楽観的だ。
「しかし、注意に越したことはないぞ!」
ヒスイの言葉に、
「分かってるさ!だからこうやって窓から...」
ロープを頼りに、宿の壁を下りていったアメジストは、スタッと地面に着地した。
続けて、やってくるパールとヒスイ。

「できるだけ、目立たないように...」
アメジストたちは、裏道を通って、慎重に街の門を目指すのだった。

そして、門へとたどり着く。
「やったっスね!」
「だが、気は抜けないぞ!門の外に待ち構えている可能性も...」
パールとヒスイの会話に、
「分かってるって!...よ~~~く辺りを確認して...」
アメジストが物陰を利用しながら、恐る恐る門を出る。そして、

「やった~~~!!」
「誰もいないっス!」
「うむ、賭けに勝ったな!」
街から離れた3人は、思わず、歓喜の声を上げた。その瞬間、

<ヒュン!ヒュン!ヒュン!>
3つの風切り音。
<ドカ~~~ン!ドカ~~~ン!ドカ~~~ン!>
光り輝く軌跡が3人の目の前に大きな穴を開けた。

「「「・・・」」」
一瞬、放心状態になったアメジストたちだったが、
<ガタガタガタ...>
それが何を意味するか理解すると、体が震えだす。
「ま、ま、まさか...」
「これって...」
「マジックアロー?」
「いや、でかすぎないか?」
「こんなことができるのは...」
「あの方だけ...」
そんなことを口走っていると、

<ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!...>
無数のマジックアローが飛んでくる。

「また!!」
「いや~~~~!!」
ヒスイとパールは叫んでいたが、
「いや、今度は小さい...」
アメジストが冷静に分析する。
極小の光の矢が、地面に次々に突き刺さる。
地面を穿った矢は、とある形を刻んでいた。

それを見た3人の顔から血の気が引く。
なぜなら、そこにはこの国の文字で、こう書いてあったからだ。

『今度は当てるわよ』と。

「「「お助け~~~~~!!」」」
アメジストたちは脱兎のごとく、街に戻るのだった。

☆彡彡彡

次の日の早朝。まだ、太陽が昇り切らぬ頃、
「起きなさ~~~~~い!!」
可愛らしい声が高級宿のとある一室に鳴り響いた。

「なんら?」
「う~~~~、飲みすぎで頭が痛いっス...」
「こんな時間に誰だ?!非常識な!!」
アメジストたちが渋い顔をしながら、目を覚ます。

「うっ!酒くさ!!」
その息に、顔を逸らしたのはアリー。
どうやら、3人に姫様の指示を伝えに来たようだ。

「あんたは...あのメイドと一緒にいた妖精!!...何しに来たんら?」
アメジストが酔った目でアリーを見る。
「あたしの名前はアリーよ!!もう!こんなにお酒、飲んじゃって!!これから出発なのに!!」
アリーは部屋の様子に呆れてしまう。

中はウイスキーやブランデーのボトルが散乱し、アメジストたちは床に転がって寝ていた。
ついさっきまで、やけ酒を飲んでいたらしい。

「はいはい。どうせ、あたいらは一生、姫様の奴隷なんだ!好きにしてほしいっス!」
パールが諦めたように口にすると、
「もう!やけになっちゃって!!...大丈夫だよ!終わったら解放してあげるから!」
アリーは困ったような顔をする。
「ホントか?最後には用済みで消されてしまうんじゃ...」
ヒスイが泣きそうな目で訴えてくるが、
「そんなことしないってば!!お姫様はちょっとの間だけ、ガーネットを守ってほしいだけなの!!それ以外は望んでないよ!」
(っていうか、こんなのといつまでも一緒にいたくないしね...)
アリーがそう言うと、
「ホントにホントなんだな?!っていうかなんであたしたちが...姫様だけで守れるだろ?!」
アメジストは念を押すと、そんなことを聞いてくる。
「ホントよ!あたしが保証してあげる!...それとお姫様だけど...ちょっといろいろあるのよ!お願い、力を貸して!!」
その言葉に、アリーは両手を合わせて頼んできた。
「「「・・・」」」
顔を見合わせているアメジストたち。

やがて、パールが口を開く。
「だったらなんで、あんな脅すようなことを...」
昨日から、姫様には脅迫されっぱなしだ。何度、肝を冷やしたことか。
「そうね!お姫様はガーネットのことになると性格が変わるから...でも、お姫様もただの恋する女の子なの!それは分かってあげて!」
すると、アリーは申し訳なさそうに答えた。
「まあ、その気持ちは分からないでも...」
ヒスイが話しだすと、
「「えっ?!」」
アメジストとパールが意外そうな顔でヒスイを見る。
「ヒスイ、あんた、そういう人が...」
「人は見かけによらないっスね!」
二人の言葉に、
「昔の話だ!!それに私だって...」
ヒスイが頬を染めた。

「...まあ、いいわ!」
本当にどうでもいいアリーは要件を述べる。
「もう少ししたら、ガーネットが街を出るから、先に行って、街道沿いの魔物を倒しておいてほしいの!」
すると、
「街道って、エカティへのか?...それくらいなら構わないが、連絡はどうすんのさ?あんたが行き来するのか?」
アメジストが聞いてくる。
「ちょっと待って!」
それに対し、アリーは小さな球のようなものを取り出すと、唱える。
解放リリース!」
<ポンッ!>
すると、2つのヘッドセットのようなものが現れた。一つは人間サイズ。一つは妖精サイズだ。
「おおっ!」
驚いているアメジストたちを横目に、アリーは大きい方を渡す。
「はい!これ使って!」
「なんだこれ?」
受け取りつつも、首を傾げるアメジスト。
「それを耳につけると、離れていても、お互い、会話できるの!ここを押しながらしゃべると、声が相手に届くんだよ!」
アリーは魔道具の使い方を教えてあげた。
「へぇ~~~~!便利なもんだね!」
アメジストが魔道具を観察しながら、感心していると、
「そりゃそうよ!サンストーン特製だもの!」
アリーは自慢げに胸を張る。
「えっ?!サンストーンってもしかして...」
「うん!みんなには『大賢者様』って呼ばれてる!」
パールの問いにアリーが答えると、
「この国の姫様に大賢者様まで...お前らって実はすごいんだな...」
目を見張っているヒスイ。
「へへ~~~ん!そうでしょ!だから安心してついてきていいよ!じゃあね!」
そう言うと、アリーは去っていくのだった。
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