65 / 76
Maid 65. アメジストたちの最後の仕事
しおりを挟む
時は戻って、シトリンの部下たちが、どうやっても起きないシトリンを前に、途方に暮れていた頃。
シトリンの屋敷から戻ってきた姫様たちが、アメジストの宿の部屋へと次々に入ってくる。
「はぁ~~~~!面白かったなぁ!ファイアボールを受けた時のあいつの顔といったら!!」
「あたいはもうこりごりっスよ~~~!今度は断るっスからね!」
「はあ...お前らは気楽でいいよなぁ...私はあんなに死を身近に感じたことはない...」
アメジストたちは、安心したのか、無駄口を叩いている。
そんな3人をよそに、姫様たちは、持ってきた宝箱の中身を丁寧に確認していた。
「これは!!」
二人は顔を見合わせている。
そして、アメジストたちに言った。
「今までありがとう!もう解放してあげる!好きにしていいわよ!」
「そのお言葉は本当ですか?」
「後で、『やっぱりなし』なんてことは...」
「絶対ですからね!!」
思いがけない言葉に、半信半疑のアメジストたち。
そんな3人に姫様は笑いかける。
「ホントよ!今までキツいことも言ったけど、ついてきてくれて本当にありがとう!」
「やった!!」
「ついていきたくて、ついてきたんじゃないっスけどね!」
「全くだ!」
喜びのあまり、漏らしてしまった本音に、
「なんか言った?」
姫様が睨む。
「な、な、何も!!」
失言の主のパールが否定すると、
「まあ、いいわ!これ、欲しかったらあげる!」
姫様はアメジストに空になった宝箱を渡した。
「ふ~~~ん...高く売れるかなぁ...」
品定めをしていたアメジストだったが、
「ん?」
ふと、何かに気付く。
「どうしたの?」
姫様が尋ねると、
「ここ、二重底になっています!」
アメジストが宝箱の底板を外す。
<バサバサッ!>
「あっ!」
中から書類や手紙が落ちてきた。
「もう!何してるのよ!!」
姫様が落ちた手紙を拾い、何気なく目を通すと、
「これは!!」
慌てて、他の書類も拾うと、次々に読んでいく。
「どうしたの?」
アリーが横からのぞき込むと、
「これって...」
驚いたように目を見開いた。
「どうされましたか?」
アメジストの問いに、
「悪いけど、もう一つだけ頼まれてくれないかしら?」
姫様はアメジストを見返すと、言った。
「えっ?!もう終わりじゃ...」
ガッカリしてしまうアメジスト。
「姫様が約束したことを破るのですか?」
「そうです!!私たちはちゃんと確認をして、姫様は『本当』だとおっしゃいました!!」
パールとヒスイも不満げだ。
自分たちのことは棚に上げている気はするが、正論ではある。
「う~~~~ん...無理にとは言わないけど、これを持っていったら、王様からご褒美が出ると思うよ!」
書類を指差して、アリーが口にした言葉に、
「はい!謹んで!!」
「姫様の命令は私の喜びです!!なんなりとお申しつけください!!」
「姫様の依頼を断るなど、そんな輩がどこにいるでしょうか!!」
アメジストたちは真剣な顔で姫様の前に跪くと、恭しく答えた。
「ちゃっかりしてるんだから!!」
アリーは呆れ顔だが、
「じゃあ、お願いね!ちょっと待って!私が一筆書くから...それと私のブローチも持っていって!本物の証拠になるわ!」
そう述べた姫様は、手紙を書きだす。
その間に、
「あっ!通信用の魔道具もまだ持っておいてね!届けたら連絡してほしいの!」
アリーがアメジストたちに補足をする。
「いつ返したら...」
アメジストが尋ねると、
「そうねぇ...あたしたちのところに持ってきてくれるか、王都で待っててもいいよ!」
アリーが答えた。
「姫様たちも王都に?」
ヒスイの質問に、
「う~~~~ん...ちょっと時間がかかるかもしれないけど、そのうちね!」
少し考えたアリーが言う。
「では、また、相談させていただきます!」
アメジストはそう結んだ。
そんな会話をしているうちに、姫様は手紙を書き終わったようだ。
「これと、この書類を王城に届けて!衛兵に私からだと伝えて、そのブローチを見せたら、然るべき人に案内してくれると思うわ!」
手紙を封筒に入れて、封蝋をした姫様が、書類と一緒に渡す。
「では、なくさないように、この宝箱に入れて...」
アメジストは手紙と書類、ブローチを宝箱にしまうと、ふたを閉めた。
「悪いけど、明日、早くに出て、できるだけ急いでほしいの!よろしくね!」
「はい!」
最後にそう言うと、姫様はアリーと一緒に窓から飛び去っていった。
見えなくなるまで見送ったアメジストたちは、買ってきたまま放ってあった酒のボトルを見ながら話しだす。
「これは当分、お預けだね!」
「まあ、仕様がないっスよ!姫様の最後のお願いなんスから!」
「ところで...本当に最後なんだろうな?」
ヒスイが口にした言葉に、
「「・・・」」
