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Maid 71. メイドの恩返し
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「あれ?」
アメジストが気が付くと、見知らぬ部屋にいた。
広くて立派だが、ムダに華美ではない。
中央には大きな机が、壁には本棚が並んでいる。
本棚は難しそうな本で埋め尽くされ、机の上には書類が積み重ねられていた。
「ここ、どこっスか?」
パールの声が聞こえる。
自分の後ろにいたようだ。振り向くと、
「ん?私はまだ酔っているのか?」
ヒスイもいた。
「とりあえず、外に...」
アメジストは部屋の扉を開ける。すると、
「「あっ!」」
ちょうどそこを通りかかった、受付嬢と目が合う。
「何者ですか!!あなたたちは!!ここはサンストーン様のお部屋ですよ?!」
受付嬢は、部屋から出てきたアメジストたちを怪しんでいるようだ。そう問いかける。
それを聞いたアメジストは、
「サンストーン...って大賢者様?!ってことはここはアーガイル?なんで...」
驚くほかない。
「ワザとらしいですね...」
受付嬢が白い目で見てくると、
「あ、あたしたちは王都にいたんだ!!」
「そ、そうっス!!なぜか気が付くとここにいて...」
「そうだ!!決して怪しいものではない!!」
アメジストたちは得意の言い訳を始めるが、
「何を言いだすかと思えば!!こちらに来て、話を聞かせてもらいましょうか!!」
受付嬢は、逆に疑いを濃くしたようだ。
『さっきまで王都にいた』など、弁明にしても不自然すぎる。
「いいよ!あたしたちにやましいところはないからね!」
アメジストたちは大人しく、受付嬢に従うことにした。
受付嬢について、廊下を歩いていくと、
「その魔道具でアリーに助けを求めたらどうっスか?」
パールが耳打ちしてきた。
「そうさね!」
アメジストが魔道具に手を伸ばした時、
「ん?それはサンストーン様が作られた魔道具!!さてはそれを盗みに!!...誰か、衛兵を!!」
受付嬢は大声で人を呼ぶと、魔道具を取り上げてしまった。
「ち、ち、違うんだよ!!」
「これはアリーに借りて...」
「本当だ!信じてくれ!!」
アメジストたちの抵抗もむなしく、3人は牢屋に入れられることになる。
「なんでこんなことに...」
「酔いがすっかりさめたっス...」
「酒...持ってくれば良かったな...」
解放されたのは、その日の夕方だった。
☆彡彡彡
一方、王城の勝手口では、
「お、お前はガーネット!!...その格好は...それに今までどこに行っていた?!姫様は?!」
やってきたガーネットに、衛兵が矢継ぎ早に話しかける。しかし、
「はぁ...はぁ...ひめ...さ...ま...」
ガーネットは衛兵に気付かないのか、勝手口を通り抜けると、城内に走っていってしまった。
「ガーネット!!」
衛兵は追いかけようか迷うが、
「いいじゃないか!ガーネットは10年近く勤めている、信頼のおけるメイドだ!何か理由があるのだろう...」
もう一人の衛兵の言葉に、
「そうだな!」
とりあえず、放置することにしたのだった。
☆彡彡彡
「ひめ...さま...ひめ...」
ガーネットはもはや、焦点の合っていない目で、うわごとのように『姫様』と繰り返しながら、無意識に姫様の部屋を目指す。そして、
<バンッ!!>
「姫様!!」
姫様の部屋の扉を激しく開くと、姫様を呼ぶ。すると、
「ガーネット!!...こんなになって...頑張ったのね!」
扉の近くにはすでに姫様が待機しており、優しくガーネットを抱きしめた。
その声を聞いたガーネットの目に生気が戻る。
そして、姫様の姿を認めると、
「姫様!!...姫様!!...会いとうございました!!」
大粒の涙を流しながら、姫様にしがみついた。
「私もよ!!...あらあら、そんなに泣いちゃ、可愛い顔が見えないわ!」
姫様はハンカチを取り出すと、ほこりで汚れた顔から、涙を拭いてあげる。
「うっ!うっ!」
なおも泣いているガーネットに、
「こんなに汚れて...怪我もいっぱい!!...治してあげるわね!パーフェクト...」
姫様は傷を癒やそうとするが、
「それは後で結構です!!...それより...これを...」
ガーネットは腰のポーチから、虹色に輝く液体の入った魔法のガラス瓶を取り出して、姫様に渡した。
「これは...『奇跡の雫』!!本当に手に入れたのね!!すごいわ!!...これで私とガーネットは...」
姫様がにっこり笑って話しかけるが、最後まで聞かずにガーネットは続ける。
「はい!!...これを...姫様に...差し上げます!!...これで...好きな人と...」
(ん?『好きな人』?それってガーネットのことよね?)
姫様が不思議に思っていると、
「これで...恩返しが...でき...ました...姫様...幸せ...に...」
精一杯の声で、ゆっくり、途切れ途切れに話すと、最後の力を振り絞るように顔を上げ、じっと姫様の顔を見つめる。そして...
「・・・」
そのまま、ぐったりと姫様にもたれかかると、動かなくなった。
「ガーネット?!...ガーネット?!...パーフェクト・ヒール!」
様子のおかしなガーネットに、最上級の回復魔法を使う姫様。
「・・・」
しかし、時すでに遅く、ガーネットの命の灯は消えた後だった...
