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Maid 49. 氷結の迷宮
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「ああ、見えてきたね!」
翌日の早朝、アメジストはパール、ヒスイを引き連れ、『氷結の迷宮』を目指していた。
「ホントに凍ってるな...」
ヒスイがその異様な光景につぶやく。
草木が茂った岩肌に見えている『氷結の迷宮』の入口付近は、そこだけ別世界のように厚い氷に覆われていた。
「『雪』ってどんなんスかね!楽しみっス!」
お気楽なパールは、初めて見る雪に興味津々のようだ。
やがて、入口に近づくと、
「待て!ここから先は選ばれた冒険者しか入れない!冒険者証は持っているか!」
そう声をかけられる。
見ると、兵士が番をしているようだった。
「はいよ!」
「どうぞっス!」
「・・・」
3人が冒険者証を見せると、
「うむ!ちゃんと星が...ん?アメジスト?...あ~~~~~!!お前は!!」
一旦は納得した兵士だったが、名前を見るなり、叫びだす。
「なんだい?いきなり...」
アメジストが顔をしかめると、
「俺の顔を覚えていないか?」
兵士はそう言って、兜を脱いだ。
「ん?パールは知ってるか?」
「知らないっス!」
「私もこのような男は...」
アメジストたちは全く身に覚えがないようだったが、
「アメジスト!いるか?例のものを受け取りに来た!」
兵士がどこかで聞いた声で、どこかで聞いた内容を話しだす。
「ん?」
「どこかで聞いたような...」
「う~~~~ん...」
それでも気付かない3人に、
「『紫の奇跡の雫』を取りに行ったトパーズ様の部下だ!!お前らが逃げたせいで、責任を取らされてこんなところに左遷を...」
兵士は怒り心頭といった顔で、睨みつけてくる。
「ひ、人違いだ!!」
「そ、そうっス!!そんなこともう忘れたっス!!」
「全く!!勘違いも度を越えると...」
ごまかそうとするアメジストたち。しかし、
「こっちに来い!!」
「ちょっと!何するんだい?」
「濡れ衣っス!!」
「この責任は取ってもらうぞ!!」
抵抗する3人だったが、兵士に連行されてしまった。
☆彡彡彡
「さあ!今日は『氷結の迷宮』に挑戦だね!頑張らないと...」
ここはエカティの街の北の門の付近。
ガーネットは一人、気合を入れていた。
「やる気満々だね!」
アリーが笑いかけると、
「だって...」
(今回はアメジストさんたちはいない...いつまでも頼り切ってちゃダメ!!私が頑張らないと!)
そう口にしようとしたガーネットだったが、
「...なんでもない...」
恥ずかしいのか、言葉を濁してしまった。
「ミャ~~~?」
マリンが不思議に思っていると、
「おい!あたしたちは姫様の手伝いで迷宮に来たんだよ!!」
「そうっス!!こんなことしてタダでは済まないっス!!」
「そうだ!!今すぐ、解放するんだ!!」
「また、そのような戯れ言を...」
どこからか喧騒が聞こえてきた。
「なんだろ?どこかで聞いた声だけど...」
ガーネットたちが近寄ると、人だかりができていた。
<ザワザワ...>
「み、見えない!」
ガーネットはジャンプするが、兵士が誰かを引っ立てているくらいのことしか分からない。
「どうしたんですか?」
ガーネットが聞くと、
「なんか、トパーズ様をだました罪人が捕まったらしい...シトリン様のお屋敷に連れていかれるんだろうな!」
見物人の一人が教えてくれた。
「シトリン様?」
ガーネットが首を傾げると、
「知らないのかい?お嬢ちゃん。王都にいるトパーズ様に代わって、領地の管理をしておられる方だ!この街にいるのなら常識だぜ!」
そう答える男。
「誰が捕まったんだろ?」
気になるガーネットだったが、
「そんな悪いヤツなんかほっといて、早く、迷宮に行こうよ!」
アリーが急かしてくる。
「ミャ~~~~!」
(早く行かないと、せっかく、アメジストたちが魔物を掃除してくれてるのに、また湧いてきちゃうわ!!)
