62 / 76
Maid 62. シトリンの館に潜入せよ
しおりを挟む
<カチャッ!>
大きな屋敷の3階の窓の鍵が静かに開く。
入ってきたのは、4人の女性と1人の妖精。
「ここがシトリンの館ね!なかなか豪勢じゃない!」
部屋の中を確認する姫様。
そこには絨毯が敷かれ、高価そうな調度品が置かれていた。
「少し、いただいても...」
アメジストが部屋の棚にある、ネックレスに手を伸ばすが、
「ダメよ!私たちは泥棒しに来たんじゃないんだから!」
姫様に注意されてしまう。
「これだから、アメジストは...」
「困ったもんだ!」
そう言いながらも、パールとヒスイは手に持った装飾品を、こっそり元の位置に戻していた。
「...先が心配だね!あたしたちだけで来た方が良かったんじゃ...」
アリーは少し、後悔している様子だったが、
「でも、シトリンの寝室に案内してもらわなきゃ!...知ってるのはアメジストだけでしょ?」
姫様が『仕方ない』とばかりに、アメジストの方に目をやる。
「おそらくですが...ヤツの執務室の奥に扉がありました!そこが私室と考えるのが妥当かと...」
アメジストはそんな二人の心の中を知ってか知らずか、真面目な顔で答えた。
「まあ、行ってみれば分かるわね!違ってたとしても、執務室の近くであることに変わりはないでしょう!」
姫様はそう言うと、ゆっくりとドアを開けて、廊下を見る。
人の気配はなかった。
「いくわよ!」
「「「はっ!」」」
廊下に飛び出した5人。
人がいたら魔法を使うつもりだったが、誰もいないようだった。
「執務室はどこ?」
姫様の問いに、
「2階の奥です!」
アメジストの返答。
それなら2階から入れば良さそうだが、外から観察したところ、3階のこの部屋が警備の死角になっていたので、ここを選んだのだ。
この時代はたいまつなどで明かりをとっていたので、どうしても上方が見づらくなる。
飛行が可能な姫様からすれば、無難な侵入方法だった。
「階段はあそこです!」
アメジストは一回しか来ていないにもかかわらず、館の構造を覚えているらしかった。
薄暗がりの中でも、案内してくれる。
「さすがね!連れてきて良かったわ!」
「ま、まあ、それほどでも...」
姫様に褒められ、満更でもない様子のアメジスト。
しかし、良く考えれば、泥棒をし慣れているとも考えられ、微妙な能力だった。
しばらく進むと、
「ちょっと待て!」
ヒスイがいきなり、皆を止める。
「「・・・」」
息をひそめていると、向こうから足音が聞こえてきた。
「2人だ!おそらく、警備の兵隊だろう!」
耳をそばだてていたヒスイが推測する。
「すごいわね!」
感心する姫様。
それだけで状況を理解してしまうヒスイは、今はとても頼りになった。
「眠りの粉!」
アリーが羽を震わせると同時に、鱗粉のようなものが宙に舞った。
それを、羽ばたいて先方へと飛ばすアリー。すると、
「ん...眠い...」
「おい!警備中だぞ!...って俺も...」
二人の膝が崩れると、
「よっと!」
いつの間にか、そばに近づいていたパールが二人の体を支える。
そして、その場に寝かせた。
「ス~~~...ス~~~...」
深い眠りに陥っている警備兵たち。
「実は最強メンバーなんじゃない?」
姫様は頼りになる仲間たちに思わず、笑顔になるのだった。
☆彡彡彡
「ここね!」
姫様たちは危なげなく、シトリンの執務室の前に着いていた。
「さて!ここからが本番よ!」
姫様は気合を入れると、そっと執務室の扉を開ける。
中は無人だった。
皆が入ったことを確認した姫様は、扉を閉めると、辺りを見回す。
「あそこね!」
アメジストの言った通り、奥に別の扉がある。
「・・・」
ヒスイが扉にしばらく耳を当てていたが、
「大丈夫そうです!」
そう言うと、ゆっくりと扉を開ける。
「ス~~~...ス~~~...」
5人が中に入ると、ベッドの上から寝息が聞こえていた。近づくと、
「これで...私も...貴族に...」
夢を見ているらしいシトリン。
「全く!何が貴族よ!詐欺まがいのことなんかして!!...スリープ!」
口を尖らせた姫様が、魔法をかける。
強い魔力を込めたその眠りの魔法によって、シトリンは地震が来ても起きることはないだろう。
「さて、捜しましょうか?」
