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Maid 63. アメジストたちの奮闘
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「ちょっと待って!」
敵を迎え撃つべく、歩きだしたアメジストたちを姫様が止める。
「もしかして、行かなくていいとか?!」
3人の顔が期待に輝くが、
「そうじゃなくて...その姿じゃ、身元が割れちゃうでしょ!...幻影!」
姫様が魔法を使うと、
「あっ!アメジストがキャッツアイになったっス!!」
「そういうパールはジルコンみたいじゃないか!!」
「ヒスイはラピスラズリに見えるね!!」
アメジストたちの姿は、ラピスラズリ一行のものになっていた。
「あくまで、幻影で、そう見えるだけだから!...能力とかはもとのままだから気をつけてね!」
姫様が注意するが、
「まあ、いっか!これで後で捕まったりしなくて済む!」
安心した様子のアメジスト。
「なんか、変な感じっスね!」
パールは見た目と実際の体とのギャップに戸惑っているようだが、
「まあ、いい!間合いは体が覚えている!」
ヒスイはそれほど気にしていないようだ。
「じゃあ、頑張ってね!」
姫様の見送りの言葉に、
「あの...できるだけ早く...」
「何分持つかな...」
「ご期待にそえなかったら申し訳ありません...」
先ほどの威勢はどこへやら。自信がなさそうなアメジストたちだった。
☆彡彡彡
「来た!」
執務室の前に飛び出したアメジストたちの前に、ちょうど警備兵が現れる。
「ビッグシールド!」
パールが特技を使った。
パールの盾が大きくなる。すると、
「ウィンド!」
アメジストが風魔法を使う。
アメジストは『ウィンド』が使えないわけではない。
ただ、温度や風速のコントロールができないだけで、ありったけの威力で風を吹きつけることはできた。
<ブワッ!!>
強烈な風がパールの大きくなった盾を吹き飛ばす。すると、
<ドカ~~~~ン!!>
「うわ~~~~~!!」
こちらに向かって走ってきていた警備兵に激突した。
<ゴロゴロゴロ...>
階段付近まで転がっていく警備兵たち。
「よし!!」
アメジストは得意顔だが、
「これ、盾を拾いに行くのが大変なんスよね...」
パールは急いで、飛ばされた盾を取りに走るのだった。
一方、廊下の反対側では、
<ガシャ~~~ン!>
窓を割り、警備兵が突入しようとする。
「おあいにく様!」
廊下に飛び移ろうとした警備兵を、ヒスイが思いっきり、蹴り飛ばした。
「うわ~~~~~!!」
後ろに倒れる警備兵。
その勢いで、地上からかけてあった、はしごがひっくり返る。
「おい!倒れ...わぁぁ~~~~!!」
はしごを上っている途中の警備兵まで地面に打ちつけられ、ダメージを負ってしまった。
「ふっ!他愛もない...」
したり顔のヒスイ。
<ヒュンヒュン!>
今度は矢が飛んでくるが、
「ビッグシールド!」
<カンカン!>
パールが盾で防ぎ、
「ウィンド!」
アメジストの魔法で勢いを止め、
「このくらい!」
<キンキン!>
かろうじて届いた矢も、ヒスイが剣で打ち落としていた。
そして、もう一度、
「ウィンド!」
「うわ~~~~~!!」
吹き飛ばされたパールの盾で、近づいていた警備兵たちが、また階段まで押し戻されてしまった。
「これ、いけるんじゃないスか?!」
パールが手ごたえを感じていると、
「先生!お願いします!!」
隊長の声が聞こえた。すると、
<スタッ!スタッ!>
「・・・」
変わった格好の男が、無言で姿を現した。
前で合わせる上着と、裾の広がった風変わりなズボンを身に着けている。足には藁で編んだ、底だけの靴。
その男の顔は平坦で、黒髪、茶色の目。頭は後ろで束ねて前に持ってきて縛った、奇抜な髪形をしている。