マリンも同意見のようだ。
「そうだね!私たちには関係ないね!」
ガーネットは門へと振り返ると、その場を立ち去るのだった。
「姫様~~~~!助けてくださ~~~い!」
後にはアメジストの悲痛な声が残されていた。
☆彡彡彡
「ここが『氷結の迷宮』...これが...雪?」
ガーネットの手の中で、降ってきた雪が溶ける。
ガーネットたちは入口で冒険者証を見せ、迷宮の中に入っていた。
降り積もった雪に、ガーネットは目を輝かせる。
「ミャ~~~~!」
マリンもうれしそうに雪と戯れている。
「うわ~~~~!!冷たい!!でもフワフワしておいしそう!」
ガーネットは手で床の雪をすくう。
一口、食べてみた。
「シャリシャリしていい食感!」
しかし、
「クシュン!!」
くしゃみをしてしまう。
「ほらほら!初めての雪で楽しいのは分かるけど、風邪、ひいちゃうよ!...ウィンド!」
アリーはそう言うと、暖かい風でガーネットを包む。
「あっ!」
周りの雪が溶けてしまった。
少し、残念そうなガーネット。
「また、時間がある時に遊びましょ!」
アリーがそんなガーネットに声をかける。
「アリーは珍しくないの?」
ガーネットが尋ねると、
「まあ、北の国とかじゃ、普通に降るから...むしろ、雪が降らないこの国の方が過ごしやすいかな!」
アリーはそう答えた。
「そんなもんかな?」
ガーネットが口にした言葉に、
「雪の大変さを知らないから、そんなことが言えるんだよ!まあ、昔はこの辺りでも降ったんだけどね!」
アリーがそんなことを教えてくれる。
「そうなの?!」
驚くガーネットに、
「といっても、大昔の話だけど!...600年ほど前から、徐々に暖かくなって、500年くらい前からは全く、降らなくなったよ!」
アリーが説明した。
「知らなかった...マリンは知ってた?」
ガーネットが、寒いのか、いつの間にかそばに来ていたマリンに聞くと、
「ミャ~~~~!」
「そっか...マリンも知らないんだ...」
姫様も初耳だったようだ。
「『気候変動』っていうんだけど...世界はいつまでも同じじゃないの!長く生きてると、良く分かるよ!」
アリーはにっこり笑うと、そう言う。
「そっか、いろいろあるんだね!...じゃあ、行こっか!」
「ミャ~~~!」
「うん!」
ガーネットの音頭で、一行は迷宮の奥へと歩きだしたのだった。
翌日の早朝、アメジストはパール、ヒスイを引き連れ、『氷結の迷宮』を目指していた。
「ホントに凍ってるな...」
ヒスイがその異様な光景につぶやく。
草木が茂った岩肌に見えている『氷結の迷宮』の入口付近は、そこだけ別世界のように厚い氷に覆われていた。
「『雪』ってどんなんスかね!楽しみっス!」
お気楽なパールは、初めて見る雪に興味津々のようだ。
やがて、入口に近づくと、
「待て!ここから先は選ばれた冒険者しか入れない!冒険者証は持っているか!」
そう声をかけられる。
見ると、兵士が番をしているようだった。
「はいよ!」
「どうぞっス!」
「・・・」
3人が冒険者証を見せると、
「うむ!ちゃんと星が...ん?アメジスト?...あ~~~~~!!お前は!!」
一旦は納得した兵士だったが、名前を見るなり、叫びだす。
「なんだい?いきなり...」
アメジストが顔をしかめると、
「俺の顔を覚えていないか?」
兵士はそう言って、兜を脱いだ。
「ん?パールは知ってるか?」
「知らないっス!」
「私もこのような男は...」
アメジストたちは全く身に覚えがないようだったが、
「アメジスト!いるか?例のものを受け取りに来た!」
兵士がどこかで聞いた声で、どこかで聞いた内容を話しだす。
「ん?」
「どこかで聞いたような...」
「う~~~~ん...」
それでも気付かない3人に、
「『紫の奇跡の雫』を取りに行ったトパーズ様の部下だ!!お前らが逃げたせいで、責任を取らされてこんなところに左遷を...」
兵士は怒り心頭といった顔で、睨みつけてくる。
「ひ、人違いだ!!」
「そ、そうっス!!そんなこともう忘れたっス!!」
「全く!!勘違いも度を越えると...」
ごまかそうとするアメジストたち。しかし、
「こっちに来い!!」
「ちょっと!何するんだい?」
「濡れ衣っス!!」
「この責任は取ってもらうぞ!!」
抵抗する3人だったが、兵士に連行されてしまった。
☆彡彡彡
「さあ!今日は『氷結の迷宮』に挑戦だね!頑張らないと...」
ここはエカティの街の北の門の付近。
ガーネットは一人、気合を入れていた。
「やる気満々だね!」
アリーが笑いかけると、
「だって...」
(今回はアメジストさんたちはいない...いつまでも頼り切ってちゃダメ!!私が頑張らないと!)
