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Maid 70. 姫様のもとへ
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「はぁ...はぁ...」
息を切らしながら、夜明けの街道を走っている少女がいた。
まるで夜通し走ってきたかのように、ふらふらになりながらも懸命に足を動かしている。
腰にポーチをつけ、腕には白猫を抱いていた。
「ミャ~~~~~!!」
猫が鳴いた。
その声は甘えた声ではない。
必死に少女を止めようとしているふうに感じられた。
「姫様!...はぁ、はぁ...姫様!...」
しかし、少女はそれに気付く様子もない。
いや、もうそんな余裕などないのだろう。
時々、『姫様』と口にしながら、必死に走っていた。
「あっ!」
足がもつれて、少女が転ぶ。
「ミャ~~~~~!!」
猫の悲痛な声。
<バタッ!>
少女は倒れ込む。
しかも、猫をかばって腕をつかなかったため、体を強く地面に打ちつけてしまう。
見れば少女の顔は泥だらけで、体にはいくつもあざがあった。
「ミャ~~~~...」
猫が切なそうな声を上げる。しかし、
「まだまだ!!こんなことくらい!!...私が姫様に受けたご恩に比べれば!!」
少女はそう叫ぶと、立ち上がり、再び走りだすのだった。
「ミャ~~~~~!!」
白猫の叫び声もむなしく、ただ前を見て足を動かす少女。
その後、少女はあらゆる街や村を素通りし、朝も夜も関係なく走り続けたのだった...
☆彡彡彡
「うう...頭痛い...」
「昨夜は飲みすぎたっス!」
「お前ら、だらしないぞ!...ううっ!」
「うわっ!吐くなら脇道で!!」
ここは早朝の王都。
3人の冒険者らしき少女たちが、酔いざましのためなのか、門から王城へと通じる、大きな通りをふらついていた。
「アメジスト!お前、それ、いつも着けてるな!」
冒険者の一人、ヒスイが口を開く。
見ると、アメジストと呼ばれた少女の頭には、ヘッドセットらしき魔道具が装着されていた。
「仕様がないだろ!アリーが『いつも着けていろ』って言うんだから...耳が痛くなるんだけどな!」
アメジストが文句を言う。すると、通りの向こうから、ふらつきながらも走ってくる少女を見つけた。
「ん?あれは...」
アメジストは4日前の夜を思い出していた。
〇・〇・〇
「アメジスト!今、何してる?!」
それは知り合いの妖精、アリーからの連絡だった。
「何って、酒盛りに決まってんじゃないのさ!なあ、パール!」
「アリーっスか?!久しぶりっス!なんの用っスか?!」
「そんなの『この魔道具を返せ』って言うに決まってるだろ!!この酔っぱらいが!!」
「そういうヒスイだって、ブラまで外しちゃって...小さいお胸も可愛いっスよ!」
「なに?!勝手に見るな!!お前のも...」
「やめてっス!見るならお代を...」
アメジストのそばにはパールとヒスイもいて、大騒ぎしていた。
「何、やってんのよ!!」
恥ずかしそうなアリー。しかし、すぐに要件を話しだす。
「それより、今、どこにいるの?」
アリーの問いに、
「王都に決まってんじゃないのさ!毎日、ちやほやされていい気分さ!」
楽しそうなアメジストの声。
「そう!良かった!」
「何が良かったんだ?」
安心したようなアリーに、アメジストが聞くと、
「しばらくそこに滞在できる?」
アリーが再び、尋ねてくる。
「ん?当分はここにいるつもりだが...」
アメジストの返事に、アリーは言った。
「ガーネットがそっちに着いたら、すぐに連絡してほしいの!!」
すると、
「ん?どうしてだ?一緒じゃないのか?」
アメジストは不思議に思い、問いかける。
「うん、アーガイルで別れたんだけど、気になることがあって...」
アリーが心配そうに答えると、
「別にそれくらいはいいが...」
アメジストは少し、引っかかるものを感じたが、特に理由を聞くこともなく、了承をした。
「絶対よ!!見つけたらすぐだからね!!その魔道具も離さないでね!!」
切羽詰まった声で念を押すと、アリーは通話を切った。
「なんだってんだ...」
アメジストは首を傾げながらも、
「おい!飲まないのか?これが最後の一本だぞ!」
ヒスイの呼びかけに、
「ああ?もっと買ってきなよ!金ならまだまだあるだろ!」
そう声を上げるアメジストだった。
〇・〇・〇
「はぁ...はぁ...ひめ...さま...」
今にも死にそうな顔で王城に向かっているのは、深い赤色の髪を持つ少女。
いつも連れていた白猫は、いつの間にかいなくなっていたが、それに気付く余裕はないようだった。
半分、意識は朦朧としていて、根性だけで走っている状態だ。
体中、傷だらけで汚れ、服はボロボロになっていた。
「あれ、ガーネットっス!!」
「大丈夫なのか?!」
それに気が付いたパールとヒスイが心配する。
「す、すぐに連絡を!!」
アメジストは急いで魔道具を使い、アリーに連絡を入れたのだった。
「おい!!ガーネットが来たよ!!ボロボロで今にも死にそうになりながら走ってる!!...マリンは...いないようだね!」
すると、間を置かずにアリーの返事が聞こえた。
「やっぱり!!...大変!!すぐに入れ代わるね!」
「ん?」
アリーの言葉に、とぼけた声を出すアメジスト。その瞬間、
「交代!」
魔道具の向こうから声がした。
息を切らしながら、夜明けの街道を走っている少女がいた。
まるで夜通し走ってきたかのように、ふらふらになりながらも懸命に足を動かしている。
腰にポーチをつけ、腕には白猫を抱いていた。
「ミャ~~~~~!!」
猫が鳴いた。
その声は甘えた声ではない。
必死に少女を止めようとしているふうに感じられた。
「姫様!...はぁ、はぁ...姫様!...」
しかし、少女はそれに気付く様子もない。
いや、もうそんな余裕などないのだろう。
時々、『姫様』と口にしながら、必死に走っていた。
「あっ!」
足がもつれて、少女が転ぶ。
「ミャ~~~~~!!」
猫の悲痛な声。
<バタッ!>
少女は倒れ込む。
しかも、猫をかばって腕をつかなかったため、体を強く地面に打ちつけてしまう。
見れば少女の顔は泥だらけで、体にはいくつもあざがあった。
「ミャ~~~~...」
猫が切なそうな声を上げる。しかし、
「まだまだ!!こんなことくらい!!...私が姫様に受けたご恩に比べれば!!」
少女はそう叫ぶと、立ち上がり、再び走りだすのだった。
「ミャ~~~~~!!」
白猫の叫び声もむなしく、ただ前を見て足を動かす少女。
その後、少女はあらゆる街や村を素通りし、朝も夜も関係なく走り続けたのだった...