腰には帯が巻かれ、剣が入っていると思われる鞘を差していた。
「なんだ、あんたは?...ウィンド!」
アメジストが風魔法で吹き飛ばそうとするが、
「風切り!」
目にも留まらぬスピードで剣を抜いた男が、その剣を上から下へと振り下ろす。すると、
<ブワッ!>
風が男の前で切り裂かれたように二つに分かれた。
何事もなかったかのような顔で、再び、歩きだす男。
その剣もこの辺りでは見ない形をしていた。
「なんだ?えらく細いな...軽く反り返って...片刃なのか?」
ヒスイがつぶやく。すると、
「はっ!はっ!は!先生は東の島国からいらっしゃった、『サムライ』という、とても強い職業のお方なのだ!!先生の前に敵はいない!!」
隊長が自分のことのように得意げに話す。しかし、
「拙者、まだまだ修行中の身...そなた!その姿はこの国、一番の剣の使い手、ラピスラズリ殿とお見受けした!!よろしければ、拙者と一対一の勝負をお願いできないであろうか?」
『センセイ』と呼ばれた男は、ヒスイを見ると、そう提案してきた。
「えっ?!私?!」
なんのことか分からず、驚いているヒスイに対し、
「おお!あれがラピスラズリか!」
「なぜ、こんな場所に...」
「しかし、それなら強いのも良く分かる!」
警備兵たちは、ヒソヒソ話し合っている。
「ほら!あたいたち、今は違う姿だから...」
パールに言われ、
「あっ!!」
やっと、その意味に気付いたヒスイ。
(なんか強そうだな...さっきの剣筋、見えなかったし...ここは上手いこと言って断ろう!)
「悪いが...」
そう思ったヒスイが口を開いた瞬間、
<ザザッ!>
警備兵たちは二人のために空間を空ける。
「えっ?!」
戸惑うヒスイだったが、
「まあ、頑張りな!」
「応援してるっス!」
アメジストとパールも、ヒスイの肩に『ポンッ』と手を置くと、離れていった。
「・・・」
「・・・」
いつの間にか、皆が取り囲む中央で、無言で睨み合っているヒスイとセンセイ。
「...マジ?」
ヒスイはつい、つぶやいてしまうのだった。
敵を迎え撃つべく、歩きだしたアメジストたちを姫様が止める。
「もしかして、行かなくていいとか?!」
3人の顔が期待に輝くが、
「そうじゃなくて...その姿じゃ、身元が割れちゃうでしょ!...幻影!」
姫様が魔法を使うと、
「あっ!アメジストがキャッツアイになったっス!!」
「そういうパールはジルコンみたいじゃないか!!」
「ヒスイはラピスラズリに見えるね!!」
アメジストたちの姿は、ラピスラズリ一行のものになっていた。
「あくまで、幻影で、そう見えるだけだから!...能力とかはもとのままだから気をつけてね!」
姫様が注意するが、
「まあ、いっか!これで後で捕まったりしなくて済む!」
安心した様子のアメジスト。
「なんか、変な感じっスね!」
パールは見た目と実際の体とのギャップに戸惑っているようだが、
「まあ、いい!間合いは体が覚えている!」
ヒスイはそれほど気にしていないようだ。
「じゃあ、頑張ってね!」
姫様の見送りの言葉に、
「あの...できるだけ早く...」
「何分持つかな...」
「ご期待にそえなかったら申し訳ありません...」
先ほどの威勢はどこへやら。自信がなさそうなアメジストたちだった。
☆彡彡彡
「来た!」
執務室の前に飛び出したアメジストたちの前に、ちょうど警備兵が現れる。
「ビッグシールド!」
パールが特技を使った。
パールの盾が大きくなる。すると、
「ウィンド!」
アメジストが風魔法を使う。
アメジストは『ウィンド』が使えないわけではない。
ただ、温度や風速のコントロールができないだけで、ありったけの威力で風を吹きつけることはできた。
<ブワッ!!>
強烈な風がパールの大きくなった盾を吹き飛ばす。すると、
<ドカ~~~~ン!!>
「うわ~~~~~!!」
こちらに向かって走ってきていた警備兵に激突した。
