ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 47. エカティへの道のり

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「あっ!アリー、そのアクセ、可愛いね!どこで買ったの?」
その後、ガーネットたちは、エカティへと向けて、街を出発していた。
耳にヘッドセットをつけているアリーに、声をかけるガーネット。

「あっ!ちょっとね!...それより...ガーネットは気付いてないの?」
アリーはチラリとマリンを見ると、意味ありげにガーネットに聞いてきた。
「ミャ~~~~!!」
マリンが『余計なことを言うな』とばかりに、声を上げるが、
「何を?」
ガーネットは首を傾げるだけだ。
「そう...起きなかったんだ...」
アリーは目を伏せると、つぶやいた。

「ミャ~~~~!!」
そんなアリーにマリンが何かを訴えている。
「『ホントに何もしてない』?あの状況でその言い訳は...」
アリーの言うことはもっともだった。
姫様からしてみれば、1ミリもガーネットに触れていないのだが、チラ見した限り、肌を重ねていたと考えるのが普通だ。

(何、話してるんだろ?)
二人の様子を眺めていたガーネットだったが、今朝、起きた時のことを思い出す。
(あれは...姫様の残り香...)
かすかなにおいだったが、ガーネットにはすぐに分かった。
姫様のそばに寄った時に、いつも感じていたいい香り。忘れるわけがない。
(でもどうして?...って決まってるよね!...姫様...早く...会いたい!!)
ガーネットは苦しそうに胸に手を当てる。
(姿、声だけでなく香りまで...幻覚を見るほど会いたいなんて...やっぱり...私、姫様が...)
改めて、自らの感情に気付かされる。
(後2つ!!早く、集めないと!!)
無意識に足を速めるガーネット。

「ミャ~~~~!」
「待って~~~!」
言い争っていたマリンとアリーも、急いで追いかけるのだった。

☆彡彡彡

一方、その3kmほど前方では、

「アイスニードル!」
「グェ~~~~!」

「アイスソード!」
「ギャ~~~~!」

アメジストたちが目についた魔物を、残らず掃討していた。
アリーとしてはある程度、間引いてくれれば良かったのだが、意外と真面目な仕事ぶりだった。しかし、

「うう...魔力が...しばらく、休ませてくれないか?」
アメジストが苦しそうに口にする。
「はぁ...はぁ...そうはいってもこっちも...」
ヒスイの息が切れている。
こちらの疲労もピークに達しているようだった。
「なに?!魔力がないものは仕方ないじゃないのさ!!」
「魔法使いは体を動かさないだろ!!こっちは走り回って大変なんだ!!前衛の身にもなってくれ!!」
とうとう、アメジストとヒスイがケンカを始めてしまった。
二人とも、気が立っているようだ。
「まあまあ!落ち着いて!アリーに連絡して、ちょっと休ませてもらうっス!」
そんな二人をパールがなだめる。

「そ、そうだね!じゃあ、早速、この魔道具を...」
アメジストがヘッドセットの通話ボタンを押して、話しかける。
「あっ、聞こえるか?アメジストだ!実は...」

〇〇〇

「ふむふむ...」
アメジストの要望を聞いているアリー。
「アメジストたちが『少し、休ませてほしい』って!」
アリーがマリンに耳打ちするが、
「ミャ~~~...」
(でも、ガーネットが...)
「そうだよねぇ...」
なぜか、今日はやる気で足を止めようとしない。
急いでいるようにも見えた。

「なんとかならない?明日からはちょっと考えるから!」
アリーの返事に、

「そんな~~~~~!!」
絶望したようなアメジストの声が聞こえてくるのだった。

☆彡彡彡

その夜、アメジストたちの野営地では、
「し、死ぬっス!この調子でエカティまで行ったら、姫様に殺される前に死ぬっス!」
パールが愚痴っていた。
「パールは敵を倒してないだろ?」
アメジストが言うが、
「二人が早く攻撃してくれないから、耐えるのに必死なんスよ!!」
パールが珍しく感情的になっている。
「そうはいっても、魔力が...」
「そうだ!走り回って剣を振り続ける、こっちの身にもなってくれ!!」
アメジストとヒスイも不満そうだ。
「もう一回、アリーに連絡するっス!」
苛立たしげなパールの言葉に加え、
「今度はもっと強く要求するんだ!」
ヒスイも発破をかけてくる。
「あんたら、他人事だと思って...」
アメジストはしぶしぶ、アリーに連絡をとるのだった。

〇〇〇

「あっ!アメジスト?今日はお疲れ...」
「『お疲れ』じゃない!!この調子で進むと体が持たないよ!!」
アリーの発言を遮って、アメジストが不満を爆発させる。
「ゴ、ゴメン...明日からは楽になるから...」
その口調にひるんだのか、低姿勢になるアリー。すると、
「どう楽になるのさ?!」
アメジストが強い調子で聞いてくる。
「まあ、朝になったら分かるよ!それと、落ちてる魔石はおわびに全部、あげるから!」
アリーの返事に、
「どういう意味だ?」
「さあ...」
「落ちてる?なんで魔石が?」
首を傾げるアメジストたちだった。


次の早朝、アメジストたちは空に輝く数十の光の軌跡を見ることになる。
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