姫様の言葉に、皆はベッドの周りでそれらしきものを捜し始める。
しばらくして、
「これなんか、怪しくないスか?」
パールが鉄の箱を持ち上げた。その途端、
「あっ!」
<ジャララ~~~~!!>
口が開き、中にあった、大量の宝石が散らばった。
「何してるの!!」
怒るアリー。
「面目ないっス!」
謝るパールだったが、
「なんだ!!今の音は!!」
「シトリン様の部屋の方からです!!」
「なに?!急げ!!」
外から警備兵の声が聞こえた。
「ヤバい!!一旦、退きましょう!」
アメジストの提案に、
「そうね!」
一度は同意した姫様だったが、
「ちょっと待って!!」
アリーの声がする。
「なに?アリー。急がないと...」
しかし、アリーの姿が見えない。
姫様が不思議に思っていると、
「ここ!ベッドの下に、秘密の扉があるよ!」
ベッドの下からアリーが顔を出した。
「よく見つけたわね!」
姫様が感心していると、
「散らばった宝石を集めてたら、偶然...暗くて、周りの床と同化してたから、潜らなければ見つからなかったかも!!」
アリーが興奮気味に話す。
「しかし警備の者が...」
そんな二人に、ヒスイが警告する。
警備兵の足音が姫様にも分かるくらい、近づいていた。だが、
「ちょっとだけ時間を稼いで!!」
姫様がアメジストたちに指示する。
「無理です!!私たちだけでは...」
アメジストは反対のようだったが、
「お願い!!このチャンスを逃したら、次はどこに隠すか分からない!!それに警備ももっと厳しくなるわ!!」
姫様に手を合わせて、懇願されると、
「・・・」
しばしの沈黙の後、
「仕様がない!そこまで言われちゃ!」
アメジストが覚悟を決めた。
「本気っスか?!」
パールは信じられないようだったが、
「あたしたち、あのお嬢ちゃんにどれだけもらった?ちょっとくらい返してやるのが女ってもんだろ!!」
アメジストは笑う。
「はっ!はっ!は!そりゃそうだ!...まあ、やるだけやってやるか!」
ヒスイもその言葉を聞いて、その気になったようだ。
「もう!!知らないっスよ!」
そう言いながらも、今だけはろくでなしではない3人は、入口に向かうのだった。
大きな屋敷の3階の窓の鍵が静かに開く。
入ってきたのは、4人の女性と1人の妖精。
「ここがシトリンの館ね!なかなか豪勢じゃない!」
部屋の中を確認する姫様。
そこには絨毯が敷かれ、高価そうな調度品が置かれていた。
「少し、いただいても...」
アメジストが部屋の棚にある、ネックレスに手を伸ばすが、
「ダメよ!私たちは泥棒しに来たんじゃないんだから!」
姫様に注意されてしまう。
「これだから、アメジストは...」
「困ったもんだ!」
そう言いながらも、パールとヒスイは手に持った装飾品を、こっそり元の位置に戻していた。
「...先が心配だね!あたしたちだけで来た方が良かったんじゃ...」
アリーは少し、後悔している様子だったが、
「でも、シトリンの寝室に案内してもらわなきゃ!...知ってるのはアメジストだけでしょ?」
姫様が『仕方ない』とばかりに、アメジストの方に目をやる。
「おそらくですが...ヤツの執務室の奥に扉がありました!そこが私室と考えるのが妥当かと...」
アメジストはそんな二人の心の中を知ってか知らずか、真面目な顔で答えた。
「まあ、行ってみれば分かるわね!違ってたとしても、執務室の近くであることに変わりはないでしょう!」
姫様はそう言うと、ゆっくりとドアを開けて、廊下を見る。
人の気配はなかった。
「いくわよ!」
「「「はっ!」」」
廊下に飛び出した5人。
人がいたら魔法を使うつもりだったが、誰もいないようだった。
「執務室はどこ?」
姫様の問いに、
「2階の奥です!」
アメジストの返答。
それなら2階から入れば良さそうだが、外から観察したところ、3階のこの部屋が警備の死角になっていたので、ここを選んだのだ。
この時代はたいまつなどで明かりをとっていたので、どうしても上方が見づらくなる。
飛行が可能な姫様からすれば、無難な侵入方法だった。
「階段はあそこです!」
アメジストは一回しか来ていないにもかかわらず、館の構造を覚えているらしかった。
薄暗がりの中でも、案内してくれる。
「さすがね!連れてきて良かったわ!」
「ま、まあ、それほどでも...」
姫様に褒められ、満更でもない様子のアメジスト。