<ゴロゴロゴロ...>
階段付近まで転がっていく警備兵たち。
「よし!!」
アメジストは得意顔だが、
「これ、盾を拾いに行くのが大変なんスよね...」
パールは急いで、飛ばされた盾を取りに走るのだった。
一方、廊下の反対側では、
<ガシャ~~~ン!>
窓を割り、警備兵が突入しようとする。
「おあいにく様!」
廊下に飛び移ろうとした警備兵を、ヒスイが思いっきり、蹴り飛ばした。
「うわ~~~~~!!」
後ろに倒れる警備兵。
その勢いで、地上からかけてあった、はしごがひっくり返る。
「おい!倒れ...わぁぁ~~~~!!」
はしごを上っている途中の警備兵まで地面に打ちつけられ、ダメージを負ってしまった。
「ふっ!他愛もない...」
したり顔のヒスイ。
<ヒュンヒュン!>
今度は矢が飛んでくるが、
「ビッグシールド!」
<カンカン!>
パールが盾で防ぎ、
「ウィンド!」
アメジストの魔法で勢いを止め、
「このくらい!」
<キンキン!>
かろうじて届いた矢も、ヒスイが剣で打ち落としていた。
そして、もう一度、
「ウィンド!」
「うわ~~~~~!!」
吹き飛ばされたパールの盾で、近づいていた警備兵たちが、また階段まで押し戻されてしまった。
「これ、いけるんじゃないスか?!」
パールが手ごたえを感じていると、
「先生!お願いします!!」
隊長の声が聞こえた。すると、
<スタッ!スタッ!>
「・・・」
変わった格好の男が、無言で姿を現した。
前で合わせる上着と、裾の広がった風変わりなズボンを身に着けている。足には藁で編んだ、底だけの靴。
その男の顔は平坦で、黒髪、茶色の目。頭は後ろで束ねて前に持ってきて縛った、奇抜な髪形をしている。
腰には帯が巻かれ、剣が入っていると思われる鞘を差していた。
「なんだ、あんたは?...ウィンド!」
アメジストが風魔法で吹き飛ばそうとするが、
「風切り!」
目にも留まらぬスピードで剣を抜いた男が、その剣を上から下へと振り下ろす。すると、
<ブワッ!>
風が男の前で切り裂かれたように二つに分かれた。
何事もなかったかのような顔で、再び、歩きだす男。
その剣もこの辺りでは見ない形をしていた。
「なんだ?えらく細いな...軽く反り返って...片刃なのか?」
ヒスイがつぶやく。すると、
「はっ!はっ!は!先生は東の島国からいらっしゃった、『サムライ』という、とても強い職業のお方なのだ!!先生の前に敵はいない!!」
隊長が自分のことのように得意げに話す。しかし、
「拙者、まだまだ修行中の身...そなた!その姿はこの国、一番の剣の使い手、ラピスラズリ殿とお見受けした!!よろしければ、拙者と一対一の勝負をお願いできないであろうか?」
『センセイ』と呼ばれた男は、ヒスイを見ると、そう提案してきた。
「えっ?!私?!」
なんのことか分からず、驚いているヒスイに対し、
「おお!あれがラピスラズリか!」
「なぜ、こんな場所に...」
「しかし、それなら強いのも良く分かる!」
警備兵たちは、ヒソヒソ話し合っている。
「ほら!あたいたち、今は違う姿だから...」
パールに言われ、
「あっ!!」
やっと、その意味に気付いたヒスイ。
(なんか強そうだな...さっきの剣筋、見えなかったし...ここは上手いこと言って断ろう!)
「悪いが...」
そう思ったヒスイが口を開いた瞬間、
<ザザッ!>
警備兵たちは二人のために空間を空ける。
「えっ?!」
戸惑うヒスイだったが、
「まあ、頑張りな!」
「応援してるっス!」
アメジストとパールも、ヒスイの肩に『ポンッ』と手を置くと、離れていった。
「・・・」
「・・・」
いつの間にか、皆が取り囲む中央で、無言で睨み合っているヒスイとセンセイ。
「...マジ?」
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