黙り込んでしまうアメジストとパールだった。
シトリンの屋敷から戻ってきた姫様たちが、アメジストの宿の部屋へと次々に入ってくる。
「はぁ~~~~!面白かったなぁ!ファイアボールを受けた時のあいつの顔といったら!!」
「あたいはもうこりごりっスよ~~~!今度は断るっスからね!」
「はあ...お前らは気楽でいいよなぁ...私はあんなに死を身近に感じたことはない...」
アメジストたちは、安心したのか、無駄口を叩いている。
そんな3人をよそに、姫様たちは、持ってきた宝箱の中身を丁寧に確認していた。
「これは!!」
二人は顔を見合わせている。
そして、アメジストたちに言った。
「今までありがとう!もう解放してあげる!好きにしていいわよ!」
「そのお言葉は本当ですか?」
「後で、『やっぱりなし』なんてことは...」
「絶対ですからね!!」
思いがけない言葉に、半信半疑のアメジストたち。
そんな3人に姫様は笑いかける。
「ホントよ!今までキツいことも言ったけど、ついてきてくれて本当にありがとう!」
「やった!!」
「ついていきたくて、ついてきたんじゃないっスけどね!」
「全くだ!」
喜びのあまり、漏らしてしまった本音に、
「なんか言った?」
姫様が睨む。
「な、な、何も!!」
失言の主のパールが否定すると、
「まあ、いいわ!これ、欲しかったらあげる!」
姫様はアメジストに空になった宝箱を渡した。
「ふ~~~ん...高く売れるかなぁ...」
品定めをしていたアメジストだったが、
「ん?」
ふと、何かに気付く。
「どうしたの?」
姫様が尋ねると、
「ここ、二重底になっています!」
アメジストが宝箱の底板を外す。
<バサバサッ!>
「あっ!」
中から書類や手紙が落ちてきた。
「もう!何してるのよ!!」
姫様が落ちた手紙を拾い、何気なく目を通すと、
「これは!!」
慌てて、他の書類も拾うと、次々に読んでいく。
「どうしたの?」
アリーが横からのぞき込むと、
「これって...」
驚いたように目を見開いた。
「どうされましたか?」
アメジストの問いに、
「悪いけど、もう一つだけ頼まれてくれないかしら?」
姫様はアメジストを見返すと、言った。
「えっ?!もう終わりじゃ...」
ガッカリしてしまうアメジスト。
「姫様が約束したことを破るのですか?」
「そうです!!私たちはちゃんと確認をして、姫様は『本当』だとおっしゃいました!!」
パールとヒスイも不満げだ。
自分たちのことは棚に上げている気はするが、正論ではある。
「う~~~~ん...無理にとは言わないけど、これを持っていったら、王様からご褒美が出ると思うよ!」
書類を指差して、アリーが口にした言葉に、
「はい!謹んで!!」
「姫様の命令は私の喜びです!!なんなりとお申しつけください!!」
「姫様の依頼を断るなど、そんな輩がどこにいるでしょうか!!」
アメジストたちは真剣な顔で姫様の前に跪くと、恭しく答えた。
「ちゃっかりしてるんだから!!」
アリーは呆れ顔だが、
「じゃあ、お願いね!ちょっと待って!私が一筆書くから...それと私のブローチも持っていって!本物の証拠になるわ!」
そう述べた姫様は、手紙を書きだす。
その間に、
「あっ!通信用の魔道具もまだ持っておいてね!届けたら連絡してほしいの!」
アリーがアメジストたちに補足をする。
「いつ返したら...」
アメジストが尋ねると、
「そうねぇ...あたしたちのところに持ってきてくれるか、王都で待っててもいいよ!」
アリーが答えた。
「姫様たちも王都に?」
ヒスイの質問に、
「う~~~~ん...ちょっと時間がかかるかもしれないけど、そのうちね!」
少し考えたアリーが言う。
「では、また、相談させていただきます!」
アメジストはそう結んだ。
そんな会話をしているうちに、姫様は手紙を書き終わったようだ。
「これと、この書類を王城に届けて!衛兵に私からだと伝えて、そのブローチを見せたら、然るべき人に案内してくれると思うわ!」
手紙を封筒に入れて、封蝋をした姫様が、書類と一緒に渡す。
「では、なくさないように、この宝箱に入れて...」
アメジストは手紙と書類、ブローチを宝箱にしまうと、ふたを閉めた。
「悪いけど、明日、早くに出て、できるだけ急いでほしいの!よろしくね!」
「はい!」
最後にそう言うと、姫様はアリーと一緒に窓から飛び去っていった。
見えなくなるまで見送ったアメジストたちは、買ってきたまま放ってあった酒のボトルを見ながら話しだす。
「これは当分、お預けだね!」
「まあ、仕様がないっスよ!姫様の最後のお願いなんスから!」
「ところで...本当に最後なんだろうな?」
ヒスイが口にした言葉に、
「「・・・」」
黙り込んでしまうアメジストとパールだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる