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Maid 61. 雫奪還計画
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「なるほど...そういうことでしたか...」
姫様から詳しい話を聞いたアメジストが、納得したように口を開いた。
「しかし、人様のものをだまして奪うなんて、人として許せないっス!!」
「全くだ!!」
パールとヒスイも激怒しているが、
「...あなたたちはどうなのよ...」
自分たちのしてきたことを忘れたかのような言いぐさに、アリーがつい、つぶやいてしまう。
「ガーネット様の話によると、『淡黄色の髪で背が高く、やせていて神経質そうな男』でしたよね...それでしたら...」
「心当たりがあるの?!」
アメジストの言葉に食いつく姫様。
「はい。確か、今朝、連行された館の主の『シトリン』という男がそんな感じでした!」
アメジストの話に、
「『シトリン』...トパーズの部下ね!確か、主に忠実で、命令のためには手段を選ばないそのやり方で、平民でありながら、異例の出世をした男...」
姫様は『トパーズ』と呼び捨てにしている。もはや、敬う対象ではないと判断したのかもしれない。
「ご存じでしたか...」
アメジストは少し、驚いた顔をした。
大貴族とはいえ、その部下の名前まで知っているとは思わなかったのだろう。
「良くも悪くもうわさを聞くから...ちょっとね!」
姫様は答える。
「しかし、なぜ、ガーネット様の居場所が分かったのでしょう?」
パールが首を傾げる。
姫様が現れたのなら話は別だが、そのメイドが来ても誰も気付かないし、名前も知っているとは思えなかった。
「それは分からない...もしかして、その時に私の名前を出した?」
姫様が問いかけると、
「そ、それは...」
「このままでは捕まってしまうと思い、仕方なく...」
「も、申し訳ありません!!」
平謝りするアメジストたちだったが、
「まあ、いいわ!『私の名前を出していい』と言ったのは私だし...でも、ガーネットのことは何かの拍子に知っていたとして、シトリンは『私の使者』を名乗った...どういうことかしら?」
姫様の存在を認識したのなら、そのメイドは同行していると考えるのが普通だ。少々、腑に落ちない。すると、
「今はそんなのどうでもいいよ!そのシトリンってヤツが雫を盗んだのなら、その館に忍び込んで盗み返せばいいだけじゃない!!」
アリーがもどかしそうに口を出す。
「しかし、どうやって?」
ヒスイが当然の疑問をぶつける。
『盗み返す』といっても簡単ではない。
まず、人知れず忍び込まなければならないし、広い屋敷のどこかにある、小さなガラス瓶を見つけなければいけない。
更に、おそらく、金庫のような場所に保管してあるだろうから、鍵も開ける必要があった。
それに加え、誰かに見つかった時の対策も考えておかなければならないだろう。
「う~~~~ん...雫の場所さえ分かれば、後はどうにでもなるけど...やっぱり、それが問題よね...」
姫様が悩んでいると、
「それなら、大方の予想はつきます!」
アメジストが進言した。
「どこ?!」
その言葉に食いつく姫様。
「そんなに大事なものであれば、自分のそばから決して離そうとはしないはずです!鍵付きの金庫に入れて、寝ている間であれば、ベッドの付近に隠してあると考えるのが妥当でしょう!」
アメジストは得意げに説明した。
「そういえば、あれもベッドの下にあったわね...」
姫様のつぶやきに、
「ベッドの下?どこかでそんなことをしたような...」
パールが何かを思い出しそうになっている。
「な、なんでもないわ!!」
慌ててごまかす姫様。
「じゃあ、シトリンの寝室さえ、分かれば!!」
アリーが声を上げると、
「それなら...少々、心当たりがございます!」
アメジストが意味ありげにウインクをした。
☆彡彡彡
その頃、シトリンの執務室では...
「はっ!はっ!は!笑いが止まらんな!!」
6つの『七色の奇跡の雫』を前にシトリンが、喜びを隠し切れない様子だった。
「全ての宿を調べさせたら、姫様の情報は上がってこなかったが、『ガーネット』という名前が出てきた...そこでひらめいた私は天才...」
シトリンは自画自賛している。
実はガーネットの名前は、一部の貴族の間で有名である。
普段は堅い姫様が、そのメイドの名前を出すと、機嫌が良くなるのだ。
王族を利用しようと企んでいる腹の黒い貴族で知らないものはいなかった。
「トパーズ様が口にされていた『ガーネット』というメイド...覚えておいて損はなかったな!」
シトリンはニンマリと口を広げる。
「姫様のブローチを持った冒険者...それに姫様のお気に入りのメイド...とくれば...」
シトリンは一息、置く。
「行方不明を装って、王城で指示を出している姫様の命を受け、そのメイドが冒険者を使い、『七色の奇跡の雫』を集めていると考えるのが妥当...」
それは誤った推理であったが、今回は偶然、うまくいったのだ。
「あいつらはそのメイドにそそのかされ、トパーズ様から寝返ったのだろう...バカなヤツらだ!!最後に勝つのはトパーズ様だというのに!!」
シトリンはアメジストたちを笑う。
「ふふふ!これはあくまで推測にすぎなかったが、バレても、メイド風情ならなんとでもなると思い、賭けに出たが、私は勝った!!」
シトリンは興奮のあまり、両手を大きく広げ、その顔は喜色にあふれていた。
「しかも、まさか6つも集めているとは!!...さすが姫様のお気に入りといったところか...」
口角を更に広げると、シトリンは続ける。
「これで私の地位は安泰...いや、トパーズ様の計画がうまくいった暁には、領地をいただき、貴族となることも、もはや夢ではない!!」
シトリンは壮大な夢を描く。
