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Maid 50. シトリンの館
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ガーネットたちが、迷宮に着いた頃、アメジストたちは街の中央にある、大きな館に来ていた。
「おい!ここだ!」
2階にある、とある部屋の前で、兵士がアメジストたちを止まらせる。そして、
<コンコン!>
ドアをノックすると、
「何用だ!」
神経質そうな、男の高い声が聞こえた。
「はっ!以前、トパーズ様に『紫の奇跡の雫』を持ってくると言いながら、直前で逃げた不埒者どもを捕らえてまいりました!」
兵士が返事をすると、
「入れ!」
中から男の声が。
「失礼します!」
兵士はドアを開けると、アメジストたちを突き出した。
「いてっ!」
「乱暴はやめるっス!」
「全く!しつけがなってないな!」
不機嫌なアメジストたち。
「お前たちか...トパーズ様から聞いている!『厳しく対処せよ』とのことだ!」
中にいたのは、淡黄色の髪で長身。やせていて、声に見合った神経質そうな外見をした、立派な服を着た男だった。
アメジストたちを、卑しいものでも見るような目で一瞥すると、厳しい態度でそう口にした。
「あんた、誰さ?」
アメジストが誰何すると、
「失礼な口を利くな!!この方はトパーズ様に代わって、この地を治めておられるシトリン様だ!!」
兵士に叱責される。
しかし、アメジストは、
「それは失礼いたしました...しかし、それだけの身分の方であれば、この紋章をご存じで?」
口調こそ丁寧だが、尊敬のカケラも感じられない態度で、姫様に借りたブローチを見せる。
「これは!!」
目を見開いて、手に取ろうとするシトリンをさっと避けると、アメジストは話しだす。
「申し訳ございません。これは姫様にお借りしたとても貴重なもの。何人たりとも触らせるわけにはまいりません!」
ニヤッと笑ったアメジストに、
「ふむ...どうやら本物のようだな...しかし、なぜ、お前たちが持っている?」
厳しい目で見つめてくるシトリン。
「それは...『氷結の迷宮』について調べるように、ご命令になられた際に、お預かりしました!これがあれば、円滑に仕事が進むと...」
アメジストは言葉を選ぶ。
(言っていいことと、悪いこと。間違ったら、姫様に殺される!!)
アメジストは必死だった。
「ほう...『氷結の迷宮』を...それはなぜ?」
シトリンの問いに、
「それは教えてはいただけませんでした!ただ、『中に入って調査せよ』と...」
(いいぞ!)
うまく情報を隠せたことに、内心、上機嫌のアメジスト。
「そうか...それで姫様は今、どちらに?王様も心配しておられる...」
しかし、シトリンは心の中を見透かそうとするように、じっと、アメジストの目をのぞき込んでくる。
「えっと...『カリナン』です!私たちも詳しくは存じませんが、何か所用がおありのようで...」
アメジストが一瞬、迷いながらもそう口にすると、
「それではすぐにお迎えにあがらねば!...姫様の身に何かあってからでは遅いですからな!」
いかにも心配そうな顔をしながら、手配を始めようとするシトリン。
「ま、待ってください!...えっと...」
アメジストが理由を探していると、
「ひ、姫様は『この国を守るためだ』とおっしゃっておられました!余計なことはせぬのが、肝要かと!!」
ヒスイがそれらしい説明をした。
(やるじゃないか!)
(ふっ!こんなものだ!)