☆彡彡彡
「うう...頭痛い...」
「昨夜は飲みすぎたっス!」
「お前ら、だらしないぞ!...ううっ!」
「うわっ!吐くなら脇道で!!」
ここは早朝の王都。
3人の冒険者らしき少女たちが、酔いざましのためなのか、門から王城へと通じる、大きな通りをふらついていた。
「アメジスト!お前、それ、いつも着けてるな!」
冒険者の一人、ヒスイが口を開く。
見ると、アメジストと呼ばれた少女の頭には、ヘッドセットらしき魔道具が装着されていた。
「仕様がないだろ!アリーが『いつも着けていろ』って言うんだから...耳が痛くなるんだけどな!」
アメジストが文句を言う。すると、通りの向こうから、ふらつきながらも走ってくる少女を見つけた。
「ん?あれは...」
アメジストは4日前の夜を思い出していた。
〇・〇・〇
「アメジスト!今、何してる?!」
それは知り合いの妖精、アリーからの連絡だった。
「何って、酒盛りに決まってんじゃないのさ!なあ、パール!」
「アリーっスか?!久しぶりっス!なんの用っスか?!」
「そんなの『この魔道具を返せ』って言うに決まってるだろ!!この酔っぱらいが!!」
「そういうヒスイだって、ブラまで外しちゃって...小さいお胸も可愛いっスよ!」
「なに?!勝手に見るな!!お前のも...」
「やめてっス!見るならお代を...」
アメジストのそばにはパールとヒスイもいて、大騒ぎしていた。
「何、やってんのよ!!」
恥ずかしそうなアリー。しかし、すぐに要件を話しだす。
「それより、今、どこにいるの?」
アリーの問いに、
「王都に決まってんじゃないのさ!毎日、ちやほやされていい気分さ!」
楽しそうなアメジストの声。
「そう!良かった!」
「何が良かったんだ?」
安心したようなアリーに、アメジストが聞くと、
「しばらくそこに滞在できる?」
アリーが再び、尋ねてくる。
「ん?当分はここにいるつもりだが...」
アメジストの返事に、アリーは言った。
「ガーネットがそっちに着いたら、すぐに連絡してほしいの!!」
すると、
「ん?どうしてだ?一緒じゃないのか?」
アメジストは不思議に思い、問いかける。
「うん、アーガイルで別れたんだけど、気になることがあって...」
アリーが心配そうに答えると、
「別にそれくらいはいいが...」
アメジストは少し、引っかかるものを感じたが、特に理由を聞くこともなく、了承をした。
「絶対よ!!見つけたらすぐだからね!!その魔道具も離さないでね!!」
切羽詰まった声で念を押すと、アリーは通話を切った。
「なんだってんだ...」
アメジストは首を傾げながらも、
「おい!飲まないのか?これが最後の一本だぞ!」
ヒスイの呼びかけに、
「ああ?もっと買ってきなよ!金ならまだまだあるだろ!」
そう声を上げるアメジストだった。
〇・〇・〇
「はぁ...はぁ...ひめ...さま...」
今にも死にそうな顔で王城に向かっているのは、深い赤色の髪を持つ少女。
いつも連れていた白猫は、いつの間にかいなくなっていたが、それに気付く余裕はないようだった。
半分、意識は朦朧としていて、根性だけで走っている状態だ。
体中、傷だらけで汚れ、服はボロボロになっていた。
「あれ、ガーネットっス!!」
「大丈夫なのか?!」
それに気が付いたパールとヒスイが心配する。
「す、すぐに連絡を!!」
アメジストは急いで魔道具を使い、アリーに連絡を入れたのだった。
「おい!!ガーネットが来たよ!!ボロボロで今にも死にそうになりながら走ってる!!...マリンは...いないようだね!」
すると、間を置かずにアリーの返事が聞こえた。
「やっぱり!!...大変!!すぐに入れ代わるね!」
「ん?」
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「交代!」
魔道具の向こうから声がした。
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