ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 65. アメジストたちの最後の仕事

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時は戻って、シトリンの部下たちが、どうやっても起きないシトリンを前に、途方に暮れていた頃。
シトリンの屋敷から戻ってきた姫様たちが、アメジストの宿の部屋へと次々に入ってくる。

「はぁ~~~~!面白かったなぁ!ファイアボールを受けた時のあいつの顔といったら!!」
「あたいはもうこりごりっスよ~~~!今度は断るっスからね!」
「はあ...お前らは気楽でいいよなぁ...私はあんなに死を身近に感じたことはない...」
アメジストたちは、安心したのか、無駄口を叩いている。

そんな3人をよそに、姫様たちは、持ってきた宝箱の中身を丁寧に確認していた。
「これは!!」
二人は顔を見合わせている。
そして、アメジストたちに言った。

「今までありがとう!もう解放してあげる!好きにしていいわよ!」

「そのお言葉は本当ですか?」
「後で、『やっぱりなし』なんてことは...」
「絶対ですからね!!」
思いがけない言葉に、半信半疑のアメジストたち。
そんな3人に姫様は笑いかける。
「ホントよ!今までキツいことも言ったけど、ついてきてくれて本当にありがとう!」

「やった!!」
「ついていきたくて、ついてきたんじゃないっスけどね!」
「全くだ!」
喜びのあまり、漏らしてしまった本音に、

「なんか言った?」
姫様が睨む。

「な、な、何も!!」
失言の主のパールが否定すると、
「まあ、いいわ!これ、欲しかったらあげる!」
姫様はアメジストに空になった宝箱を渡した。

「ふ~~~ん...高く売れるかなぁ...」
品定めをしていたアメジストだったが、
「ん?」
ふと、何かに気付く。
「どうしたの?」
姫様が尋ねると、
「ここ、二重底になっています!」
アメジストが宝箱の底板を外す。
<バサバサッ!>
「あっ!」
中から書類や手紙が落ちてきた。

「もう!何してるのよ!!」
姫様が落ちた手紙を拾い、何気なく目を通すと、
「これは!!」
慌てて、他の書類も拾うと、次々に読んでいく。
「どうしたの?」
アリーが横からのぞき込むと、
「これって...」
驚いたように目を見開いた。

「どうされましたか?」
アメジストの問いに、
「悪いけど、もう一つだけ頼まれてくれないかしら?」
姫様はアメジストを見返すと、言った。
「えっ?!もう終わりじゃ...」
ガッカリしてしまうアメジスト。
「姫様が約束したことを破るのですか?」
「そうです!!私たちはちゃんと確認をして、姫様は『本当』だとおっしゃいました!!」
パールとヒスイも不満げだ。
自分たちのことは棚に上げている気はするが、正論ではある。
「う~~~~ん...無理にとは言わないけど、これを持っていったら、王様からご褒美が出ると思うよ!」
書類を指差して、アリーが口にした言葉に、

「はい!謹んで!!」
「姫様の命令は私の喜びです!!なんなりとお申しつけください!!」
「姫様の依頼を断るなど、そんな輩がどこにいるでしょうか!!」
アメジストたちは真剣な顔で姫様の前に跪くと、恭しく答えた。

「ちゃっかりしてるんだから!!」
アリーは呆れ顔だが、
「じゃあ、お願いね!ちょっと待って!私が一筆書くから...それと私のブローチも持っていって!本物の証拠になるわ!」
そう述べた姫様は、手紙を書きだす。
その間に、
「あっ!通信用の魔道具もまだ持っておいてね!届けたら連絡してほしいの!」
アリーがアメジストたちに補足をする。
「いつ返したら...」
アメジストが尋ねると、
「そうねぇ...あたしたちのところに持ってきてくれるか、王都で待っててもいいよ!」
アリーが答えた。
「姫様たちも王都に?」
ヒスイの質問に、
「う~~~~ん...ちょっと時間がかかるかもしれないけど、そのうちね!」
少し考えたアリーが言う。
「では、また、相談させていただきます!」
アメジストはそう結んだ。

そんな会話をしているうちに、姫様は手紙を書き終わったようだ。
「これと、この書類を王城に届けて!衛兵に私からだと伝えて、そのブローチを見せたら、然るべき人に案内してくれると思うわ!」
手紙を封筒に入れて、封蝋をした姫様が、書類と一緒に渡す。
「では、なくさないように、この宝箱に入れて...」
アメジストは手紙と書類、ブローチを宝箱にしまうと、ふたを閉めた。
「悪いけど、明日、早くに出て、できるだけ急いでほしいの!よろしくね!」
「はい!」
最後にそう言うと、姫様はアリーと一緒に窓から飛び去っていった。


見えなくなるまで見送ったアメジストたちは、買ってきたまま放ってあった酒のボトルを見ながら話しだす。
「これは当分、お預けだね!」
「まあ、仕様がないっスよ!姫様の最後のお願いなんスから!」
「ところで...本当に最後なんだろうな?」
ヒスイが口にした言葉に、

「「・・・」」
黙り込んでしまうアメジストとパールだった。
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