しかし、良く考えれば、泥棒をし慣れているとも考えられ、微妙な能力だった。
しばらく進むと、
「ちょっと待て!」
ヒスイがいきなり、皆を止める。
「「・・・」」
息をひそめていると、向こうから足音が聞こえてきた。
「2人だ!おそらく、警備の兵隊だろう!」
耳をそばだてていたヒスイが推測する。
「すごいわね!」
感心する姫様。
それだけで状況を理解してしまうヒスイは、今はとても頼りになった。
「眠りの粉!」
アリーが羽を震わせると同時に、鱗粉のようなものが宙に舞った。
それを、羽ばたいて先方へと飛ばすアリー。すると、
「ん...眠い...」
「おい!警備中だぞ!...って俺も...」
二人の膝が崩れると、
「よっと!」
いつの間にか、そばに近づいていたパールが二人の体を支える。
そして、その場に寝かせた。
「ス~~~...ス~~~...」
深い眠りに陥っている警備兵たち。
「実は最強メンバーなんじゃない?」
姫様は頼りになる仲間たちに思わず、笑顔になるのだった。
☆彡彡彡
「ここね!」
姫様たちは危なげなく、シトリンの執務室の前に着いていた。
「さて!ここからが本番よ!」
姫様は気合を入れると、そっと執務室の扉を開ける。
中は無人だった。
皆が入ったことを確認した姫様は、扉を閉めると、辺りを見回す。
「あそこね!」
アメジストの言った通り、奥に別の扉がある。
「・・・」
ヒスイが扉にしばらく耳を当てていたが、
「大丈夫そうです!」
そう言うと、ゆっくりと扉を開ける。
「ス~~~...ス~~~...」
5人が中に入ると、ベッドの上から寝息が聞こえていた。近づくと、
「これで...私も...貴族に...」
夢を見ているらしいシトリン。
「全く!何が貴族よ!詐欺まがいのことなんかして!!...スリープ!」
口を尖らせた姫様が、魔法をかける。
強い魔力を込めたその眠りの魔法によって、シトリンは地震が来ても起きることはないだろう。
「さて、捜しましょうか?」
姫様の言葉に、皆はベッドの周りでそれらしきものを捜し始める。
しばらくして、
「これなんか、怪しくないスか?」
パールが鉄の箱を持ち上げた。その途端、
「あっ!」
<ジャララ~~~~!!>
口が開き、中にあった、大量の宝石が散らばった。
「何してるの!!」
怒るアリー。
「面目ないっス!」
謝るパールだったが、
「なんだ!!今の音は!!」
「シトリン様の部屋の方からです!!」
「なに?!急げ!!」
外から警備兵の声が聞こえた。
「ヤバい!!一旦、退きましょう!」
アメジストの提案に、
「そうね!」
一度は同意した姫様だったが、
「ちょっと待って!!」
アリーの声がする。
「なに?アリー。急がないと...」
しかし、アリーの姿が見えない。
姫様が不思議に思っていると、
「ここ!ベッドの下に、秘密の扉があるよ!」
ベッドの下からアリーが顔を出した。
「よく見つけたわね!」
姫様が感心していると、
「散らばった宝石を集めてたら、偶然...暗くて、周りの床と同化してたから、潜らなければ見つからなかったかも!!」
アリーが興奮気味に話す。
「しかし警備の者が...」
そんな二人に、ヒスイが警告する。
警備兵の足音が姫様にも分かるくらい、近づいていた。だが、
「ちょっとだけ時間を稼いで!!」
姫様がアメジストたちに指示する。
「無理です!!私たちだけでは...」
アメジストは反対のようだったが、
「お願い!!このチャンスを逃したら、次はどこに隠すか分からない!!それに警備ももっと厳しくなるわ!!」
姫様に手を合わせて、懇願されると、
「・・・」
しばしの沈黙の後、
「仕様がない!そこまで言われちゃ!」
アメジストが覚悟を決めた。
「本気っスか?!」
パールは信じられないようだったが、
「あたしたち、あのお嬢ちゃんにどれだけもらった?ちょっとくらい返してやるのが女ってもんだろ!!」
アメジストは笑う。
「はっ!はっ!は!そりゃそうだ!...まあ、やるだけやってやるか!」
ヒスイもその言葉を聞いて、その気になったようだ。
「もう!!知らないっスよ!」
そう言いながらも、今だけはろくでなしではない3人は、入口に向かうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる