ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 68. サンストーンのもとへ

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「お邪魔します!!」
王立研究所に飛び込んできたガーネット。
「なんですか?!こんな時間に!!」
受付嬢が苦い顔をするが、
「ゴメン!許してあげて!」
続いて入ってきたアリーが言うと、
「アリー!!戻ってきたのね!!」
受付嬢の顔が晴れる。
「あなたがいないせいで、余計な仕事が...」
受付嬢は愚痴っているが、
「うん!また今度ね!待って~~~~~!!」
アリーは全速力で走っていくガーネットを追いかけるのに必死だった。
「あの方は確か、サンストーン様のご友人の...何かしら?」
受付嬢は首をひねりながらも、その日の後片付けを始めるのだった。

☆彡彡彡

<バンッ!>
「大賢者様!!」
サンストーンの部屋にガーネットが踊り込んできた。
「やあ!随分とお急ぎだね!...僕はもう眠いんだけど...ふぁぁ~~~~あ!」
サンストーンは特に驚く様子もなく、のんびりとあくびをしている。
「ミャ~~~~~!!」
そんなサンストーンに、マリンが訴えるように大きな声で鳴く。すると、
「はぁ、仕方ないなぁ...で、その様子じゃ、7つ全て手に入れたんだね?!」
サンストーンの口調は、面倒くさいというよりも、むしろ驚いているようだった。
「はい!皆さんのお力添えで...」
そう言いながら、7つの魔法のガラス瓶を、机の上に並べていくガーネット。
「ほぉぉ!これは壮観だ!!300年ぶりなんだろ?」
サンストーンはのぞき込むと、七色の幻想的な光を顔に反射させながら、アリーに問う。
「うん!あたしも最初は『いくつ集めれるか』だと思ってた...だけど、途中から、確信に変わったよ!『この子なら全部、揃えられる』って!!」
興奮気味のアリーに、
「へぇ~~~!この子がねぇ...」
サンストーンは興味深げに、ガーネットを見つめる。
しかし、ガーネットは、二人の会話に興味はないようで、
「そんなことより、早く『奇跡の雫』を!!」
『奇跡の雫』を作ってくれるように、サンストーンを急かす。
「君は自分のしたことを良く理解していないようだねぇ...」
サンストーンは半ば、呆れたようにつぶやくが、
「じゃあ、仕上げだ!!これが最後の難関になる!!」
真面目な顔に変わると、ガラス瓶に目を移す。
「そんなに難しいんですか?」
心配そうにサンストーンをうかがうガーネット。すると、
「僕も初めてだからね!ちょっと過去の記録を調べてはみたんだが、できるかどうか...」
額にしわを寄せているサンストーン。
「お願いします!!」
訴えるような目で見てくるガーネットに、
「といっても、君次第なんだけどね!」
サンストーンはウインクした。
「どういう...」
戸惑っているガーネットに、サンストーンは声をかける。
「じゃあ、いくよ!」
「は、はい...」
思わず、答えてしまったガーネット。すると、
「はっ!」
サンストーンが7つのガラス瓶に向け、魔力を流した。

<フワ~~~~~~~!>
ガラス瓶の口が開き、七色の液体が上空へと上っていく。
「わぁぁ~~~~!!」
その幻想的な光景に、声を上げるガーネット。
やがて、液体は一か所に集まる。しかし、
「あれ?」
当惑したような顔をするガーネット。
7つの液体は混ざり合うことはなく、ただ、くっつき合っているだけだった。

(もしかして...失敗?)
不安になるガーネットにサンストーンは言う。
「さあ!ここからが本番だ!ガーネット、君に問う!!」
「は、はい!」
つられて返事をしたガーネット。すると、サンストーンはしばし考えた後、次のような質問をした。

「『奇跡の雫』を手にすれば、君はサファイア姫と結婚する権利を手に入れることになる...しかし、もし、姫様が他の誰かとの結婚を望んだらどうする?」

「ミャ~~~~~!!」
マリンが怒ったように声を上げるが、ガーネットは迷うことなく答えた。

「もちろん、その方に差し上げます!!姫様の幸せが私の幸せですから!!」

「ミャ~~~~...」
今度は微妙な声で鳴くマリン。

「さあ!どうなるかな?」
サンストーンは興味深げに、上空の七色の液体を見つめていた。すると、

<コポコポコポ...>
さっきまで反発し合っていた液体が混ざり始める。

「まさか一発で...」
驚いた様子のサンストーン。
「ウソ!」
それはアリーも同じだった。

<コポコポコポ...>
音を立て、一つになっていく7つの雫。そして、

<ピカ~~~~~!!>
明るく光ったと思ったら、そこには虹色に輝く液体が出来上がっていた。

「成功だ!!」
興奮した様子のサンストーン。
「これが...『奇跡の雫』...」
ガーネットもその美しさに見とれている。

サンストーンはそれを空になった魔法のガラス瓶の一つに移した。

「はい!これが『奇跡の雫』だ!君のものだよ!ガーネット!」
そのガラス瓶を手渡すサンストーン。

「・・・」
惚けているガーネットに、
「やったね!」
うれしそうに笑いかけるアリー。

「あっ!」
我に返ったガーネットが、ガラス瓶を握りしめる。
「さあ、サファイア姫が待ってるよ!!」
優しく微笑むサンストーンに、
「ありがとうございます!!さすが大賢者様です!!こんな難しい調合を成功させるなんて!!」
大きく礼をすると、尊敬の眼差しで見つめる。
「いや、すごいのはガーネ...」
何か言おうとしたアリーをよそに、
「お代は...有り金すべてでよろしいですか?でも、これで足りるかどうか...」
慌てて、財布用の小袋をひっくり返すガーネット。しかし、
「いらないよ!数百年に一度の素敵な出来事に立ち会えただけで幸せさ!」
そんなガーネットに対して、サンストーンは軽く笑いながら答えた。
「でも...」
まだ、気が引けた様子のガーネットに、
「気にすることないよ!それだけのことをしたんだから!それを持って、お姫様のもとに行ってあげて!」
アリーも安心させるように声をかけた。

「本当に何から何までありがとうございます!!このご恩は決して忘れません!!」
もう一度、深く礼をしたガーネットは、『奇跡の雫』を大事そうにポーチにしまうと、今度はアリーの方を向く。
「じゃあ、アリーともここでお別れだね!」
「うん!とっても楽しかったよ!幸せにね!」
別れの挨拶をしたガーネットに、にっこり笑ったアリー。
「今まで本当にありがとう!...行くよ!!マリン!!」
「ミャ~~~~~!」
そう言うと、ガーネットはマリンとともに、部屋を飛び出していった。
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