「はっ!はっ!はっ!はっ!は!」
執務室にシトリンの笑い声が、いつまでもこだましていた。
姫様から詳しい話を聞いたアメジストが、納得したように口を開いた。
「しかし、人様のものをだまして奪うなんて、人として許せないっス!!」
「全くだ!!」
パールとヒスイも激怒しているが、
「...あなたたちはどうなのよ...」
自分たちのしてきたことを忘れたかのような言いぐさに、アリーがつい、つぶやいてしまう。
「ガーネット様の話によると、『淡黄色の髪で背が高く、やせていて神経質そうな男』でしたよね...それでしたら...」
「心当たりがあるの?!」
アメジストの言葉に食いつく姫様。
「はい。確か、今朝、連行された館の主の『シトリン』という男がそんな感じでした!」
アメジストの話に、
「『シトリン』...トパーズの部下ね!確か、主に忠実で、命令のためには手段を選ばないそのやり方で、平民でありながら、異例の出世をした男...」
姫様は『トパーズ』と呼び捨てにしている。もはや、敬う対象ではないと判断したのかもしれない。
「ご存じでしたか...」
アメジストは少し、驚いた顔をした。
大貴族とはいえ、その部下の名前まで知っているとは思わなかったのだろう。
「良くも悪くもうわさを聞くから...ちょっとね!」
姫様は答える。
「しかし、なぜ、ガーネット様の居場所が分かったのでしょう?」
パールが首を傾げる。
姫様が現れたのなら話は別だが、そのメイドが来ても誰も気付かないし、名前も知っているとは思えなかった。
「それは分からない...もしかして、その時に私の名前を出した?」
姫様が問いかけると、
「そ、それは...」
「このままでは捕まってしまうと思い、仕方なく...」
「も、申し訳ありません!!」
平謝りするアメジストたちだったが、
「まあ、いいわ!『私の名前を出していい』と言ったのは私だし...でも、ガーネットのことは何かの拍子に知っていたとして、シトリンは『私の使者』を名乗った...どういうことかしら?」
姫様の存在を認識したのなら、そのメイドは同行していると考えるのが普通だ。少々、腑に落ちない。すると、
「今はそんなのどうでもいいよ!そのシトリンってヤツが雫を盗んだのなら、その館に忍び込んで盗み返せばいいだけじゃない!!」
アリーがもどかしそうに口を出す。
「しかし、どうやって?」
ヒスイが当然の疑問をぶつける。
『盗み返す』といっても簡単ではない。
まず、人知れず忍び込まなければならないし、広い屋敷のどこかにある、小さなガラス瓶を見つけなければいけない。
更に、おそらく、金庫のような場所に保管してあるだろうから、鍵も開ける必要があった。
それに加え、誰かに見つかった時の対策も考えておかなければならないだろう。
「う~~~~ん...雫の場所さえ分かれば、後はどうにでもなるけど...やっぱり、それが問題よね...」
姫様が悩んでいると、
「それなら、大方の予想はつきます!」
アメジストが進言した。
「どこ?!」
その言葉に食いつく姫様。
「そんなに大事なものであれば、自分のそばから決して離そうとはしないはずです!鍵付きの金庫に入れて、寝ている間であれば、ベッドの付近に隠してあると考えるのが妥当でしょう!」
アメジストは得意げに説明した。
「そういえば、あれもベッドの下にあったわね...」
姫様のつぶやきに、
「ベッドの下?どこかでそんなことをしたような...」
パールが何かを思い出しそうになっている。
「な、なんでもないわ!!」
慌ててごまかす姫様。
「じゃあ、シトリンの寝室さえ、分かれば!!」
アリーが声を上げると、
「それなら...少々、心当たりがございます!」
アメジストが意味ありげにウインクをした。
☆彡彡彡
その頃、シトリンの執務室では...
「はっ!はっ!は!笑いが止まらんな!!」
6つの『七色の奇跡の雫』を前にシトリンが、喜びを隠し切れない様子だった。
「全ての宿を調べさせたら、姫様の情報は上がってこなかったが、『ガーネット』という名前が出てきた...そこでひらめいた私は天才...」
シトリンは自画自賛している。
実はガーネットの名前は、一部の貴族の間で有名である。
普段は堅い姫様が、そのメイドの名前を出すと、機嫌が良くなるのだ。
王族を利用しようと企んでいる腹の黒い貴族で知らないものはいなかった。
「トパーズ様が口にされていた『ガーネット』というメイド...覚えておいて損はなかったな!」
シトリンはニンマリと口を広げる。
「姫様のブローチを持った冒険者...それに姫様のお気に入りのメイド...とくれば...」
シトリンは一息、置く。
「行方不明を装って、王城で指示を出している姫様の命を受け、そのメイドが冒険者を使い、『七色の奇跡の雫』を集めていると考えるのが妥当...」
それは誤った推理であったが、今回は偶然、うまくいったのだ。
「あいつらはそのメイドにそそのかされ、トパーズ様から寝返ったのだろう...バカなヤツらだ!!最後に勝つのはトパーズ様だというのに!!」
シトリンはアメジストたちを笑う。
「ふふふ!これはあくまで推測にすぎなかったが、バレても、メイド風情ならなんとでもなると思い、賭けに出たが、私は勝った!!」
シトリンは興奮のあまり、両手を大きく広げ、その顔は喜色にあふれていた。
「しかも、まさか6つも集めているとは!!...さすが姫様のお気に入りといったところか...」
口角を更に広げると、シトリンは続ける。
「これで私の地位は安泰...いや、トパーズ様の計画がうまくいった暁には、領地をいただき、貴族となることも、もはや夢ではない!!」
シトリンは壮大な夢を描く。
「はっ!はっ!はっ!はっ!は!」
執務室にシトリンの笑い声が、いつまでもこだましていた。
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