目で合図するアメジストとヒスイ。
「そうか...」
なにやら考え込んでいたシトリンだったが、
「そ、そういうわけで、私たちも姫様をお助けするため、急いで『氷結の迷宮』に向かわねばならないのです!!」
アメジストにそう言われると、
「...ふむ。『この国を守る』ためなら、仕方ないだろう!...おい!縄を解いてやれ!」
シトリンが兵士に命令する。
「よろしいので?」
兵士はアメジストたちの説明に懐疑的なようだったが、
「無礼者!!姫様の命に逆らうか!!」
シトリンに一喝されると、
「は、はい!!申し訳ありませんでした!!あなた方はもう自由です!!お気をつけてお戻りください!!」
慌てて、3人を自由にする兵士。
縄をほどかれたアメジストたちは、
「じゃあな!」
「ご苦労さんっス!」
「迷宮のお守り、頑張れよ!」
兵士をからかうように声をかけると、部屋を出ていくのだった。
やがて、3人の気配が消えると、
「くっ!」
悔しそうな顔をする兵士。すると、
「ふふふ!あいつらは面白い情報を持ってきてくれた...これは大手柄につながるかもしれんぞ!」
ニヤリと笑うと、愉快そうに声を上げるシトリン。
「どういうことで?」
兵士は要領を得ないようだったが、
「人を集めろ!!お前たちには大至急、調べてもらいたいことがある!!」
「は、はい!!」
なにやら、怪しげな命令を下すシトリンだった。
☆彡彡彡
その頃、ガーネットたちは順調に迷宮を進んでいた。
「魔物が出ないね!どうしてかなぁ?」
『氷結の迷宮』に入ってから、まだ、魔物と遭遇していない。
ガーネットは不思議に思っているようだ。するとアリーは、
「あ、あれじゃないかなぁ!ちょうど、誰かが通った後とか!!...ほら!足跡残ってるし...」
(アメジストたち、相変わらず真面目な仕事ぶりだね!グッジョブ!!)
ごまかしながらも、感心していた。
迷宮の攻略が順調な理由はもう一つある。
足跡がうっすらと残っており、たどっていけば、先に進めるのだ。
「じゃあ、急がないと!!先に取られちゃう!!」
焦るガーネットだったが、
「で、でも、『青の奇跡』目的とは限らないし...ほら、この情報って知ってる人、ほとんどいないでしょ!」
アリーはそう言って、落ち着かせる。
「だといいけど...」
それでも少し、心配なガーネット。そして、
「・・・」
マリンはさっきから難しい顔をしていた。
(この足跡...男のサイズも交じっている...もしかして、私たち以外にも『青の奇跡』を狙っている人が?)
☆彡彡彡
一方、
「急げ急げ~~~~!!」
「待って~~~~っス!」
「パール!遅いぞ!早くしろ!このままだと姫様に...」
「そうはいっても、装備が重くて...」
「泣き言を言うな!!」
再び、『氷結の迷宮』に向けて猛ダッシュしているアメジストたち。
それぞれの思惑を秘めて、ガーネットの冒険は佳境を迎えようとしていた。
「おい!ここだ!」
2階にある、とある部屋の前で、兵士がアメジストたちを止まらせる。そして、
<コンコン!>
ドアをノックすると、
「何用だ!」
神経質そうな、男の高い声が聞こえた。
「はっ!以前、トパーズ様に『紫の奇跡の雫』を持ってくると言いながら、直前で逃げた不埒者どもを捕らえてまいりました!」
兵士が返事をすると、
「入れ!」
中から男の声が。
「失礼します!」
兵士はドアを開けると、アメジストたちを突き出した。
「いてっ!」
「乱暴はやめるっス!」
「全く!しつけがなってないな!」
不機嫌なアメジストたち。
「お前たちか...トパーズ様から聞いている!『厳しく対処せよ』とのことだ!」
中にいたのは、淡黄色の髪で長身。やせていて、声に見合った神経質そうな外見をした、立派な服を着た男だった。
アメジストたちを、卑しいものでも見るような目で一瞥すると、厳しい態度でそう口にした。
「あんた、誰さ?」
アメジストが誰何すると、
「失礼な口を利くな!!この方はトパーズ様に代わって、この地を治めておられるシトリン様だ!!」
兵士に叱責される。
しかし、アメジストは、
「それは失礼いたしました...しかし、それだけの身分の方であれば、この紋章をご存じで?」
口調こそ丁寧だが、尊敬のカケラも感じられない態度で、姫様に借りたブローチを見せる。
「これは!!」
目を見開いて、手に取ろうとするシトリンをさっと避けると、アメジストは話しだす。
「申し訳ございません。これは姫様にお借りしたとても貴重なもの。何人たりとも触らせるわけにはまいりません!」
ニヤッと笑ったアメジストに、
「ふむ...どうやら本物のようだな...しかし、なぜ、お前たちが持っている?」
厳しい目で見つめてくるシトリン。
「それは...『氷結の迷宮』について調べるように、ご命令になられた際に、お預かりしました!これがあれば、円滑に仕事が進むと...」
アメジストは言葉を選ぶ。
(言っていいことと、悪いこと。間違ったら、姫様に殺される!!)