アメジストが気が付くと、見知らぬ部屋にいた。
広くて立派だが、ムダに華美ではない。
中央には大きな机が、壁には本棚が並んでいる。
本棚は難しそうな本で埋め尽くされ、机の上には書類が積み重ねられていた。
「ここ、どこっスか?」
パールの声が聞こえる。
自分の後ろにいたようだ。振り向くと、
「ん?私はまだ酔っているのか?」
ヒスイもいた。
「とりあえず、外に...」
アメジストは部屋の扉を開ける。すると、
「「あっ!」」
ちょうどそこを通りかかった、受付嬢と目が合う。
「何者ですか!!あなたたちは!!ここはサンストーン様のお部屋ですよ?!」
受付嬢は、部屋から出てきたアメジストたちを怪しんでいるようだ。そう問いかける。
それを聞いたアメジストは、
「サンストーン...って大賢者様?!ってことはここはアーガイル?なんで...」
驚くほかない。
「ワザとらしいですね...」
受付嬢が白い目で見てくると、
「あ、あたしたちは王都にいたんだ!!」
「そ、そうっス!!なぜか気が付くとここにいて...」
「そうだ!!決して怪しいものではない!!」
アメジストたちは得意の言い訳を始めるが、
「何を言いだすかと思えば!!こちらに来て、話を聞かせてもらいましょうか!!」
受付嬢は、逆に疑いを濃くしたようだ。
『さっきまで王都にいた』など、弁明にしても不自然すぎる。
「いいよ!あたしたちにやましいところはないからね!」
アメジストたちは大人しく、受付嬢に従うことにした。
受付嬢について、廊下を歩いていくと、
「その魔道具でアリーに助けを求めたらどうっスか?」
パールが耳打ちしてきた。
「そうさね!」
アメジストが魔道具に手を伸ばした時、
「ん?それはサンストーン様が作られた魔道具!!さてはそれを盗みに!!...誰か、衛兵を!!」
受付嬢は大声で人を呼ぶと、魔道具を取り上げてしまった。
「ち、ち、違うんだよ!!」
「これはアリーに借りて...」
「本当だ!信じてくれ!!」
アメジストたちの抵抗もむなしく、3人は牢屋に入れられることになる。
「なんでこんなことに...」
「酔いがすっかりさめたっス...」
「酒...持ってくれば良かったな...」
解放されたのは、その日の夕方だった。
☆彡彡彡
一方、王城の勝手口では、
「お、お前はガーネット!!...その格好は...それに今までどこに行っていた?!姫様は?!」
やってきたガーネットに、衛兵が矢継ぎ早に話しかける。しかし、
「はぁ...はぁ...ひめ...さ...ま...」
ガーネットは衛兵に気付かないのか、勝手口を通り抜けると、城内に走っていってしまった。
「ガーネット!!」
衛兵は追いかけようか迷うが、
「いいじゃないか!ガーネットは10年近く勤めている、信頼のおけるメイドだ!何か理由があるのだろう...」
もう一人の衛兵の言葉に、
「そうだな!」
とりあえず、放置することにしたのだった。
☆彡彡彡
「ひめ...さま...ひめ...」
ガーネットはもはや、焦点の合っていない目で、うわごとのように『姫様』と繰り返しながら、無意識に姫様の部屋を目指す。そして、
<バンッ!!>
「姫様!!」
姫様の部屋の扉を激しく開くと、姫様を呼ぶ。すると、
「ガーネット!!...こんなになって...頑張ったのね!」
扉の近くにはすでに姫様が待機しており、優しくガーネットを抱きしめた。
その声を聞いたガーネットの目に生気が戻る。
そして、姫様の姿を認めると、
「姫様!!...姫様!!...会いとうございました!!」
大粒の涙を流しながら、姫様にしがみついた。
「私もよ!!...あらあら、そんなに泣いちゃ、可愛い顔が見えないわ!」
姫様はハンカチを取り出すと、ほこりで汚れた顔から、涙を拭いてあげる。
「うっ!うっ!」
なおも泣いているガーネットに、
「こんなに汚れて...怪我もいっぱい!!...治してあげるわね!パーフェクト...」
姫様は傷を癒やそうとするが、
「それは後で結構です!!...それより...これを...」
ガーネットは腰のポーチから、虹色に輝く液体の入った魔法のガラス瓶を取り出して、姫様に渡した。
「これは...『奇跡の雫』!!本当に手に入れたのね!!すごいわ!!...これで私とガーネットは...」
姫様がにっこり笑って話しかけるが、最後まで聞かずにガーネットは続ける。
「はい!!...これを...姫様に...差し上げます!!...これで...好きな人と...」
(ん?『好きな人』?それってガーネットのことよね?)
姫様が不思議に思っていると、
「これで...恩返しが...でき...ました...姫様...幸せ...に...」
精一杯の声で、ゆっくり、途切れ途切れに話すと、最後の力を振り絞るように顔を上げ、じっと姫様の顔を見つめる。そして...
「・・・」
そのまま、ぐったりと姫様にもたれかかると、動かなくなった。
「ガーネット?!...ガーネット?!...パーフェクト・ヒール!」
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「・・・」
しかし、時すでに遅く、ガーネットの命の灯は消えた後だった...
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