ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 67. アメジストのうわさ

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「アーガイルだ~~!!」
「ミャ~~~~!!」
「ふう...ふう...」
アーガイルに戻ってきたガーネットたち。
アリーは肩で息をしている。
姫様が間引きしてくれているとはいえ、毎日の魔物との戦いで疲れ果てていた。

「やっと着いた...」
安心した様子のアリーとは裏腹に、
「急がなきゃ!」
早速、王立研究所へと向かうガーネット。
「もう夕方だし、明日...」
アリーが止めようとしたところで、情報屋の男の大声が聞こえた。

「さあさあ!今日のニュースはとびきりだよ!!有力貴族のトパーズ伯爵が、隣国との内通の疑いで拘束されたんだ!!」

「なんだと?!」
「あいつ、気に入らなかったんだ!やっぱ、悪いヤツだったんだな!」

その声に人が群がってくる。

「ふ~~~~ん...」
あまり興味のなさそうなガーネットだったが、次の言葉で態度が変わる。

「これを告発したのは『アメジスト』という冒険者の一行!!彼女たちは今、王都で『正義の味方』として、もてはやされているらしい!!」

すると、
「アメジストさんが?!」
ガーネットは人ごみの中に飛び込む。
すごい勢いで一番、前に出た。

「詳しく聞かせてください!!」
ガーネットが情報屋に頼むと、

「おっと、ここから先はこれを買っておくれ!銀貨1枚だ!」

情報屋は小さい字でびっしりと書き込まれた紙を見せると、お金を要求する。

「銀貨1枚か...」
「ちょっと高くないか?」
見物人たちは迷っているようだ。

銀貨1枚は大体、千円くらいだ。情報料としては少し、高い。しかし、

「買います!!」
ガーネットは迷わず、銀貨を男に渡す。

「お嬢ちゃん、分かってるねぇ...はいよ!」
お金を受け取った情報屋は、ガーネットに紙を渡すと、見物人に向かって更に声を張り上げる。

「こんな特ダネ、滅多にないよ!!銀貨1枚でも安いくらいだ!!これを読んで、スカッとしておくれ!!」

すると、
「買った!!」
「俺も!!」
「私も!!」
皆がこぞって、情報を買いだした。

そんな中、マリンとアリーのもとに戻ってきたガーネットが、早速、詳細の書かれた紙を読む。
「なになに?...アメジストによると、『内通の情報をつかんだ私たちは、シトリン様の屋敷が怪しいと睨み、調査の上、忍び込み、証拠となる書類の入った宝箱を捜し始めた』...か...」
「相変わらず、調子いいね!まあ、いいけど!」
「ミャ~~~~!」
アリーとマリンは呆れているが、
「そっかぁ...アメジストさんたち、エカティでそんなことしてたんだ...忙しいはずだよね!それなのにわざわざ、『氷結の迷宮』まで来て、助けてくれるなんて...」
ガーネットは感動している。更に読み進めると、
「そこで強敵『サムライ』と対峙した私たちは...えっ?!サムライ?!...うわさでしか聞いたことないけど、とても強いという...」
アメジストたちの活躍ぶりに、胸を躍らせているようだ。
「...必死で逃げてきて、助けを求めたじゃない...」
ジト目でつぶやいているアリーに、
「ミャ~~~~!」
マリンが何か言った。

「ん?『内乱を企んでたのに、なんで七色の奇跡の雫まで集めてたんだろう』って?...う~~~~ん、多分だけど、お姫様が邪魔だったんじゃないかな!」
アリーがそれを聞いて、推測をする。
「ミャッ?!」
「そう!だってお姫様ってとっても強いじゃない?内乱になった時に、自分の家に取り込んでおけば、少なくとも行動を制限することができる...」
「ミャ~~~~!!」
アリーの説明にマリンが納得の声を上げた。
「えっ?前々から婚約を申し込まれてて迷惑だった?...ふ~~~~ん、その頃から、画策してたんだね!」
アリーは自分の推理に、より自信を持ったようだ。
「ミャ~~~~!」
「『でも、結局、私たちのために集めてくれたようなもの』だって?...そりゃそうでしょ!だって...まあ、これはやめとくか...」
アリーは何か話そうとしたが、途中で止めた。
「ミャ~~~~?」
マリンが首を傾げている。すると、

「すごい!!そんなところに隠されてた宝箱を見つけたんだ!!アメジストさんってやっぱり!!」
ガーネットの声が聞こえる。
まだ、読み込んでいるようだ。
「ミャ~~~~!」
手持ち無沙汰のマリンは話を続けた。

「なに?『他の貴族は本気にしてないようだったのに、トパーズ伯だけ集めてて、変に思ってた』かぁ...そうだね!サンストーンでさえ詳しくは知らない、おとぎ話みたいなものだしね!」
アリーはそう答えたが、意地悪く笑うと続ける。
「でも、あなたのガーネットはそのおとぎ話を、本当に実現しちゃったんだよね!」
すると、
「ミャ~~~~~!」
マリンが恥ずかしそうに顔を隠した。

そうしているうちに、ガーネットは最後まで読み終わったようだ。
「トパーズ伯爵の横暴に辟易していた、王都の人々は、彼女たちを『正義の味方』ともてはやし、一躍、有名人に。彼女らの行くところ、いつも人だかりができている...かぁ...ふう...」
そして、ため息をつく。
「ミャ~~~~?」
「どうしたの?アメジストのファンなんでしょ?うれしくないの?」
アリーがマリンを代弁するように聞くと、
「...うん、うれしいよ!アメジストさんたちが、みんなに認められて...でも『私だけの正義の味方』じゃなくなったんだなぁ...って...」
ガーネットは悲しそうに笑った。
「ふ~~~~ん!ファン心理って複雑なんだね!」
アリーがどこか他人事のような顔で口にしたが、
「でも、やっぱり、喜ばなきゃね!!ついにアメジストさんたちが表舞台に立つ時が来たんだ!!」
ガーネットの目が輝く。
「ボロが出なきゃいいけどね!」
「ミャ~~~~!」
アリーとマリンは心配しつつも、楽しそうに笑ったのだった。
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