アメジストは必死だった。
「ほう...『氷結の迷宮』を...それはなぜ?」
シトリンの問いに、
「それは教えてはいただけませんでした!ただ、『中に入って調査せよ』と...」
(いいぞ!)
うまく情報を隠せたことに、内心、上機嫌のアメジスト。
「そうか...それで姫様は今、どちらに?王様も心配しておられる...」
しかし、シトリンは心の中を見透かそうとするように、じっと、アメジストの目をのぞき込んでくる。
「えっと...『カリナン』です!私たちも詳しくは存じませんが、何か所用がおありのようで...」
アメジストが一瞬、迷いながらもそう口にすると、
「それではすぐにお迎えにあがらねば!...姫様の身に何かあってからでは遅いですからな!」
いかにも心配そうな顔をしながら、手配を始めようとするシトリン。
「ま、待ってください!...えっと...」
アメジストが理由を探していると、
「ひ、姫様は『この国を守るためだ』とおっしゃっておられました!余計なことはせぬのが、肝要かと!!」
ヒスイがそれらしい説明をした。
(やるじゃないか!)
(ふっ!こんなものだ!)
目で合図するアメジストとヒスイ。
「そうか...」
なにやら考え込んでいたシトリンだったが、
「そ、そういうわけで、私たちも姫様をお助けするため、急いで『氷結の迷宮』に向かわねばならないのです!!」
アメジストにそう言われると、
「...ふむ。『この国を守る』ためなら、仕方ないだろう!...おい!縄を解いてやれ!」
シトリンが兵士に命令する。
「よろしいので?」
兵士はアメジストたちの説明に懐疑的なようだったが、
「無礼者!!姫様の命に逆らうか!!」
シトリンに一喝されると、
「は、はい!!申し訳ありませんでした!!あなた方はもう自由です!!お気をつけてお戻りください!!」
慌てて、3人を自由にする兵士。
縄をほどかれたアメジストたちは、
「じゃあな!」
「ご苦労さんっス!」
「迷宮のお守り、頑張れよ!」
兵士をからかうように声をかけると、部屋を出ていくのだった。
やがて、3人の気配が消えると、
「くっ!」
悔しそうな顔をする兵士。すると、
「ふふふ!あいつらは面白い情報を持ってきてくれた...これは大手柄につながるかもしれんぞ!」
ニヤリと笑うと、愉快そうに声を上げるシトリン。
「どういうことで?」
兵士は要領を得ないようだったが、
「人を集めろ!!お前たちには大至急、調べてもらいたいことがある!!」
「は、はい!!」
なにやら、怪しげな命令を下すシトリンだった。
☆彡彡彡
その頃、ガーネットたちは順調に迷宮を進んでいた。
「魔物が出ないね!どうしてかなぁ?」
『氷結の迷宮』に入ってから、まだ、魔物と遭遇していない。
ガーネットは不思議に思っているようだ。するとアリーは、
「あ、あれじゃないかなぁ!ちょうど、誰かが通った後とか!!...ほら!足跡残ってるし...」
(アメジストたち、相変わらず真面目な仕事ぶりだね!グッジョブ!!)
ごまかしながらも、感心していた。
迷宮の攻略が順調な理由はもう一つある。
足跡がうっすらと残っており、たどっていけば、先に進めるのだ。
「じゃあ、急がないと!!先に取られちゃう!!」
焦るガーネットだったが、
「で、でも、『青の奇跡』目的とは限らないし...ほら、この情報って知ってる人、ほとんどいないでしょ!」
アリーはそう言って、落ち着かせる。
「だといいけど...」
それでも少し、心配なガーネット。そして、
「・・・」
マリンはさっきから難しい顔をしていた。
(この足跡...男のサイズも交じっている...もしかして、私たち以外にも『青の奇跡』を狙っている人が?)
☆彡彡彡
一方、
「急げ急げ~~~~!!」
「待って~~~~っス!」
「パール!遅いぞ!早くしろ!このままだと姫様に...」
「そうはいっても、装備が重くて...」
「泣き言を言うな!!」
再び、『氷結の迷宮』に向けて猛ダッシュしているアメジストたち。
それぞれの思惑を秘めて、ガーネットの冒険は佳境を迎えようとしていた。
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