そう口にしようとしたガーネットだったが、
「...なんでもない...」
恥ずかしいのか、言葉を濁してしまった。
「ミャ~~~?」
マリンが不思議に思っていると、
「おい!あたしたちは姫様の手伝いで迷宮に来たんだよ!!」
「そうっス!!こんなことしてタダでは済まないっス!!」
「そうだ!!今すぐ、解放するんだ!!」
「また、そのような戯れ言を...」
どこからか喧騒が聞こえてきた。
「なんだろ?どこかで聞いた声だけど...」
ガーネットたちが近寄ると、人だかりができていた。
<ザワザワ...>
「み、見えない!」
ガーネットはジャンプするが、兵士が誰かを引っ立てているくらいのことしか分からない。
「どうしたんですか?」
ガーネットが聞くと、
「なんか、トパーズ様をだました罪人が捕まったらしい...シトリン様のお屋敷に連れていかれるんだろうな!」
見物人の一人が教えてくれた。
「シトリン様?」
ガーネットが首を傾げると、
「知らないのかい?お嬢ちゃん。王都にいるトパーズ様に代わって、領地の管理をしておられる方だ!この街にいるのなら常識だぜ!」
そう答える男。
「誰が捕まったんだろ?」
気になるガーネットだったが、
「そんな悪いヤツなんかほっといて、早く、迷宮に行こうよ!」
アリーが急かしてくる。
「ミャ~~~~!」
(早く行かないと、せっかく、アメジストたちが魔物を掃除してくれてるのに、また湧いてきちゃうわ!!)
マリンも同意見のようだ。
「そうだね!私たちには関係ないね!」
ガーネットは門へと振り返ると、その場を立ち去るのだった。
「姫様~~~~!助けてくださ~~~い!」
後にはアメジストの悲痛な声が残されていた。
☆彡彡彡
「ここが『氷結の迷宮』...これが...雪?」
ガーネットの手の中で、降ってきた雪が溶ける。
ガーネットたちは入口で冒険者証を見せ、迷宮の中に入っていた。
降り積もった雪に、ガーネットは目を輝かせる。
「ミャ~~~~!」
マリンもうれしそうに雪と戯れている。
「うわ~~~~!!冷たい!!でもフワフワしておいしそう!」
ガーネットは手で床の雪をすくう。
一口、食べてみた。
「シャリシャリしていい食感!」
しかし、
「クシュン!!」
くしゃみをしてしまう。
「ほらほら!初めての雪で楽しいのは分かるけど、風邪、ひいちゃうよ!...ウィンド!」
アリーはそう言うと、暖かい風でガーネットを包む。
「あっ!」
周りの雪が溶けてしまった。
少し、残念そうなガーネット。
「また、時間がある時に遊びましょ!」
アリーがそんなガーネットに声をかける。
「アリーは珍しくないの?」
ガーネットが尋ねると、
「まあ、北の国とかじゃ、普通に降るから...むしろ、雪が降らないこの国の方が過ごしやすいかな!」
アリーはそう答えた。
「そんなもんかな?」
ガーネットが口にした言葉に、
「雪の大変さを知らないから、そんなことが言えるんだよ!まあ、昔はこの辺りでも降ったんだけどね!」
アリーがそんなことを教えてくれる。
「そうなの?!」
驚くガーネットに、
「といっても、大昔の話だけど!...600年ほど前から、徐々に暖かくなって、500年くらい前からは全く、降らなくなったよ!」
アリーが説明した。
「知らなかった...マリンは知ってた?」
ガーネットが、寒いのか、いつの間にかそばに来ていたマリンに聞くと、
「ミャ~~~~!」
「そっか...マリンも知らないんだ...」
姫様も初耳だったようだ。
「『気候変動』っていうんだけど...世界はいつまでも同じじゃないの!長く生きてると、良く分かるよ!」
アリーはにっこり笑うと、そう言う。
「そっか、いろいろあるんだね!...じゃあ、行こっか!」
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